著者
金子 直樹 川野 真太郎 松原 良太 笹栗 正明 森山 雅文 丸瀬 靖之 三上 友里恵 清島 保 中村 誠司
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.38-42, 2015 (Released:2016-06-30)
参考文献数
11

今回,舌粘膜疹を主訴に来院した第2期梅毒の1例を経験した。症例は20歳代の女性で,舌尖および舌縁部の白色病変と両手掌の丘疹性紅斑を認めた。梅毒血清検査にて陽性であったため第2期梅毒と診断し,抗菌薬内服を開始した。その後,口腔粘膜疹および皮疹は消退し,梅毒血清検査は陰性化した。近年,本症例のように口腔粘膜疹が梅毒の初発症状となる症例が増えており,今後注意を要すると考えられた。
著者
金生 茉莉 藤田 康平 池浦 一裕 加藤 伸 小高 利絵 高森 康次 中川 種昭 角田 和之
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.41-45, 2018 (Released:2019-06-30)
参考文献数
14

Laugier-Hunziker-Baran症候群(LHB)は,口腔,指趾の色素沈着と爪甲色素線条を特徴とし,全身症状を伴わない後天性疾患である。今回,経過観察中に症状推移の観察が可能であったLHB症候群の1例を経験した。71歳女性で初診時,下唇,頬粘膜に黒褐色色素斑があった。4年経過時に粘膜色素斑の増悪と指趾,爪甲色素線条が発生した。全身検索の結果LHBの診断となった。口腔粘膜色素斑の診断には全身疾患の精査と慎重な経過観察が重要である。
著者
福田 諒 髙森 康次 臼田 聡 道端 彩 池田 浩子 金生 茉莉 宮下 英高 角田 和之 河奈 裕正
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.37-43, 2019 (Released:2020-06-30)
参考文献数
16

今回われわれは左側顎関節部に生じた結節性偽痛風と診断した1例を経験したので報告する。症例は48歳男性で左側顎関節部の疼痛を主訴に受診。補正偏光顕微鏡による弱い正の複屈折性を示す長方形の結晶の存在の確認,X線上での下顎頭周囲の点状の石灰化像より結節性偽痛風と診断した。顎関節部周囲の石灰化を伴う症例において結節性偽痛風は重要な鑑別疾患の一つと考えられる。
著者
星野 照秀 西山 明宏 野村 武史 片倉 朗
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.68-72, 2016 (Released:2017-06-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

非歯原性疼痛の1つに口腔粘膜に持続的な灼熱感を特徴とする疼痛症候群として口腔灼熱症候群(Burning mouth syndrome:以下BMS)がある。欧米諸国ではクロナゼパムの局所投与や全身投与が口腔の灼熱感を緩解させると報告がある。しかし,本邦でBMS患者に対しクロナゼパムを使用した検討はない。そこで今回われわれは,2010年4月から2013年3月までに東京歯科大学市川総合病院歯科・口腔外科を口腔の灼熱感を主訴に来院し,クロナゼパムを投与した9名のBMS患者を対象として奏効率を検討した。また,内服によるクロナゼパムの適正な投与量,予後などについても臨床的検討を行った。患者は女性のみで平均年齢は72.3歳であった。疼痛発現部位は舌が多数を占めた。クロナゼパムの初回投与量は0.5mgとし,2週間で6例に効果を認めた。3例は投与量を変更し,6週以内に効果を認めた。9例全てで著効又は有効であった。今回の研究でBMS患者に対し,クロナゼパムの内服による効果が期待できる可能性を示した。
著者
山本 亜紀 神部 芳則 大田原 宏美 柏崎 明子 山下 雅子 林 宏栄 野口 忠秀 森 良之
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.95-99, 2017-12-30 (Released:2018-01-16)
参考文献数
20
被引用文献数
1

65歳の男性。繰り返す口内炎を主訴に,近医から当科を紹介され受診した。初診時,口腔内には多数のアフタを認めたが,偽膜形成は認めなかった。細菌培養検査にてカンジダ陽性であったため抗真菌薬を使用したが症状を繰り返した。外陰部潰瘍を認めていたことから内科に対診したところ,HIV感染が判明した。その後,HIV治療が開始され,現在は口腔内症状も改善し経過観察を行っている。
著者
作山 葵 神部 芳則 早坂 純一 月村 久恵 井上 公介 林 宏栄 岡田 成生 野口 忠秀 森 良之
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.7-12, 2018 (Released:2018-12-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

乾燥剤の誤飲・誤嚥は,高齢者や小児で多く認められる。酸化カルシウムは,食品乾燥剤として多用されており,シリカゲルと比較して誤飲した場合に発熱とアルカリによる粘膜腐食作用により症状が重症化しやすい。今回,われわれは乾燥剤の誤食により広範囲な口腔粘膜化学損傷を生じた1例を経験した。患者は74歳,女性で酸化カルシウムを誤食し当院を受診した。広範囲に口腔粘膜の潰瘍と舌の腫脹,口腔乾燥を認めた。入院の上,口腔衛生管理と栄養管理を行い症状は改善し15日目に退院となった。乾燥剤の種類と摂取量に基づいた適切な処置を行うことが肝要である。
著者
太田 美穂 松原 良太 川野 真太郎 大部 一成 緒方 謙一 中村 誠司
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.47-51, 2014 (Released:2015-09-06)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

