著者
中村 俊之 岩本 武範 宇野 伸宏
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.32-36, 2017

2017年(平成29年)2月24日より実施されたプレミアムフライデーは,毎月末の金曜日に普段よりもプレミアムな生活を推奨する個人消費喚起キャンペーンである.本研究では,プラミアムフライデー実施により,公共交通の利用に影響を与えているのかについて,その可能性を分析する.静岡市を対象に交通系ICカードデータを利用して公共交通のマクロな利用割合を静岡市全域のバス停留所,ならびにプラミアムフライデーの大々的にイベントが実施され,職員にもその働き方を推奨していた行政のバス停留所を対象として分析を行った. 分析の結果,全域,イベント実施したバス停において,プレミアムフライデー実施による積極的な公共交通利用を現状では影響を与える結果は確認できなかった.この結果は,現状でのプレミアムフライデー参加者数を考慮した場合に,概ね妥当な結果であり,今後の定着にむけて,PRの方法や実施内容・方法の再検討が求められる.
著者
青木 勝一
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.1-12, 2021 (Released:2021-11-16)
参考文献数
25

政府は医療政策の「予防・健康づくり」の中でも,生活習慣病予防を重視し,「特定健康診査」と「特定保健指導」の実施率向上を行ってきたが,その実施率は目標を達成するに至っていない.本研究は,市町村の国民健康保険の特定健診・特定保健指導を対象に,市町村の予防・健康づくり施策がその実施率に与える影響を定量分析し,政策的含意を考察するものである.本研究の分析結果は以下の通りである. ①地域包括ケアシステムの推進が特定健診等の実施率に影響を与えており,その要因は地域のつながりの強さである. ②特定健診等へのインセンティブ付与や情報提供の効果は不明確であり,先行研究の理論を裏付けるものではない. ③がん検診や後発医薬品使用の促進,重複・多剤投与者に対する取り組みを通じた健康や健診全般の重要性の理解が,間接的に特定健診等の実施率向上に寄与している.
著者
河合 美香 那須 清吾 豊田 裕貴
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.21-31, 2017 (Released:2019-03-05)
参考文献数
17

本研究では、日本企業がビッグデータ、IOTなどの概念が先行しているわりには、うまく進んでいないことを問題意識としている。この問題意識から、データを使ったビジネス変革をデジタルトランスフォーメーションと呼び、初動のステップに影響する要素を事例から抽出し、それらの事象から質的比較分析(QCA分析: Qualitative Comparative Analysis)を用いた分析を行い、メカニズムを明らかにすることを目的とする。事例から導きだした原因要素が結果に関連するメカニズムを分析することによって、QCAのアプローチが事例にもとづく研究に有効であることを示し、デジタルトランスフォーメーションを進める上での必要要素によるメカニズムのパターンを抽出した。
著者
村尾 佳子 那須 清吾
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-12, 2019 (Released:2019-11-01)
参考文献数
15

事業承継には大きく親族への承継,従業員への承継,第三者への承継の3種類がある.中でも,親族への承継は数的にも多く,日本の中小企業経営において重要な意味を有するが,先代と後継者の間で承継プロセスが円滑に進まず,頓挫してしまうようなケースも少なくない.経営者と後継者の承継プロセスについては,近年では,経営者と後継者の相互作用的関係性の中で承継プロセスが段階的に進んでいくという研究がされている.しかし.承継プロセスを進めるために信頼の獲得が重要であるという指摘はあるが,具体的にどのような要素が信頼獲得に繋がっているかという点については明らかにはされていない.本研究では,ファミリービジネスにおける事業承継のプロセスを円滑に進めるために必要な要素とその関係性について事例研究を通じて明らかにした.
著者
吉田 恭 齋藤 道雄
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.36-47, 2019 (Released:2020-06-09)
参考文献数
26

近年,都市の様々なエリアでエリアマネジメント(以下「エリマネ」)活動が行われるようになってきた.エリマネがより広く社会的に認知を受けるためには,エリマネ団体がマーケティング的な視点で来訪者を分析し,エリアの企業や行政を巻き込んで戦略的に活動することが必要である.この論文は,大阪駅周辺梅田地区のエリマネを例に取り,エリアへの来訪者はどのような人たちでどのようにエリマネ活動を評価しているのか,また来訪者は今後どう変化していくのかを明らかにする.現在,若年女性が多く訪れている梅田エリアは今後高齢化の懸念があること,エリマネ活動としては景観向上活動が幅広く支持されていること,インバウンドの影響が予想されること等が明らかになったが,これらは他のエリアの活動に対しても参考となる.
著者
西中 美和 増田 央
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-11, 2022 (Released:2022-11-03)
参考文献数
39

