著者
田口 徹 片野坂 公明 林 功栄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

高齢化が進む本邦において、肩こりや腰痛、線維筋痛症などの筋・筋膜性疼痛患者は極めて頻度が高く、これらの多くは身体的・精神的ストレスに大きく影響される。本研究では、ストレス誘発性筋・筋膜性疼痛の神経・分子機構の一端を明らかにした。レセルピン誘発性線維筋痛症モデルでは、酸感受性イオンチャネルであるASIC3、および脊髄ミクログリアがこのモデルの機械痛覚過敏に重要な役割を果たすことを明らかにした。また、行動薬理実験、および電気生理学実験より、運動誘発性筋・筋膜性疼痛にもASIC3が関わることを明らかにした。これらの結果は、ストレス誘発性筋・筋膜性疼痛の治療に有用であると考えられる。
著者
宮原 謙一郎 若月 康次 坪島 功幸 太田 大樹 片野坂 公明 水村 和枝 西条 寿夫 田口 徹
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12243, (Released:2022-08-05)
参考文献数
25

【目的】線維筋痛症は広範囲の痛みを主訴とする慢性疾患であるが,痛みの主たる発生源である筋組織内の変化は十分に特徴づけられていない。本研究では,線維筋痛症モデルラットを用いた組織学的解析からこの点の解明を試みた。【方法】7~9週齢の雄性SDラットに,生体アミンの枯渇剤であるレセルピンを投与し線維筋痛症モデルを作製した。モデル動物の下腿筋標本において,壊死線維や中心核線維の有無,筋湿重量や筋線維横断面積の変化を観察・定量化した。【結果】モデル動物では,壊死線維や中心核線維は観察されなかったが,筋湿重量が顕著に低下し,筋線維横断面積が顕著に減少することがわかった。【結論】本研究ではレセルピン投与による線維筋痛症モデルラットの筋内に生じる組織学的変化を明らかにした。得られた結果は難治性疼痛である線維筋痛症のメカニズム解明に繋がる基礎的知見であり,同疾患に対する理学療法アプローチの確立に有用であると考えられる。
著者
水村 和枝 小崎 康子 片野坂 公明 本多 たかし
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

筋機械痛覚過敏の末梢性機構を明らかにするため、持続が数日の伸張性収縮(LC)負荷による筋性疼痛のラットモデル(遅発性筋痛、DOMS)を作成し、1.筋圧迫・収縮に伴って遊離・放出される感作性物質の量的変化、それによる筋C線維受容器の感作,2.筋C線維受容器のイオンチャネル、受容体の発現変化,3.筋浮腫に伴う受容器終末の物理的(機械的)環境の変化、の3点について調べ,以下の点を明らかにした。1.取り出し筋標本の灌流液中のATP量は筋圧迫によって増大し、運動後2日目にもその量に変化は無かった。しかし、ATPは100μMまで筋細径線維受容器の機械感受性をむしろ抑制した。B2受容体拮抗薬、COX阻害薬、抗NGF抗体投与の遅発性筋痛に対する影響を調べたところ、遅発性筋痛の始発にはB2受容体を介しブラジキニンが、またCOX2が関わり、維持にはNGFが関わっていることが明らかになった。これに対応して、COX2のmRNA及び蛋白質はLC直後から12時間後まで増大し、NGFのmRNAは12時間後から2日後まで増大していた。NGFの筋注によって筋細径線維受容器の機械感受性は投与30分後から増大し、運動後の筋機械痛覚過敏における役割を支持する結果となった。2.suppression subtractive hybridizationによりLC2日後の後根神経節で増大するRNAを調べたところ、65種が見出された。そのうち痛みと関係があるannexinA2とcalbindin1の発現をRT-PCRで調べたところ、LC2日目の後根神経節で有意に増大していた。3.運動後の筋は対側と比べ約5%重く、浮腫状態であることがわかった。筋におけるアクアポリン1,4の免疫組織化学を行ったところ、その発現には一定の傾向が見られなかった。