著者
川崎 翼
雑誌
第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会
巻号頁・発行日
2023-09-13

運動学習理論の先駆けは,それまでの運動制御理論の中で考えられてきた反射-反応理論の発展として提唱された閉ループ理論(Adams, J Mot Behav, 1971),スキーマ理論(Schmidt, Psychological Review, 1975)である.これらは,フィードバックや誤差検出の概念を取り入れた画期的な理論であった.とりわけ,スキーマ理論は,一般化運動プログラムの形成(再生スキーマと再認スキーマ)によって,閉ループ理論における最大の欠点とされていた「膨大なパラメータの学習量」を大幅に減ずる理論として今日もその応用が検証されている.しかしながら,スキーマ理論で説明可能な運動学習は,力量や関節角度の調整など課題間の類似性が高い場合の学習であり,条件や環境が大きく変わる中での運動学習は説明困難となる.その他,環境からの知覚手がかりによる運動の誘発を最重要視し,理論的には条件や環境への変更に対応可能なアフォーダンス理論(Gibson, Ecological Approach to Visual Perception, 1979)を用いた検証がなされている. 一方,認知神経リハビリテーションは,上記の諸理論を踏まえ,認知過程(知覚・注意・記憶・判断・言語・イメージ)の活性化を想定している点が特徴である.認知神経リハビリテーションの実践では,「行為の学習を対象者の回復そのもの」として捉え,様々な道具(すなわち環境)との相互作用によって行為の学習(運動学習)を目指す.この行為の学習には,対象者のリハビリテーションへの能動性がカギとなる.この能動性は,行為の学習の仕方の学び(メタラーニング)の促進にもつながる. 本発表では,これまでの運動学習理論を概観すると共に,認知神経リハビリテーションの強みをおさらいする.そこに能動性というキーワードを融合させ,メタラーニングの理解の基礎となるよう話を展開したい.
著者
三上 恭平 川崎 翼 白石 眞 加茂 力
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1070, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】パーキンソン病(PD)の体幹前屈(前屈)の姿勢異常(PA)は難治性で,病態背景も不明な点が多い。DohertyらはPDのPAの病態背景の一つに,姿勢の自覚に関わる固有感覚の統合異常を挙げているが,PAを呈するPD患者の姿勢の自覚についての報告は少ない。また近年PAには,前頭葉の機能低下との関連性も報告されている(Nocera JR, et al., 2010)。本研究では,1)前屈を呈するPD患者のPAの自覚の有無と修正の可否,2)前頭葉機能がPD患者の前屈と関係するかの2点を検討した。【方法】2014年6月から7月に当クリニックに来院したMini Mental State Examination(MMSE)24点以上のPD患者で,前屈の姿勢異常角度が10度以上の27名を対象とした(75.1±8.1歳。男性11名,女性16名)。前屈の自覚の評価は,立位で「前に曲がっていると感じるか」の問いに「感じる」を自覚あり,「感じない」を自覚なしとした。前屈の角度は静止立位および口頭で垂直位への修正を求めた修正立位の静止画を撮影しImage Jを用いて解析した。前頭葉機能評価にはFrontal Assessment Battery(FAB)を用い,川畑の分類に基づき12点をカットオフ値として低値群と高値群に分類した(川畑。2011)。PDの重症度分類にはHohen and Yahr(H-Y)Stageを用い,運動機能評価にはUnified Parkinson's diseases Rating Scale(UPDRS)PartIIIを用いた。統計解析は,前屈の自覚有り群,無し群およびFAB低値群と高値群の2群間における前屈角度,UPDRS Part III,H-Y Stage,MMSEの値の差を,対応のないt検定にかけて解析した。なお,統計分析の有意水準は全て5%とした。【結果】27例中17例が前屈を自覚し,自覚あり群(41.6±21.9度)では,自覚なし群(22.6±13度)より有意に前屈角度が大きかった(P=0.019)。自覚なし群の7例(70%)は,口頭指示による姿勢の修正が可能であった。FAB低値群は,高値群よりも体幹屈曲角度が有意に大きかった(P=0.04)。一方,FAB低値群と高値群の間でMMSE,H-Y Stage,UPDRS Part IIIに有意な違いはなかった。【結論】前屈の角度が高度であれば自覚はある。しかし,その角度が低い例では姿勢の修正が可能であるにも関わらず,前屈を自覚していないため修正できない。さらに体幹屈曲角度にはFABで示される前頭葉機能が一因として関わっている可能性があり,前屈姿勢の改善のためには,運動機能のみならず前頭葉機能を考慮したリハプログラムが必要である。
著者
兎澤 良輔 源 裕介 浅田 菜穂 荒井 沙織 平野 正広 川崎 翼 赤木 龍一郎 加藤 宗規
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.543-546, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
16

〔目的〕小学校高学年児童におけるmodified Star Excursion Balance Test(mSEBT)の信頼性を検討することを目的とした.〔対象と方法〕健常な小学校高学年児童9名にmSEBT を2回連続で実施し,その際の検者内信頼性およびBland-Altman分析(BAA),誤差範囲を算出した.〔結果〕3つの方向の級内相関係数(ICC)(1,1)は0.797–0.875であった.BAAの結果,前方リーチ,同側後方リーチに固定誤差が認められた.測定の誤差は最大で16 cmであった.〔結語〕小学校高学年児童においてmSEBTのICCは高値を示したが,測定の誤差は測定値から比較して許容できないほど高値となったため,小学校高学年児童に対するmSEBTは慎重に利用すべきである.
著者
矢田 拓也 川崎 翼 大平 雅弘
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.845-850, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
20

〔目的〕肩甲骨アライメントを修正することを目的とした介入による,脳腫瘍患者のバランス機能,歩行能力の改善効果を検討した.〔対象と方法〕左上下肢不全麻痺により歩行不安定性を呈した脳腫瘍患者1名に対し,肩甲胸郭関節の安定化訓練と立位,歩行訓練を40分の介入で5日間行わせた.肩甲骨アライメント,立位時の身体重心,バランス,歩行評価から治療効果を検証した.〔結果〕介入によって,立位,歩行時の肩甲骨アライメントは修正され,バランス機能,歩行能力は向上した.〔結語〕脳腫瘍不全麻痺患者に対して肩甲骨アライメントを修正する運動療法は,バランス機能,歩行能力向上に有効であることが示唆された.
著者
川崎 翼 河野 正志 兎澤 良輔
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.306-310, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
21

【目的】本研究の目的は,経験した運動スキルを他者に教授することの即時的な運動学習効果を明らかにすることであった。【方法】参加者は若年成人23 名であり,教授群12 名,コントロール群11 名に分けられた。運動学習課題は,2 つの球を非利き手で回す課題とした。教授群は球回しの練習後,1 分間の球回しパフォーマンスが計測された。この後,球の回し方について教授群は聞き手に教授した。その直後と2 分後に再度,パフォーマンスを計測した。コントロール群は教授群と同様の手続きであるが,教授は行わず科学雑誌を音読した。【結果】教授群のみ球回し回数が有意に増加した。また,教授群はコントロール群に比べて,球回しの改善回数が有意に多かった。【結論】他者に経験した運動スキルを教授することは,即時的に運動学習を促進する可能性が示された。