本稿では消費者生成メディア(CGM)を活用したオンライン・ソーシャル・プラットフォームにおける信頼成立の要因や影響を文献調査から考察した.信頼はあらゆる形態の関係を発展させ維持するための重要な要素であるため,自律的CGMで信頼成立の要因や影響を把握することは持続性のあるオンライン集合体の成立要件を把握することにもなる.調査対象の文献をADOフレームワークで分析した.結果から信頼が先行要因と後続事象である購入意向を仲介することが確認された.結論として「信頼はCGMサービスの要因間を仲介し,オンライン・ソーシャル・プラットフォームの本来の形である相互扶助を促進し,アクター全員の参加によるサービス構築に寄与する.それによりサービスのエコシステム化を推進し,ビジネスにも貢献する」という含意を示した.
著者
西口 雄基 萩原 健斗 大江 朋子
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.21-29, 2022 (Released:2022-09-29)
参考文献数
33

生産年齢人口において自殺は主要な死因となっており,リスクの高い個人を発見して自殺を未然に防ぐ ことは倫理的な側面からも,経済的な側面からも,これからの経営において強く求められることである. 自殺したいという思考や自殺の具体的な計画を含む希死念慮は,自殺に最も密接に結びつくリスク要因の 一つである.その一方,日常的なネガティブ体験から「死にたい」という思考が連想される場合もある. 先行研究では死が連想されやすい傾向には個人差があることが示唆されており,さらにその個人差は決定 論的信念によって左右される可能性があるが,これを実証した研究は行われていない.そこで,本研究で は,ネガティブな思考や体験から死に関する思考が連想されてしまう傾向を計測する質問紙尺度である死 連想傾向尺度を開発した.さらに,縦断調査により,決定論的信念が3カ月後の死連想傾向の増加を予測 することが示された.本研究により,決定論的信念が死に関わる思考を増加させるリスク要因である可能 性が新たに示された.このような個人差の計測を行うことで早期に自殺リスクを発見し,ケアしていく方 法は企業や官公庁におけるメンタルヘルスの問題にも応用可能であると考えられる.
著者
今永 典秀 清水 敬介
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.14-19, 2017 (Released:2019-03-05)
参考文献数
7

愛知県滝高等学校における正規の部活であるビジネス部の事例研究より,地域企業と学校と学生が協働する仕組みと学生への教育効果について考察する.ビジネス部は2014年から活動を開始し,「商品開発」と「ビジネスプラン」をその二本柱とする.学生と地域企業が連携した商品開発により,販売を実現することや,ビジネスプランコンテストの全国大会出場などの具体的成果が生まれた.また,地域企業との連携においては,顧問がコーディネーターとして地域企業と学生の利害調整役を担うことにより,地域企業・学校・学生の3者が相互に恩恵をもたらす仕組みが構築されることを把握できた.学生がビジネス部の活動に参加することにより,多様な人々と仕事をするために必要な基礎的な力である「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」に関する能力が向上する教育効果が確認できた.
著者
中島 徳至 髙木 朗義
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-9, 2021 (Released:2021-07-29)
参考文献数
17

SDGsを始め,世界に数多くある社会課題の中で貧困問題解消の重要性が高まりを見せる中,その手段として低所得者層を対象としFinancial Inclusion(金融包摂)を実現する金融が注目を集めている.しかしながら従来型のマイクロファイナンスの限界も見え始めており,新興国における社会経済の発展に向けたブレークスルーを生み出すためには更なる枠組みの金融のあり方が求められている. 本稿では,従来型のマイクロファイナンスの課題を解決し,低所得者層であっても中間所得層へのステップアップを可能にするために開発したFinTechを活用した次世代型金融サービスの仕組みとビジネスモデルについて述べるとともに,新たに生み出される社会について言及する.
著者
宮本 琢也 高橋 宏幸
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.18-25, 2015 (Released:2019-08-07)
参考文献数
17

本研究は、ここ数年、南アジア地域で注目を集めるようになったスリランカの経済状況と日系企業の現 状と課題について議論する。 スリランカは、古くから親日国として知られているが、日系企業も数多く進出している。 同国は、現 地での人材マネジメントの取り組みやすさなど経営面でのメリット、インドやパキスタンへの近接性とい う立地面でのメリットなどが数多くあるものの、電気代などエネルギーコストが高さや、現地の裾野産業 が未成熟なためにサプライチェーンにおいて課題がある。このようなメリットと課題を総合的に検討しな がら、スリランカにおける日系企業の優位点について検討する。
著者
宮本 琢也 高橋 宏幸
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.18-25, 2015

