著者
溝口 晴彦 原 昌道
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.124-138, 2010 (Released:2012-02-17)
参考文献数
50
被引用文献数
7 6

酒母は麹造りと共に酒造りの大切な工程で,乳酸発酵を伴う生もと系酒母と乳酸を添加する速醸系酒母に大別され,従来よりいろいろな切り口で比較がなされてきた。今回,生もと系酒母の複雑な環境の場がそこで育てられて酵母に与える膜リン脂質の脂肪酸組成と関連づけて生もとの不思議な現象を明快に解明した本総説は,現場に従事する人にも興味を持って一読出来るものと確信している。
著者
溝口 晴彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.108, no.6, pp.382-388, 2013 (Released:2018-01-12)
参考文献数
35
被引用文献数
1 5

清酒醸造において,伝統技法の一つが生〓つくりであろう。そこには種々な微生物が関わり,そのなかでも乳酸菌が大きな役割を演じている。しかしながら,どのような乳酸菌がどのように関わり,生〓および醪,さらには酒質への影響との相関については,長年の課題であった。筆者らは分子生物学的な手法により,生〓の乳酸菌叢とその特性を解析し,そこから見えてきたこれからの清酒醸造における生〓の意義について解説していただいた。
著者
高尾 佳史 高橋 俊成 藤田 晃子 松丸 克己 溝口 晴彦
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.1, pp.48-55, 2015 (Released:2018-04-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2

1)官能評価結果から,対照酒に比べて樽酒を摂取した場合,食品の旨味を強く,長く感じさせる効果があることが示された。2)清酒と料理を組み合わせたときの旨味後味を,味認識装置を用いて評価する方法を設定した。そばつゆやシーフードを食品サンプルとした場合には,対照酒に比べて樽酒では,旨味後味値が強くなっていた。3)食品の旨味後味に及ぼす樽酒の効果は,杉樽から抽出される物質に起因しており,比較的極性が高く,揮発しにくい成分と考えられた。杉樽から溶出するポリフェノールや多糖類の可能性が考えられるが,樽酒ではポリフェノール濃度が高いものの,多糖類の濃度には差が見られず,ポリフェノールやその配糖体の可能性が考えられる。
著者
松永 恒司 溝口 晴彦
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.168-171, 2007-03-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

適量のアルコール飲料はリラックス効果を高めストレスの解消に役立つことは良く知られているが, 具体的にアルコールがどのようにストレスやリラックスに関係するか心理的側面からの研究報告はこれまでなかった。著者らはこの問題に取り組み, 飲酒前と飲酒後の気分の変化を心理テスト (POMS) を用いて分析し初めて明らかにした。本稿ではこれまで得られた知見を中心に解説して戴いたが, 今後はこのような心理テストのデータとストレス関連物質の変化との関連を解明するための発展的研究が期待される。