著者
丸川 恵理子 吉田 文彦 宮崎 英隆 櫻井 仁亨 石井 良昌 小村 健
出版者
公益社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.323-327, 2010-05-20 (Released:2013-10-19)
参考文献数
17

The initial symptoms of leukemia include oral manifestations such as gingival hemorrhage and swelling. In patients with these symptoms, attention should be paid to the early diagnosis of acute leukemia. This report describes three cases of acute myelogenous leukemia (AML) with initial manifestations in the oral cavity.Patient 1: A 32-year-old woman. Ulcer lesions of the oral mucosa were diagnosed as decubital ulcers, and symptoms did not respond to the application of steroid ointment. She also had appetite loss, general malaise, and bloody stools. Blood examination showed a low white-cell count (1,600/μl).Patient 2: A 52-year-old man. He received anti-inflammatory treatment and had pain at the mandibular third molar region and gingival swelling, but the symptoms did not improve. At the initial visit, pericoronitis of the mandibular third molar with fever and general malaise were observed. Blood examination showed a low white-cell count (2,300/μl) and remarkably increased myeloblasts (20 %) .Patient 3: A 54-year-old woman. She received medication to treat full-mouth gingival swelling. However, fever and general malaise persisted. Blood examination showed a high white-cell count (47,000/μl).All three patients were given a diagnosis of AML on bone marrow biopsy.When the patients present with oral symptoms such as gingival swelling and ulcers accompanied by fever and general malaise, blood examinations should be promptly performed for the differential diagnosis of acute leukemia.
著者
森山 信彰 浦辺 幸夫 前田 慶明 寺花 史朗 石井 良昌 芥川 孝志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】筆者らは理学療法士を中心としたグループで,中四国学生アメリカンフットボール連盟秋季リーグ戦の全試合に帯同し,メディカルサポートを行ってきた。本研究では,外傷発生状況の分析を行い,今後の安全対策の充実に向けた提言につなげたい。【方法】2012年度から2015年度の試合中に生じた全外傷を集計した。外傷発生状況は,日本アメリカンフットボール協会の外傷報告書の形式を用いて記録した。分析項目は外傷の発生時の状況,部位,種類,発生時間帯とした。【結果】本研究の調査期間にリーグ戦に参加したのは7校であり,登録選手数は延べ686名(2012年161名,2013年152名,2014年185名,2015年188名)であった。リーグ戦の開催時期は毎回8月下旬~11月上旬であった。調査対象試合数は57試合であった。調査期間中の外傷の総発生件数は249件(2012年72件,2013年60件,2014年52件,2015年65件)であり,1試合平均の外傷発生件数は4.4件(2012年4.8件,2013年4.3件,2014年3.5件,2015年5.0件)であった。4年間で外傷発生件数には大きな変化がなく推移した。外傷発生時の状況は「タックルされた時」が67件(27%)で最も多く,次いで「タックルした時」が59件(24%),「ブロックされた時」が39件(16%)の順であった。部位は,下腿が70件(28%)で最も多く,以下膝関節が27件(11%),腹部が20件(8%)の順であった。種類は打撲が87件(35%)で最も多く,以下筋痙攣が74件(30%),靭帯損傷が35件(14%)の順であった。時期は,第4クォーターが97件(39%)と最も多かった。【結論】関東地区の大学リーグ戦中に発生した1試合平均外傷発生件数は1.3件で,外傷の38%が靭帯損傷であり,次いで打撲が17%という報告がある(藤谷ら 2012)。本リーグ戦では,1試合平均外傷発生件数が4.4件と,先行研究の3.4倍となり明らかに多くなっている。また,外傷の種類別では,靭帯損傷の発生件数が少ないが,それに代わって打撲の発生が多いことが特徴であろう。打撲については,相手の下半身を狙うような低い姿勢のタックル動作を受ける際に主に大腿部や腹部に強いコンタクトを受けたケースで多く発生していた。近年,米国では「Heads up football」と称した,タックル動作に関する組織的な啓発活動が行われており,理想的なタックル動作として相手の上半身へコンタクトすることを推奨している。わが国においても最近の安全対策への見解を取り入れ,タックル動作を安全に行うための指導を継続して行っていくことが今後重要であると考える。一方で,本研究の解析期間中には,頸髄損傷などで後遺障がいを認めるような重大外傷は発生しなかった。これは,筆者らがリーグ戦への帯同に加えて,オフシーズンに講習会を実施し,安全な動作指導を行っていることが奏功したと考えられる。重大外傷の予防のために,この事業の継続が必要と考えている。
著者
谷口 英喜 岡本 凉子 上島 順子 阿部 咲子 岡本 葉子 牛込 恵子 石井 良昌
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.733-740, 2014 (Released:2014-05-15)
参考文献数
15

