著者
豊島 よし江
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.10, pp.77-86, 2016

本研究の目的は、江戸時代の人口調節としての間引き・堕胎の実態、また通過儀礼としての産育習俗から見た日本の子育て、日本人の子ども観について文献を通して考察することである。歴史を通して見えてきたのは「堕胎・間引き」は全国的に慣習として存在したこと。堕胎法としては子宮収縮作用のある植物を用いる・冷水に浸かるなどであった。間引き法としては濡紙を口に当てる、手で口をふさぐなどの直接的なものとネグレクトなど間接的方法があった。これらの根底には貧しさがあり、親たちが生きるためのやむにやまれぬ選択であった。そして、そこには「7歳までは神の領域に属するもの」として「子どもを神に返す」という古来の日本人の精神があった。また、七五三に見られる通過儀礼は、子どもが無事に生まれ、無事に育つことの困難な時代にあって不安定な時期を乗り越えた節目の儀礼であった。そこには生まれた子どもを慈しんだ日本人の英知と祈りがあった。
著者
岡田 隆 池田 未里 小菅 亨 松本 揚 石井 孝法 野田 哲由
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.9, pp.33-41, 2015

背景ボディビル競技では体脂肪を最大限減少させ(除脂肪),除脂肪体重の多くを占める骨格筋が最も多い状態を作る(筋肥大)事が重要である.しかしその方法については不明な点が多い.目的ボディビルダーにおける試合までの長期調整(減量)期間における体重,身体組成の経時的変化を明らかにし,除脂肪,筋肥大の最適な方法を確立する事を目的とした.方法男子大学生ボディビルダー5名を対象とした.6ヶ月間1回/月,体重を測定し,インピーダンス法で体脂肪率,除脂肪体重,体脂肪量,体水分量を推定した.結果除脂肪体重以外の全ての項目は有意に減少した.体脂肪量の減少率は36.3±7.6%(-4.2±1.3kg)であり,除脂肪体重の2.7±1.2%(-1.8±1.0kg)と比較して有意に高かった.結論骨格筋を肥大させる目的を持ったボディビルダーの調整方法であれば除脂肪体重の減少を抑える事ができ,また体脂肪量の減少率が大きいため身体組成を著しく改善する事がわかった.レジスタンストレーニングには体重減少中の除脂肪体重損失を抑制する可能性ある事が示唆された.
著者
石丸 圭荘 増山 茂 平松 礼二 了德寺 健二
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.1, pp.117-123, 2007

Our purpose is to evaluate the contribution of oriental medicine to art therapy by paying close attention to the theory of five colors (blue, red, yellow, white and black) in conjunction with the theory of five parenchematous viscera functions (liver, heart, spleen, lung and kidney), which is thought to reflect underlying five elements (wood, fire, earth, metal and water). Questionnaires were distributed to 160 young paramedical students who had no special knowledge of oriental medicine nor the five-color theory. Subjects' favors or disfavors of five colors (blue, red, yellow, white and black) were compared with his viscera condition determined by Meiji oriental score (MOS) which classifies it by analyzing six representative clinical symptoms of the five viscera theory. Chi-square test among the favorite or disfavorite colors and the viscera conditions revealed a statistically significant relationship between the favorite blue color group (69 out of 160 students) and the liver group (55 out of 160 students) by MOS. These results suggest that one's favor or disfavor of colors possibly reflects one's internal viscera condition and that the five-color theory based on oriental medicine would be applicable to art therapy.
著者
小菅 亨 岡田 隆 増田 敦子 石井 孝法 山田 利彦 金丸 雄介 菅波 盛雄
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.9, pp.183-191, 2015

