著者
中嶋 康之 源 裕介
出版者
一般社団法人 千葉県理学療法士会
雑誌
理学療法の科学と研究 (ISSN:18849032)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.8_21-8_23, 2017-03-20 (Released:2023-07-04)
参考文献数
8

【目的】一般型シンスプリントの従来の発生機序とは異なり,現在新たな発生機序が示唆されている。現在の発生機序では長趾屈筋腱と後脛骨筋腱の両腱が交差する位置(クロスポイント)が重要視されている。しかし超音波画像診断装置にてクロスポイントの位置を示した報告はない。そこで本研究は超音波画像診断装置を用い,クロスポイントの下腿における相対的位置を明確にした。【方法】超音波画像診断装置を用い,両腱が交差する位置をクロスポイントとし体表にマークした。内果からのクロスポイントまでの距離を計測するとともに脛骨長を100%としクロスポイントの相対的位置を求めた。【結果】内果より計測したクロスポイントの位置は最大9.1㎝,最小で5.7㎝であり,平均7.9㎝(SE=0.2)の位置に存在した。また相対的位置に関しては平均22.5%であった。【結論】超音波画像診断装置でもクロスポイントの描出は肉眼解剖とほぼ同様にその位置を示せることが示唆された。
著者
兎澤 良輔 源 裕介 浅田 菜穂 荒井 沙織 平野 正広 川崎 翼 赤木 龍一郎 加藤 宗規
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.543-546, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
16

〔目的〕小学校高学年児童におけるmodified Star Excursion Balance Test(mSEBT)の信頼性を検討することを目的とした.〔対象と方法〕健常な小学校高学年児童9名にmSEBT を2回連続で実施し,その際の検者内信頼性およびBland-Altman分析(BAA),誤差範囲を算出した.〔結果〕3つの方向の級内相関係数(ICC)(1,1)は0.797–0.875であった.BAAの結果,前方リーチ,同側後方リーチに固定誤差が認められた.測定の誤差は最大で16 cmであった.〔結語〕小学校高学年児童においてmSEBTのICCは高値を示したが,測定の誤差は測定値から比較して許容できないほど高値となったため,小学校高学年児童に対するmSEBTは慎重に利用すべきである.
著者
源 裕介
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.13, pp.215-220, 2019

理学療法士が作成する足底挿板はどのような疾患に対して有効か, またどのような疾患が適応外かという傾向に関しては不明な点が多い. そこで今回, 理学療法士が作成するパッド貼付型足底挿板の治療効果にどのような傾向があるかを明らかにした.対象は千葉こどもとおとなの整形外科リハビリテーション科にて,1名の理学療法士が2014年4月から2017年3月までの3年間に作成された足底挿板を対象に調査を実施した.結果は膝関節(10名), 足関節・下腿(12名), 足部(18名)の3つ部位に分類して各部位での治療成績を示したところ, 膝関節は16名(70.0%), 足関節・下腿は4名(91.2%), 足部は14名(83.3%)の割合で症状の改善または消失が確認された. 疾患別で症例数が比較的多かったものを確認すると, 変形性膝関節症7名(4名改善), 足関節捻挫6名(5名改善), シンスプリント4名(全例改善), 有痛性外脛骨4名(全例改善),という結果であった.変形性膝関節症の足底挿板の適応としては,Kellgren-Lawrence 分類Grade1までが効果を示せる可能性が考えられた. 下腿・足関節・足部に関しては骨折などの形態異常や明らかな機能不全がなければ効果は十分に期待できると考えられた.
著者
源 裕介
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101313-48101313, 2013

