- 著者
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濱田 綾
- 出版者
- 公益社団法人 日本心理学会
- 雑誌
- 日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
- 巻号頁・発行日
- pp.PO-091, 2021 (Released:2022-03-30)
人は加齢と共に,あるいは限界が感じられる環境や条件下(転居や卒業など)で,残された時間が有限であるという知覚が強まるとされている。本研究は中年期のライフイベントである定年退職を取り上げ,未来の時間的展望と個人の役割及び就労状況との関連についての検討を行った。定年退職予定者及び経験者である55歳~72歳の男性434名を対象とし,Web調査を実施した。調査内容として就労状況,定年退職経験の有無,未来展望尺度:日本語版(池内・長田,2014),中西・三川(1987)などを参考に作成した[仕事][家族や家庭][個人活動]役割に関する項目への回答を求めた。未来展望尺度得点について,定年退職予定者と経験者の比較では有意な差は認められなかった。また,各役割を平均値で高群と低群に分け,就労状況との2要因分散分析を行ったところ,各役割群と就労状況の主効果が有意であったが,交互作用は認められなかった。役割高群が低群より,また就労している方が無職より高い得点を示した。結果より,一時点の定年退職経験ではなく,個人の役割と就労状況が中年期~老年期の未来の時間的展望に影響すると考えられる。