著者
川端 悠士 澄川 泰弘 林 真美 武市 理史 後藤 圭太 藤森 里美 小原 成美
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.347-354, 2014-10-20 (Released:2017-06-13)
被引用文献数
2

【目的】大腿骨近位部骨折例における杖歩行の可否,歩行速度に影響を与える要因をあきらかにすることとした。【方法】対象は大腿骨近位部骨折術例104例とし,1本杖を使用して50m連続歩行が可能か否かで歩行可能群61例,介助群43例に分類した。調査項目は年齢,性別,身長,骨折型,術後経過日数とし,測定項目は健患側等尺性股関節外転筋力,健患側等尺性膝関節伸展筋力,疼痛,脚長差,10m歩行速度とした。多重ロジスティック回帰分析および重回帰分析を使用して杖歩行の可否,歩行速度に影響を与える要因を検討した。【結果】杖歩行の可否に影響を与える要因として患側股関節外転筋力と疼痛が(正判別率74.0%),歩行速度に影響を与える要因として患側膝関節伸展筋力と年齢が抽出された(決定係数:0.48)。【結論】杖歩行の可否を決定する要因と歩行速度を決定する要因は異なり,杖歩行獲得には患側股関節外転筋力の向上と疼痛の軽減が,歩行速度向上には患側膝関節伸展筋力の向上が必要と考えられた。
著者
山本 悟 西 光晴 佐々木 宏典 石川 浩三 安田 聖子 澄川 泰弘 岸下 裕輔 井田 唯香 吉田 充広 掛田 崇寛 石川 敏三
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.215-221, 2011-12-10 (Released:2013-03-16)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

We have newly developed a low-powered magnetic stimulator (MS) that is characterized by two different frequency modes: 2 kHz (low frequency) and 83 MHz (ultra-short wave). It is suggested that MS reduces rat neuropathic pain associated with the prevention of neuronal degeneration. However, little is known about certain mechanisms of MS, at least, applicable value of the analgesic approaches in clinical situation. Thus, we aimed to determine the analgesic effects of MS in human with shoulder stiffness. We recruited volunteers with shoulder stiffness (MS was applied once for 10 min.) and with acute pain (MS was applied once a day (10 min period) for 9 days. The trial study on analgesic effects in human of new magnetic therapeutic instrument (Angel Touch®) were examined. We examined safety of MS based on electrocardiographic testing and body surface temperature. By using the heart rate on the electrocardiogram, we used FFT analyzer to analyze low frequency components (LH: 0.05 - 0.15Hz) and high frequency components (HF: 0.15 - 0.45 Hz). Muscle shoulder stiffness has been improved by the continued irradiation without a thermal action. Based on the present study, we suggest that MS has beneficial analgesic effects in human, and that MS will be a useful approach to treatment for neurodegenerative disorder because it may relieve pain via improvement of functional modulation of pain-emotional system.
