著者
瀬木 俊輔
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.23-00140, 2023 (Released:2023-11-20)
参考文献数
25

本研究は,建設産業の役割を明示的に考慮した動学的確率的一般均衡モデルの定式化を行い,国土の災害リスクと,建設産業の最適な規模(資本ストックや雇用者数)の関係を分析する.分析の結果,以下の知見が得られる.長期にわたり災害に見舞われていない平常時において,災害リスクの存在が建設産業の最適規模を増やすかどうかは,家計のリスク回避性向に依存する.リスク回避性向が高い場合には,平常時の建設産業の最適規模は増え,リスク回避性向が低い場合には,最適規模は減る.日本においては,災害保険のリスクプレミアムの高さを考慮すると,災害リスクの存在は,平常時における建設産業の最適規模を増やすと考えられる.災害リスクの向上が顕在化したときには,可能な限り速やかに,建設産業の規模を最適な水準まで拡大すべきである.
著者
吉積 尚志 瀬木 俊輔 Kiyoshi KOBAYASHI
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-8, 2020 (Released:2020-06-22)
参考文献数
7

日本企業が参画した海外インフラ建設プロジェクトにて納期遅延が発生し,多額な損害が発生する事例が後を絶たない.本論文は,海外インフラ建設プロジェクトにおいて遅延が発生する要因を契約形態に着目し,纏めたものである.一般的に,遅延が発生した場合,請負者責による遅延日数に対して契約にて定められた損害賠償額(LD)を請負者は発注者に支払う必要があり,請負者はLD支払いを避けるというインセンティブによって,工程を遵守しようと努力する. 本研究ではPrincipal とAgentの関係に基づいてコンソーシアム契約における請負者のインセンティブについて評価した結果,請負者のインセンティブが低下し,そのため,工程遅延が発生しやすくなることを示した.
著者
瀬木 俊輔 小林 潔司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_353-I_371, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
39

本研究は,マクロな社会資本投資政策の便益の世代別帰着分布を評価可能な動学的応用一般均衡(DCGE)モデルを構築した.その上で,構築したモデルを我が国に適用し,社会資本投資政策と長寿命化政策について分析を行い以下のような知見を得た.社会資本投資には,その水準を増やすと将来世代の厚生が増加する一方で現在世代の厚生が減少するという世代間厚生のトレードオフの問題が生じる.起債による世代間所得移転はこの問題を効率的に緩和できるが,これは公債残高を一時的に増加させる.長寿命化政策は,現在世代を含む幅広い世代に対して便益をもたらし,損失を受ける世代への補償は現在世代の中だけで行うことが可能である.