柔道の競技力強化の現場で行われている「ロープトレーニング」とは上肢と体幹を主に用いて局所筋持久力と全身持久力の向上を目的に行われるものである.この方法が柔道競技において普及しているのは柔道には上肢と体幹を多く用いるという競技特性があるためである.本研究ではロープトレーニングの生理学的反応を明らかにし,ロープトレーニングのトレーニング効果に関する知見を得ることを目的とした.大学男子柔道部員10名を対象とし,ロープトレーニングをTabata protocolに模倣したロープトレーニングで行わせた.測定項目は酸素摂取量,血中乳酸濃度,心拍数とした.また,自転車ペダリング運動によって測定される仮定最大値(VO2max ,Lamax, HRmax)との相対値を算出した.結果はVO2max に対してロープトレーニング中のpeakVO2は有意に低く,Lamax に対し,ロープトレーニング中のpeakLaは有意に高かった.peakHRはロープトレーニング中ほぼHRmaxに近い値で推移し,有意差はなかった.上記によりロープトレーニングは解糖系に最大の負荷をかけるが,酸化機構には最大の半分程度の負荷しかけることができないということになる.これは,上肢などの局所筋における解糖系に大きな負荷がかかることで酸化機構への負荷が十分に高まる前にオールアウトしたことが原因であると考えられる.今後は,ロープトレーニングで負荷をかけることができなかった酸化機構に最大負荷をかけることができるプロトコルを探索していくことが課題の1つである.
著者
山下 菜穂子
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.11, pp.97-115, 2017

本研究は本邦における男性同性愛者のHIV感染増加に関する心理的問題と性教育への課題を明らかとすることを研究目的とした.世界規模では日本のHIV感染者数,HIV新規感染者数ともごく少数である.しかし,その感染者数は男性同性愛者の性行為を中心に2000年~2011年にかけて増加傾向であるという問題を抱えている.同性愛者の精神健康度は異性愛者に比べ低い傾向であり,国内の男性同性愛者を対象とした研究では,同性愛者が精神健康度を良好に保つために教育機関における性教育の中で,同性愛についても肯定的な情報提供が必要だと報告している.しかし,教育機関での性教育は異性愛を前提として行われていることが現状であり,教育機関におけるその計画実施までに年月がかかるのは明白である.よって10代の男女に性教育を行っているNGOと男性同性愛者の地域ボランティア組織が連携し,セクシュアリティの考え方を見直す働きかけを行うこと,その活動内容を教育機関に発信し,同性愛者に対する問題とその対策をともに検討していくことが短期間で実現可能な方法である.
著者
石丸 圭荘 大澤 裕行 福島 英夫 増山 茂 了德寺 健二
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.2, pp.49-54, 2008

Introduction: Our purpose is to evaluate contribution of oriental medicine on art therapy by paying close attention to the five colors (blue, red, yellow, white and black) theory in conjunction with the five parenchematous viscera function theory (liver, heart, spleen, lung and kidney), which is thought to reflect five elements (wood, fire, earth, metal and water) underlying. Method: Questionnaire studies were done to 160 young paramedical students who had no special knowledge of oriental medicine nor the five colors theory. Subject's favor or disfavor to five colors (blue, red, yellow, white and black) were compared with his viscera function determined by Meiji oriental score (MOS) which classifies it by analyzing six representative clinical symptoms of the five oriental medical theory. Furthermore, a questionnaire was enforced about the color related to the liberation from the stress. Results and discussion: Chi-square test among the favor or disfavor colors and the viscera function revealed statistically significant relationship between the favorite blue color group (69 among 160 students) and the liver group (55 among 160 students) by MOS. These results suggested that ones favor or disfavor for colors possibly reflected ones internal viscera function and that the five colors theory based on oriental medicine was applicable to art therapy. Conclusions: The present survey discloses that the color which eased the stress of mind and body was blue. Furthermore, the theory of the color (five colors theory) of the oriental medicine is important in the harmony of mind and body.
著者
五味 雅大 平野 正広 加藤 宗規 清水 菜穂
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.11, pp.165-170, 2017

[目的]肘関節屈曲筋力の徒手筋力測定における再現性の問題に対して,定量的測定値を得るためにハンドヘルドダイナモメーターを徒手で用いる従来の方法と,考案したハンドヘルドダイナモメーターをベルトで固定した方法における再現性を検討した.[対象]若年健常成人31名の利き手である右上肢31肢であった.[方法]ハンドヘルドダイナモメーターを徒手で固定する従来の方法とベルトで固定する方法による肘関節屈曲筋力測定を行い,測定値を比較,検討した.[結果]ハンドヘルドダイナモメーターをベルトで固定した方法における検者内の級内相関係数は0.90であり,Bland-Altman分析では,1回目と2回目の測定値において系統誤差を認めなかった.[結論]1回練習をした後,1回目,2回目の測定値を採用することで,考案したハンドヘルドダイナモメーターをベルトで固定した肘関節屈曲筋力測定方法は,臨床使用が可能な再現性を有することが示唆された.
著者
藤瀬 礼子
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.9, pp.208-202, 2015