【はじめに、目的】歩行時立脚相において、足部アライメントの崩れは関節の安定性低下及び正常な関節運動の阻害を生じさせ、関節構成体及び軟部組織へ過度のストレスを作って疼痛を発生させる。このような症状は臨床上多く見られ、個々のマルアライメントに応じた理学療法が施行されることが通例である。今回、後足部回内不安定性により踵立方関節及び浅腓骨神経領域に強い歩行時痛を生じ、インソール療法にて回内不安定性の是正を実施するも疼痛消失に至らず治療に難渋したが、リスフラン関節可動性改善と踵部の補高を追加したところ、長期化していた歩行時疼痛の消失に至った症例を経験した。これらの経過と疼痛のメカニズム、理学療法についての報告を、考察を加えて以下に報告する。【方法】症例は60才代女性で、職業は病院内ワーカー業務である。平成24年1月初旬、歩行時左足関節外側部痛を生じ、経過とともに徐々に疼痛は悪化し、同年7月に歩行困難な状況になったため当院に受診した。初診時は疼痛性跛行が強く、左足部へは荷重困難な状態であった。理学所見では、関節可動域において背屈が両側共15°と制限を認め、後足部回内が健側15°患側20°と患側にて過可動性を認め、さらに前方引き出しテストにおいて、健側と比べて強陽性と不安定性が強かった。フットプリント上では静止時、歩行時共に後足部回内による扁平足の所見を認めた。圧痛は左足部外側から下腿外側のかけて広範囲に認めたが、特に足根洞付近と外果前方~下部にNRS10と強い疼痛が確認された。また、X線上にて距腿関節外側に小さな骨棘が確認され、同部位にて過回内しながら背屈強制をすると轢音とともに疼痛が出現した。理学療法では、まず足関節背屈可動域改善とインソールにて後足部回内制動、足趾屈筋筋力強化を実施したことで、理学療法開始5週目までにNRS5程度まで疼痛の改善が確認できた。また遠位脛腓間と距腿関節を安定させるテーピングを追加して施行後、理学療法開始10週目までにNRS3程度まで疼痛の改善が確認できた。その後は疼痛改善が停滞し、立脚中期から後期にかけてNRS3程度の疼痛が残存した。15週目に再評価を実施し、リスフラン関節第4・5列の背屈方向への可動性低下と距腿関節部の骨棘が原因と捉え、リスフラン関節可動性改善とインソールヒール部分の5mm程度の補高を実施、その後の経過を観察した。【倫理的配慮、説明と同意】対象者には、口頭にて本発表の主旨を説明し同意を得た。【結果】リスフラン関節第4・5列の背屈方向への可動性改善、インソールヒール部分の5mm程度の補高を実施したことで、2週間後(理学療法開始17週目)5週間続いたNRS3の歩行時痛は消失、圧痛も踵立方関節にNRS3程度の軽度な疼痛の出現と、改善が見られた。【考察】本症例は、後足部回内不安定性に対し前足部外側可動性低下という特徴があったため、荷重時の関節圧縮応力がanstableな踵立方関節へ集中しやすい状態にあり、結果的に同部位に疼痛が残存していたと考えられる。これに加え、距腿関節のOA change、前方不安定性、外側の骨棘出現という状況に、後方tightnessによる距骨後方移動の減少が重なったため、立脚後期における正常な関節運動が阻害され、前方インピンジメントを起こしやすいという状況にあったと考えられる。これらの疼痛メカニズムの背景を考えると、インソールによる後足部回内不安定性の是正及び距腿関節背屈可動性改善のみでは疼痛消失は図れないことが考えられ、治療の追加としてリスフラン関節背屈可動性を改善し荷重時の関節圧縮応力を分散させ踵立方関節へのストレス軽減を図ること、また距骨の過度の後方滑り込みを是正し骨棘部分での前方インピンジメントを改善するため踵を補高すること、これらの2つの治療が本症例には必要であったと考えられた。【理学療法学研究としての意義】足部の疼痛を見分ける際、骨及び関節の数が多いため、正確な疼痛部位の把握が難しい。今回のようなケースは、多数あるケースの中の一ケースではあるが、今後臨床で足部の疼痛を見極める際、参考になる一情報となればと考える。