抜歯後出血は局所的要因に起因することが多いが,出血性素因から生じる場合もある。本報告は,80歳代女性の抜歯後出血を契機に明らかとなった慢性播種性血管内凝固症候群(DIC)の1例である。血液検査でDICに起因する止血凝固異常と診断され,トロンボモジュリン製剤投与にてDICは改善したが,その原因となる基礎疾患は認められなかった。治療終了後は経過観察を行っているが,DICの再燃なく経過良好である。
著者
渡邉 由裕 清水 香澄 永田 心 乾 眞登可 森田 寛 田川 俊郎
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.8-13, 2013 (Released:2014-06-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1

歯肉出血の後,急速な死の転帰を辿った急性前骨髄性白血病の1例を報告する。患者は61歳男性で歯肉より出血が持続するため来院した。血液検査では,白血球数は正常範囲内であったが,赤血球数,ヘモグロビン量,ヘマトクリット値,血小板数は低値で,血液凝固能も低下し,LDHが高値であった。内科対診の結果,急性前骨髄性白血病と診断されたが,初診当日深夜に脳出血にて他院に救急搬送され,5日後に死亡した。
著者
坂田 健一郎 山崎 裕 佐藤 淳 秦 浩信 水谷 篤史 大内 学 北川 善政
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.39-43, 2012 (Released:2013-07-31)
参考文献数
26
被引用文献数
4

味覚障害の主因は亜鉛欠乏とされ,治療は主に亜鉛製剤の補充療法が行われている。しかし,実際の臨床において亜鉛製剤の補充で効果がない症例を経験することが多い。また,我々の過去の報告では心因性と同様にカンジダ症,口腔乾燥症,舌炎などが味覚障害を引き起こすことがわかってきた。そこで今回,当科外来の味覚異常を訴えた患者で,実際に血清亜鉛値が低下しているか否かを検索するために,味覚異常を主訴に当科を受診した患者(n=144:味覚異常群)と,年齢と性別が一致した他疾患患者(n=159:対照群)の血清亜鉛値,亜鉛/銅 < 0.7を比較検討した。血清亜鉛値のカットオフ値を4段階に設定した(60μg/dl未満,64μg/dl未満,70μg/dl未満,80μg/dl未満)。血清亜鉛値の平均値,中央値,最高値,最低値は,味覚異常群で,74.4,72.0,155,45.0μg/dl,対照群で,74.2,73.7,156,49.0μg/dlと両群間に差は認めなかった。血清亜鉛値のカットオフ値を60μg/dl未満に設定した時のみ,60μg/dl未満を示した症例は対照群と比較して味覚異常群で有意に多かった(味覚異常群14%,対照群6%)。亜鉛/銅 < 0.7に含まれる割合は,味覚異常群64%,対照群61%と両群間に有意差は認めなかった。本研究では血清亜鉛値が高度に低下している場合以外は,味覚異常の自覚症状と血清亜鉛値の関連は認めなかった。以上から,血清亜鉛値は味覚異常を訴える患者すべてを対象とすると必ずしも反映しないことがわかった。
著者
福島 洋介 榎木 祐一郎 安井 宏仁 滝口 光次郎 長瀬 由美子 中本 紀道 佐藤 毅 坂田 康彰 依田 哲也
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔内科学会雑誌 (ISSN:21866147)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.20-25, 2012 (Released:2013-01-18)
参考文献数
19

今回われわれはアロプリノールにより発症し,重度口内炎を伴った薬剤性過敏症症候群の1例を経験したので報告する。症例は82歳男性で,全身の紅班および手掌の落屑を認めた。口唇および頬粘膜にびらんを認め,舌は軽度浮腫を呈し易出血性であった。口蓋には血性の痂皮が付着し自発痛・接触痛が著明であった。対症療法として4%リドカイン塩酸塩含有のアズレンスルホン酸ナトリウム含嗽剤を使用し,比較的早期に除痛と経口摂取が可能になった。
著者
大塚 志穂 矢郷 香 大塚 友乃 岡田 明子 岡田 豊 中川 種昭 朝波 惣一郎
出版者
日本口腔内科学会
雑誌
日本口腔粘膜学会雑誌 (ISSN:13417983)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.30-35, 2004-12-30 (Released:2010-02-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

アンギオテンシン変換酵素 (以下ACE) 阻害剤は, まれに副作用として顔面, 口腔粘膜などの血管神経性浮腫を惹起する。呼吸困難を生じることもあり, 浮腫が咽頭部に及ぶと生命の危険性もある。今回われわれは, ACE阻害剤が原因として疑われた舌・口底部の血管神経性浮腫を経験したので報告する。患者は88歳, 女性で, 主訴は呼吸苦をともなう舌の腫脹であった。ACE阻害剤中止後, 1年4か月現在, 舌・口底部の浮腫の再発は認めていない。