【目的】非脱水症の高齢者における、長期間の経口補水療法(ORT)の安全性および有効性を検証する。【対象および方法】対象者は、高齢者介護施設に入所している非脱水症の高齢者とした。研究デザインは、複数施設におけるランダム化割り付け比較試験とした。ORTによる介入を実施しないコントロール群(CN群、41名)と、介入を実施する介入群(OS群、41名)とした。OS群では、30日間継続的に経口補水液を1日当たり500~1,000mL摂取させた。【結果】OS群における安全性は、(1)合併症、(2) vital signおよび喫食率への影響、(3)血液学的所見の異常、が認められなかったことより証明された。有効性に関しては、ナトリウム部分排泄率の上昇、BUN/Cr比および血漿浸透圧の低下が認められたことより体液増加効果ありと判断された。しかし、CN群において脱水の発生が認められなかったことから、脱水予防の証明には至らなかった。【結論】非脱水症の高齢者における、長期間の ORTの安全性が証明され脱水予防の効果に関する有効性が示唆された。
著者
石井 良昌 上田 毅
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012

近年,障害者スポーツはリハビリテーション分野のみならず学校教育やスポーツ現場において広がっており,様々な環境下で運動活動を行う機会が増えてきている.我々は,過去においてダウン症や自閉症などを有する知的障害児・者の運動様相の違いに関してバイオメカニクス的な手法を用いて科学的にとらえて検証を行ってきた.従来行われてきた知的障害児・者に対する研究は,研究室内で環境を一定にした状態で行われた研究や対象数の少ない事例報告が多かった.今回の研究では,軽量化で携帯が可能となった無線の測定器を対象者に装備させて,様々な環境下で行われる実際の集団スポーツ活動中の生体変化について測定を行うものである.本年度は知的障害児における夏期の体育活動時の心拍数について検討した.対象は,知的障害をもつ児童4名(男性2名、女1生2名:平均年齢9.0歳)であった.夏期(気温31.2℃、湿度68%)の屋内体育館で体育活動(約30分間)を行い,その間の心拍数(Polar社RS400)を経時的に計測した.体育活動の内容はウォーミングアップ(ストレッチ、ジャンプ、ランニング)3分,休憩1分,なわとび2分,休憩6分,バレーボール10分,クールダウン(ジョギンク)2分であった.運動指導は経験の多い指導者1名が,集団指導(7名)の形で行った.その結果,4名の平均心拍数は安静時では99.8±142bpmであったが,運動中ではそれぞれ準備運動147.3±8.8bpm,なわとび161.5±9.9bpm,バレーボール137.0±21.3bpm,ジョギング164.5±22.9bpmであった.また,最高心拍数4名ともにランニングおよびなわとびの際に187-205bpmの高値を示した.体育運動中に元気な活動をしているようにみえても,比較的高い心拍数を示していた.特に夏期の暑い時期には、休憩を多く取るなど十分な配慮を行いながら行うべきであると考えられた.
著者
宮永 豊 向井 直樹 白木 仁 下條 仁士 石井 良昌
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

スポーツ選手に多発する軟部組織損傷の治癒促進を目的に高気圧酸素療法(HBO療法)の有用性を検討した。一連の実験的、臨床的研究により次の結果を得た。1.実験的筋断裂の修復:HBOの投与は筋線維の連続性の回復の促進とhydroxyprolineの代謝を亢進させたことから、コラーゲンの代謝の亢進が示唆される。2.実験的靭帯断裂の修復:HBOは組織学的に治癒の促進と線維芽細胞数の有意な増加(断裂3〜14日後)を招き、分子生物学的にはpro-α_1(I)mRNAの合成量の有意な増加が断裂7〜14日後に認められた。コラーゲン代謝に有利に作用していると思われる。3.設定条件の違いによる実験的靭帯断裂の修復:組織学的な治癒と線維芽細胞数の増加はHBO群の方が、また高気圧、長時間ほど有効であった。pro-α_1(I)mRNAの発現量は1.5〜2ATA(30〜60分間)のいずれの範囲でも増大していた。4.スポーツ選手の傷害やコンディショニングへの臨床的有用性:軟部組織損傷を生じたスポーツ選手22名に対し1.3〜2絶対気圧(ATA)、暴露時間30〜90分、平均3.6回投与したところ、17例、77%に改善がみられた。急性期における投与の方が軽快する傾向を認めた。軽度の耳痛5例以外は副作用はなかった。長野冬季オリンピックの代表選手7名のコンディショニング調整や試合後の筋肉疲労回復を目的とした。オリンピック期間中1.3ATA、30〜40分、平均2回の投与で全例に改善効果や良好なコンディショニング効果が得られた上に、高い競技能力を発揮させることができた。5.血清乳酸の除去:男子6名に疲労困憊にいたるまでの自転車駆動後の乳酸値の除去が1.3ATA、2ATA条件下で促進された。しかも1.3ATAの方がより有効であった。6.安全性の検討:自覚的には「体が楽になった」、「気分よく寝てしまった」、「投与後にリラックスした」など多くは肯定的な感想であったが、副作用として軽度な耳痛、頭痛がみられた。最近のフリーラジカル分析システムによる活性酸素の測定では投与前平均210.6、投与後201.2といずれも正常範囲であった。7.その他:トレーニング効果なども期待されるが、今後の検討課題とする。以上より高気圧酸素療法(2ATA以下)は傷害治癒促進に有用性が高いことが実証された。