著者
志賀 令明 本多 たかし
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.492-497, 2007-11-30 (Released:2017-01-26)

21歳から32歳の9名の女性を対象にして,1月経周期に3回の採血と各種心理検査を行い,月経前症候群(PMS)に該当する者を抽出すると同時に,血液成分(エストラジオール,プロゲステロン,ACTH,コルチゾール,レプチン,IL-1β),及び心理検査(PMS調査票,POMS,Y-G性格検査)各項目の検討を行った.採血時の各人の最終月経からの経過日数は1日から37日であった.各人の最終月経からの経過日数を横軸,血液成分,心理検査各項目得点を縦軸にして単回帰分析を行うと,有意な相関が見られたのは,コルチゾール,PMS調査票得点であり,双方とも月経周期が後半になるにつれて上昇した.PMS調査票得点と月経周期との単回帰式から算出した予測値との差に基づき,月経周期20日以上でPMS得点が予測値より高かった者をgroup H(n=4),下回った者をgroup L(n=7)とし比較した.その結果,group Hはgroup Lに比し,IL-1βで有意に高い値を示し,コルチゾール,レプチンで高い傾向を示した.また心理検査でも抑うつ性に関する得点が有意に高い値を示した.特にgroup Hは平均22日目にあたる採血時において,平均15日目にあたるその他の者(n=23)に比し,有意に高いIL-1βを示した.上記から,PMS群と考えられるgroup Hでは排卵周辺に炎症反応が強まり,炎症性サイトカイン濃度が上昇し,それが視床下部-下垂体-副腎皮質系に影響を与えて特有の抑うつ症状を起こさせるだけでなく,レプチンを抑制するコルチゾールの上昇は,レプチン抵抗性を引き起こし高レプチン血症を生じさせると考えた.またIL-1βの上昇はバソプレッシンの分泌亢進を引き起こし水分貯留などの原因になると考えた.上記から,PMSにおいて,排卵ないしは月経そのものを「炎症」ととらえる免疫系のメカニズムの不全を示唆した.
著者
三浦 浅子 本多 たかし
出版者
福島県立医科大学
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.27-36, 2014-03

本研究の目的は,口腔内の衛生状態の判定として目視確認による清潔判定には客観性が乏しいと考えたので,口腔内の唾液のATP値測定の有効性について明らかにすることである。健常者10名で14件について,起床時,朝食・昼食・夕食後,就寝前の歯磨きによる唾液のATP 値の日内変動を分析した。今回の結果では,唾液のATP値は起床時と歯磨き前は低く,歯磨き後は高かったが有意差は認められなかった。しかし,就寝前歯磨き後と翌朝起床時の唾液のATP値には有意差(p<0.05)が認められた。歯磨きによって歯垢面のプラークが吐き出されATP値を高くしていること,うがいの仕方によって食物残渣やプラークが残留していることが考えられた。これらは,唾液に含まれるATP値が1日を通して食事の前後で継時的に変化することを示しており,唾液のATP値ふき取り法は,口腔内の常在菌と食物残渣の両方を測定することができ,口腔内の衛生状態を客観化する簡便な方法として有効であることを示唆した。
著者
水村 和枝 小崎 康子 片野坂 公明 本多 たかし
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

筋機械痛覚過敏の末梢性機構を明らかにするため、持続が数日の伸張性収縮(LC)負荷による筋性疼痛のラットモデル(遅発性筋痛、DOMS)を作成し、1.筋圧迫・収縮に伴って遊離・放出される感作性物質の量的変化、それによる筋C線維受容器の感作,2.筋C線維受容器のイオンチャネル、受容体の発現変化,3.筋浮腫に伴う受容器終末の物理的(機械的)環境の変化、の3点について調べ,以下の点を明らかにした。1.取り出し筋標本の灌流液中のATP量は筋圧迫によって増大し、運動後2日目にもその量に変化は無かった。しかし、ATPは100μMまで筋細径線維受容器の機械感受性をむしろ抑制した。B2受容体拮抗薬、COX阻害薬、抗NGF抗体投与の遅発性筋痛に対する影響を調べたところ、遅発性筋痛の始発にはB2受容体を介しブラジキニンが、またCOX2が関わり、維持にはNGFが関わっていることが明らかになった。これに対応して、COX2のmRNA及び蛋白質はLC直後から12時間後まで増大し、NGFのmRNAは12時間後から2日後まで増大していた。NGFの筋注によって筋細径線維受容器の機械感受性は投与30分後から増大し、運動後の筋機械痛覚過敏における役割を支持する結果となった。2.suppression subtractive hybridizationによりLC2日後の後根神経節で増大するRNAを調べたところ、65種が見出された。そのうち痛みと関係があるannexinA2とcalbindin1の発現をRT-PCRで調べたところ、LC2日目の後根神経節で有意に増大していた。3.運動後の筋は対側と比べ約5%重く、浮腫状態であることがわかった。筋におけるアクアポリン1,4の免疫組織化学を行ったところ、その発現には一定の傾向が見られなかった。