本研究は、ここ数年、南アジア地域で注目を集めるようになったスリランカの経済状況と日系企業の現 状と課題について議論する。 スリランカは、古くから親日国として知られているが、日系企業も数多く進出している。 同国は、現 地での人材マネジメントの取り組みやすさなど経営面でのメリット、インドやパキスタンへの近接性とい う立地面でのメリットなどが数多くあるものの、電気代などエネルギーコストが高さや、現地の裾野産業 が未成熟なためにサプライチェーンにおいて課題がある。このようなメリットと課題を総合的に検討しな がら、スリランカにおける日系企業の優位点について検討する。
著者
伊東 佐知子 小林 潔司
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.22-31, 2021

気候変動が企業の事業活動に多大な影響を与える可能性があることから,投資家が企業のリスク要因として ESG(環境,社会,ガバナンス)を重視するようになった.これに対し,金融機関の融資先企業から気候関連リスク分析に必要な情報提供が十分にされてるとは言えない.このような状況を鑑み,情報開示の国際的な共通枠組みを構築する気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が設置された.気候関連情報を企業の財務情報に包含することでリスクを適正に評価し資本市場に内部化させ,金融市場の安定化につなげることが期待されている.本研究では,TCFD提言に基づく情報開示基準の整理,グローバル金融機関の情報開示状況(適合性評価)を分析し,現状の課題と今後の対応の方向性について考察する.
著者
吉積 尚志 瀬木 俊輔 Kiyoshi KOBAYASHI
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-8, 2020 (Released:2020-06-22)
参考文献数
7

日本企業が参画した海外インフラ建設プロジェクトにて納期遅延が発生し,多額な損害が発生する事例が後を絶たない.本論文は,海外インフラ建設プロジェクトにおいて遅延が発生する要因を契約形態に着目し,纏めたものである.一般的に,遅延が発生した場合,請負者責による遅延日数に対して契約にて定められた損害賠償額(LD)を請負者は発注者に支払う必要があり,請負者はLD支払いを避けるというインセンティブによって,工程を遵守しようと努力する. 本研究ではPrincipal とAgentの関係に基づいてコンソーシアム契約における請負者のインセンティブについて評価した結果,請負者のインセンティブが低下し,そのため,工程遅延が発生しやすくなることを示した.
著者
碓井 誠
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.9-17, 2015 (Released:2019-08-07)
参考文献数
5

小売業はドメスティックな産業だと言われてきたが、新興国も含めた消費行動、経済成長、価値観の変 化を背景に、グローバル産業としての進展が広がっている。グローバルリテーラーに共通な特徴の一つは、 バリューチェーンの一気通貫でのデザインをベースとした事業インフラの強化と柔軟性である。こうした イノベーションがどう進められたかは大きな示唆を与えるものと言える。しかし、日本の小売業の海外展 開は大きな遅れを取っており、唯一、セブン-イレブン・ジャパンを中心としたコンビニエンス業態のみ が、大きな成功を収めていると言える。 本論文では、日本、米国、中国の小売業態を概観し、セブン-イレブンが各国の異なる環境下で事業イ ンフラの整備と柔軟な市場対応を図るに至った成功要因を分析し、その共通性を整理する。
著者
村尾 佳子 那須 清吾
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.13-24, 2019 (Released:2020-01-29)
参考文献数
10

ファミリービジネスの事業承継で多くを占める親族への承継において,先代と後継者間のコミュニケーションに課題があり,承継が上手く行かず,時には承継候補者が会社を辞めてしまうといった問題にまで発展することがある.先代から後継者への承継を成功させるためには,先代と後継者間で円滑なコミュニケーションが行われる必要があるが,そのプロセスにおいて,どのようなことに留意しながら,コミュニケ―ションを行えばよいのか,といった点について明らかにしている先行研究は存在しない.本研究では,ファミリービジネスにおける先代と後継者間のコミュニケーションに着目し,事業承継のプロセスにおける必要要素が継承されるコミュニケーションのメカニズム,留意点と,コミュニケーションの支援者の存在の効果のメカニズムについて,事例研究を通じて明らかにした.
著者
吉田 恭
出版者
一般社団法人 グローバルビジネス学会
雑誌
グローバルビジネスジャーナル (ISSN:24340111)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.34-45, 2018 (Released:2019-07-01)
参考文献数
46

エリアマネジメントは地域が行う共益的な活動であり,これまでまちの景観形成・賑わいづくりなどの分野で成果を上げてきた.近年,日本を代表するビジネス街である大丸有(だいまるゆう)地区ではエリマネ活動として健康づくりが行われている.日本経済のエンジン部に当たるビジネス街で健康づくりに取り組むことは,職場環境の向上を通じて日本経済の効率を高める一方,立地関連産業へのフィールドの提供などを通じてその高度化に寄与する可能性も持っている.こうした活動を持続的なものとするためには,これを地域ビジネスの軌道に乗せていくことが有効と考えられる.エリマネとして行われている健康づくりについて,地域ビジネス化という観点からその現状と課題を明らかにするとともに,エリマネ団体の役割について考察する.