著者
澄川泰弘 川端悠士
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【目的】人工膝関節置換術は手術手技の進歩やインプラントデザインの改良に伴い,安定した術後成績が得られるようになっており,大部分の症例が術後早期に自立歩行が可能となる。しかしながら自立歩行を獲得しても歩行遊脚期に膝関節屈曲角度が減少する歩行パターン(Stiff knee gait;SKG)を呈する症例は少なくない。遊脚期における膝関節屈曲運動の低下は,足クリアランス低下に伴う躓きや,骨盤挙上運動等の代償動作の原因となる。また長期的なインプラントの耐久性を考慮してもdouble knee actionによる衝撃吸収機構の再建が重要となる。膝関節術後例を対象とした先行研究では,荷重応答期における膝関節運動については多く検討されているが,歩行時の膝関節運動範囲について検討した報告は少ない。また片麻痺例・脳性麻痺例を対象としたSKGに関する報告は散見されるが,人工膝関節置換術後例ではその背景が異なる。そこで本研究では人工膝関節置換術後例の歩行時膝関節運動範囲に関連する因子を明らかにすることを目的とする。【方法】対象は変形性膝関節症に対して人工膝関節置換術を施行した症例で,退院時に杖歩行が可能な22例(全置換術19例・単顆置換術3例,術後経過日数28.91±8.4日)とし,中枢神経系障害の既往を有する例は対象から除外した。歩行時膝関節角度の測定は術側の大腿骨大転子,膝関節裂隙,脛骨外果をマーキングした後にデジタルカメラを使用して矢状面から動画(30fps)を撮影した。歩行速度は対象者の快適歩行速度とし,1度の動画撮影において3歩行周期を記録した。動画データはMotion Analysis Toolsを使用して静止画から膝関節角度を測定,1歩行周期から膝関節最大屈曲・伸展角度,前遊脚期(Psw)および遊脚初期(Isw)における屈曲角度を抽出し, また運動範囲(最大屈曲-最大伸展)を求め3歩行周期における平均値を代表値とした。膝関節可動域はゴニオメーターを使用して膝関節屈曲および伸展可動域を測定した。下肢筋力は膝関節伸展筋力をHand Held Dynamometerを使用し,3回の測定における最大値を代表値とした。膝関節機能評価には日本語版WOMACを使用して術前と退院時に評価を実施,また疼痛項目を抽出し疼痛評価とした。基本的情報として性別,年齢,体重,身長,BMI,術前・術中可動域および使用機種はカルテより抽出した。一標本t検定を用いて人工膝関節置換術後例の運動範囲を先行研究における健常例のデータと比較した。次に運動範囲と基本的情報および各測定項目におけるデータの関連性についてSpearmannの順位相関係数を用いて検討した。統計学的解析にはSPSSを使用し有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言ならびに臨床研究に関する倫理指針に則って行った。対象には研究の趣旨を説明し同意を得た。得られたデータは匿名化し個人情報管理に留意した。【結果】人工膝関節置換術後例の歩行時膝関節運動範囲は44.48±8.9であり健常例データ59.6±18.4に比較して有意に低値を示した(p<0.01).運動範囲に関連する因子として術前屈曲可動域rs=0.57(p<0.01),術中可動域rs=0.46(p=0.03),術後屈曲可動域rs=0.44(p=0.04),術後伸展可動域rs=0.44(p=0.04),歩行時最大屈曲角度rs=0.71(p<0.01),歩行時最大伸展角度rs=-0.49(p=0.02),Iswにおける膝関節屈曲角度rs=0.51(p=0.01)に有意な相関関係を認めた。【考察】本研究結果から人工膝関節置換術後例では歩行時における膝関節運動範囲は狭小化していることが明らかとなった。運動範囲の狭小化には疼痛に伴う膝関節周囲筋の防御性収縮や術前の学習された歩行様式の残存が考えられる。また術前・術中・術後の屈曲可動域,術後伸展可動域,Iswにおける膝関節屈曲角度が膝関節運動範囲に関連する要因として重要であることが明らかとなった。運動範囲の拡大にはまず膝関節屈曲・伸展可動域を拡大する必要があると考えられた。また遊脚期における膝関節屈曲角度にはPsw・Iswにおける円滑な膝関節屈曲運動が必要とされるが,膝関節運動範囲とPswにおける屈曲角度には有意な関連は認めず,Iswにおける屈曲角度のみと有意な関連を認めたことから,人工膝関節置換術後例においてはPswにおける円滑な前足部荷重へと移行できず,Iswで努力的に屈曲運動を行っていることが推測される。よってSKG改善にあたってはPswにおける膝関節屈曲角度を改善する必要があると考えられる。Pswにおける膝関節屈曲角度減少には膝関節のみならず股関節・足関節の関節運動の影響も大きいと考えられ,今後は多関節における運動分析を行う必要がある。【理学療法学研究としての意義】本研究はSKG改善を目的とした運動療法を展開する上での一助になると考えられ,非常に意義深い理学療法研究であると考えられる。