著者
牛込 恵子 谷口 英喜
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.99-107, 2018 (Released:2018-08-23)
参考文献数
13

当院では,2016 年8 月1 日より専任医師およびパラメディックより運営される周術期支援センター(Tobu Hospital Perioperative Support Center:TOPS)を開設した.本稿では,Skill Mix 型のチーム医療として術前の栄養管理に焦点をあてた,「手術準備外来」における管理栄養士の役割を報告する.当外来では,最もよい全身状態で手術が迎えられるように,入院2 週間前に外来にて患者の全身アセスメントおよび情報収集,手術に関してのリスク判定,必要に応じて直接介入を多職種(医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,歯科衛生士)により実施していることが特徴である.いわゆる外来型のNST 活動も当外来に含まれる.また,当院の周術期管理には,術後回復能力強化プログラム(ERAS®)の概念を取り入れており,術後早期回復を目標にEarly Drinking, Eating, Mobilizing(DREAM)を達成できるようにさまざまな工夫を術前より行っている.
著者
谷口 英喜 牛込 恵子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.381-391, 2017-07-25 (Released:2017-08-29)
参考文献数
16
被引用文献数
2

目的:本研究では,自立在宅高齢者におけるかくれ脱水(体液喪失を疑わせる自覚症状が認められないにもかかわらず,血清浸透圧値が292から300 mOsm/kg・H2O)の実態調査を行い,非侵襲的なスクリーニングシートを開発することを目的とした.方法:65歳以上の自立在宅高齢者222名を対象に血清浸透圧値を計測し,かくれ脱水の該当者を抽出した.該当者において,脱水症の危険因子および脱水症を疑う所見に関してロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を根拠に配点を行った.配点の高い項目から構成される自立在宅高齢者用かくれ脱水チェックシートを作成し,該当項目の合計点数の陽性的中率を求めリスク分類を行った.結果:自立在宅高齢者においてかくれ脱水の該当者は,46名(20.7%)であった.先行研究のかくれ脱水チェックシートを改良し,①トイレが近くなるため寝る前は水分補給を控える傾向がある(3点),②利尿薬を内服している(8点),③随時血糖値が126 mg/dl以上である(9点),④80歳以上である(3点),⑤男性である(4点),⑥体重60 kg以上である(3点),の6項目から構成される,自立在宅高齢者用かくれ脱水チェックシートを考案した.このシートにおいて,13点以上(合計30点)であればかくれ脱水である危険性が高いと考えられた(陽性的中率72%,陰性的中率85.6%;P<0.0001).結論:自立在宅高齢者においては,脱水症の前段階であるかくれ脱水が20.7%の割合で存在し,非侵襲的なチェックシートにより抽出が可能である.
著者
谷口 英喜 岡本 凉子 上島 順子 阿部 咲子 岡本 葉子 牛込 恵子 石井 良昌
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.733-740, 2014 (Released:2014-05-15)
参考文献数
15

【目的】非脱水症の高齢者における、長期間の経口補水療法(ORT)の安全性および有効性を検証する。【対象および方法】対象者は、高齢者介護施設に入所している非脱水症の高齢者とした。研究デザインは、複数施設におけるランダム化割り付け比較試験とした。ORTによる介入を実施しないコントロール群(CN群、41名)と、介入を実施する介入群(OS群、41名)とした。OS群では、30日間継続的に経口補水液を1日当たり500~1,000mL摂取させた。【結果】OS群における安全性は、(1)合併症、(2) vital signおよび喫食率への影響、(3)血液学的所見の異常、が認められなかったことより証明された。有効性に関しては、ナトリウム部分排泄率の上昇、BUN/Cr比および血漿浸透圧の低下が認められたことより体液増加効果ありと判断された。しかし、CN群において脱水の発生が認められなかったことから、脱水予防の証明には至らなかった。【結論】非脱水症の高齢者における、長期間の ORTの安全性が証明され脱水予防の効果に関する有効性が示唆された。