蓮月(1791-1877)は小澤蘆庵(1723-1801)の歌を学んだ.彼の提唱した「ただごと歌」は,まさに蓮月の平明な歌に影響している.蓮月は蘆庵の歌を暗記し,消息でそれを示しているほどである.かなり深くその歌論についても心に留めている様子が窺える.蘆庵の「ただごと歌」とは,そもそもは紀貫之が『古今和歌集』仮名序において提唱した歌論の一つである.この「ただごと歌」の言葉を自らの歌論の柱として,二条派の伝統集団に抗うように,自論を展開したのが小澤蘆庵であった.蘆庵は,当時の国学者らが古今調を退け,万葉調を重んじた説に反し,あえて古今に依拠した「ただごと歌」をその主軸し据えた.ただ言葉数を合わせて並べたのでは歌として成立しない.それが,時には散文のように身近でありながら,歌の風情を失わないのは,蓮月の歌の基礎に『古今集』などがあり,さらに当時において,歌の姿のありようを蘆庵の提唱する「ただごと歌」に求めているからにほからない.
著者
橋本 和幸 三沢 元彦
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.6, pp.37-50, 2012

近年,学齢期における生活習慣の乱れが指摘され,特に睡眠時間の不足と朝食の欠食が学校生活に悪影響を与えていると考えられている.本研究では,小学校5年生199名を対象に,睡眠習慣(就寝時刻・睡眠時間)・食事習慣と,学力(漢字・計算)および学習意欲との関連を検討した.睡眠習慣は幼児期と小学校5年生現在のものとの関連も調査した.結果は,平均的な就寝時刻の者は,就寝時刻が早い者よりも計算得点が高く,就寝時刻が遅い者よりも規則正しい食事をしていた.また,睡眠時間が平均的な者は,短い者より漢字得点が高く規則正しい食事をしており,長い者より計算得点が高かった.さらに,食事習慣と漢字得点および学習意欲との間と,学習意欲と漢字および計算得点との間に相関関係が見られた.そして,幼児期の就寝時刻が早かった者は小学生でも早く就寝する傾向が見られた.これらから,平均的な就寝時刻と睡眠時間が食事習慣を規則正しくして,学力および学習意欲を高めていると考えられる.また,睡眠習慣は幼児期のものが後年に影響を与えていると考えられる.
著者
上岡 尚代 橋本 和幸 伊藤 マモル 小西 由里子 山本 利春
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.8, pp.129-135, 2014

スポーツ選手を取り巻く環境条件には,天候,温度,湿度,サーフェイスの性状,用具など多岐にわたり,環境要因が適した状態に保たれる事は選手の健康を守る意味でも重要である.本研究ではスポーツ用具を用いる競技においてAdenosine TriPhosphate(以下,ATPと言う.)ふき取り検査法を用いた用具の清浄度を測定し,市販消臭剤と,コンタクトレンズ洗浄液に使用される「ポリヘキサメチレンビグアニド(以下,PHMBと言う.)」の清浄効果を比較検証し,競技者の衛生管理教育の基礎資料とする事を目的とした.方法は,剣道,フェンシング,なぎなた,アメリカンフットボールの顔に使用する用具(以下,顔用具と言う.)と手に使用する用具(以下,手用具と言う.)を対象に市販消臭スプレー使用前後及び,PHMBの使用前後のATP量を比較した.結果は,消臭スプレーでは手用具のATP量が減少し,顔用具では変化がみられなかった.一方,PHMBの使用後は顔用具,手用具とも減少した.この結果から,PHMBの活用はスポーツ用具の衛生管理に有用と考えられ,簡易で効果的な衛生管理方法の示唆を与える結果が得られた.
著者
源 裕介
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.13, pp.215-220, 2019

