著者
星野 照秀 西山 明宏 野村 武史 片倉 朗
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.68-72, 2016 (Released:2017-06-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

非歯原性疼痛の1つに口腔粘膜に持続的な灼熱感を特徴とする疼痛症候群として口腔灼熱症候群(Burning mouth syndrome:以下BMS)がある。欧米諸国ではクロナゼパムの局所投与や全身投与が口腔の灼熱感を緩解させると報告がある。しかし,本邦でBMS患者に対しクロナゼパムを使用した検討はない。そこで今回われわれは,2010年4月から2013年3月までに東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科を口腔の灼熱感を主訴に来院し,クロナゼパムを投与した9名のBMS患者を対象として奏効率を検討した。また,内服によるクロナゼパムの適正な投与量,予後などについても臨床的検討を行った。患者は女性のみで平均年齢は72.3歳であった。疼痛発現部位は舌が多数を占めた。クロナゼパムの初回投与量は0.5mgとし,2週間で6例に効果を認めた。3例は投与量を変更し,6週以内に効果を認めた。9例全てで著効又は有効であった。今回の研究でBMS患者に対し,クロナゼパムの内服による効果が期待できる可能性を示した。
著者
前山 恵里 加藤 宏 長谷川 大悟 柴野 正康 大野 啓介 藥師寺 孝 片倉 朗 柴原 孝彦 髙野 正行
出版者
日本口腔診断学会
雑誌
日本口腔診断学会雑誌 (ISSN:09149694)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.111-116, 2021 (Released:2021-08-06)
参考文献数
34

Schwannoma is a benign tumor originating from Schwann cells, occurring rarely in the masseter muscle. In this report, we describe a case of schwannoma in the masseter muscle. A 35-year-old man was referred to our hospital because of swelling of the left cheek. A painless elastic hard mass was palpable in the left cheek. No abnormalities were found in the skin, oral mucosa, or cervical lymph nodes. MRI T2-weighted images showed a high signal area with 43×37mm internal nonuniformity and clear boundaries. Although malignant atypical cells were not detected by fine-needle aspiration and incisional biopsy, no definitive diagnosis was obtained. The lesion was diagnosed as a benign tumor of the masseter muscle and resection was performed under general anesthesia. It was located in the masseter muscle without any adhesion to surrounding tissues. No nerves were continuous with the tumor. The tumor was 45×40×30mm in size and was covered with a capsule. Histopathological diagnosis was schwannoma. After the operation, left facial nerve palsy was recognized, but it was completely cured 3 months after the operation. In addition, neither masseter atrophy nor masticatory function was observed. Two years have passed since the operation without recurrence of the tumor.
著者
片倉 朗
出版者
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
雑誌
日本口腔腫瘍学会誌 (ISSN:09155988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.197-206, 2016-12-15 (Released:2016-12-29)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本学では地域の歯科医師会と共同した口腔がん検診事業を1990年から開始し,本年で25年が経過した。現在までに本学の3つの附属病院の口腔外科,歯科・口腔外科ならびに口腔がんセンターが協力して,連携する各地域の環境にあった口腔癌検診事業を継続的に行ってきた。1992年に千葉市歯科医師会と本格的に開始した口腔癌検診事業は2015年9月現在,千葉県,東京都,埼玉県の14の市に広がり,それぞれの地域性に合わせた形式で年1~3回の集団検診を行っている。1992年から2008年までの集団検診において千葉県全域では7,030名の検診を行った。その中で,口腔癌8名,前癌病変60名,検査または治療が必要な口腔粘膜疾患(良性腫瘍,扁平苔癬など)707名が抽出され,口腔癌の発見率は0.11%であった。この発見率は各年の累計でもほぼ同様であった。また,口腔癌検診の普及のために以下のことに取り組んできた。(1)市民への口腔癌の周知活動,(2)地域歯科医師会の会員をはじめとした一般の歯科医師への生涯教育活動,(3)行政への口腔癌の予防,早期発見の重要性の説明,(4)口腔癌スクリーニングのためのインフラの整備ならびに検査機器や検査方法の開発,などである。これらの活動の成果として,4つの市区では行政からの予算の補助によって恒常的に歯科診療所における任意型の検診を実施するに至った。