理学療法士が作成する足底挿板はどのような疾患に対して有効か, またどのような疾患が適応外かという傾向に関しては不明な点が多い. そこで今回, 理学療法士が作成するパッド貼付型足底挿板の治療効果にどのような傾向があるかを明らかにした.対象は千葉こどもとおとなの整形外科リハビリテーション科にて,1名の理学療法士が2014年4月から2017年3月までの3年間に作成された足底挿板を対象に調査を実施した.結果は膝関節(10名), 足関節・下腿(12名), 足部(18名)の3つ部位に分類して各部位での治療成績を示したところ, 膝関節は16名(70.0%), 足関節・下腿は4名(91.2%), 足部は14名(83.3%)の割合で症状の改善または消失が確認された. 疾患別で症例数が比較的多かったものを確認すると, 変形性膝関節症7名(4名改善), 足関節捻挫6名(5名改善), シンスプリント4名(全例改善), 有痛性外脛骨4名(全例改善),という結果であった.変形性膝関節症の足底挿板の適応としては,Kellgren-Lawrence 分類Grade1までが効果を示せる可能性が考えられた. 下腿・足関節・足部に関しては骨折などの形態異常や明らかな機能不全がなければ効果は十分に期待できると考えられた.
著者
上原 優香里 兎澤 良輔 藤巻 晶 中村 友哉 加藤 宗規
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.12, pp.191-197, 2018

本研究では,腓骨筋に対する伸縮性テーピングの施行が,ハムストリングスおよび体幹伸展筋群に与える影響について検討した.対象者は健常成人8名とした.腓骨筋に対する伸縮性テーピング施行前後で,指床間距離(FFD),下肢伸展挙上角度(SLR),modified schober test(MST)の3項目の評価を実施し,介入前後の値を比較した.介入前後結果(中央値)は,FFDが-4.2㎝,-2.4㎝,SLRは46.0°,48.5°となり,有意に向上した.また,MSTは介入前後ともに21.2㎝となり,有意差はなかった.FFD,SLRの結果から,腓骨筋に対するテーピング貼付において,ハムストリングスの伸張性が向上したと考えられる.これは,長腓骨筋と大腿二頭筋の間に筋膜性の直接接続があることが要因として考えられた.体幹伸展筋群は,脊椎後方の靭帯や軟部組織などの伸張性が大きく変化しない状況では可動域はそれほど変化しない可能性が考えられた.本研究により,腓骨筋に対する伸縮性テーピングはハムストリングスの伸張性を向上させることが明らかになったが,体幹伸展筋群には変化が認められなかった.
著者
上岡 尚代 野田 哲由 林 㤗京 橋本 和幸
出版者
了德寺大学
雑誌
了德寺大学研究紀要 = The Bulletin of Ryotokuji University (ISSN:18819796)
巻号頁・発行日
no.10, pp.45-51, 2016

高校陸上大会において行っているトレーナーブースを利用した競技者に対し,ピドスコープを用いて接地足蹠撮影装置を実施し,同時に傷害調査及びセルフコンディショニングの実施状況及び認識について調査した.傷害発生の部位は70%以上が下肢に発生していた.傷害発生時期は,53.7%が高校で発症しており,半数は完治していると回答したが,その半数近くは再発を繰り返していた.セルフケアの実施状況は,筋力トレーニングやストレッチング,アイシングなど必要性は認識しているにも関わらず,実施率は認識率を下回った.接地足蹠測定では,足蹠指数は陸上競技者が左右平均3.33本,コントロール群3.29本と陸上選手と同世代の一般学生で差は見られなかった.蹠指数と下肢の傷害の関係は,股の障害の有無と左右足の接地蹠指数の差は右足のみ蹠趾数が少ないほど有意に股関節と大腿前面の傷害発生数が多かった.(股関節t(28.0)=2.25, p<.05)(大腿前面 t(26.0)=1.89, p<.10),すねの傷害と蹠指数とは,両側とも足蹠趾数が少ないほど有意に脛部の傷害発生が多く,両者の関連性が示唆された.足指の把持筋力については,傷害発生率との有意な関連性はみられなかった.陸上選手と同世代の一般学生との足底荷重部分の違いについては,陸上選手が有意に足部前方に荷重していた.