著者
志磨 裕彦 中内 伸光 吉村 浩 牧野 哲 北本 卓也 小宮 克弘 内藤 博夫 菊政 勲 幡谷 泰史
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

多様体M上に平坦接続DとRiemann計量gが与えられて,gがDに関するHesse形式で表せるとき,その組(D,g)をHesse構造といい,Hesse構造が与えられた多様体MをHesse多様体というHesse幾何学とはHesse多様体に関する幾何学のことである.Hesse幾何学は情報幾何学,アファイン微分幾何学,Kahler幾何学等と密接に関連する.甘利と長岡は確率分布族に双対接続という微分幾何学的構造が本来的に備わっていることを発見し,数理情報をこの双対接続の見地から研究するべく情報幾何学を提唱した.双対接続が平坦な場合がHesse構造で,正規分布族や多項分布族など多くの重要な確率分布族が双対平坦接続,すなわちHesse構造を有していることが知られている.また双対接続の概念はアファイン微分幾何学においても非退化アファイン超曲面はめ込みとその余法線はめ込みの組を考えることにより得られていた.更にはHesse多様体の接ベクトル束がKahler多様体になることから,Hesse幾何学はKahler幾何学とも親戚関係にある.本研究ではHesse幾何学をこれら3つの幾何学との関連を踏まえながら総合的に研究した.1.情報幾何学の方法を用いて,新しいHesse計量を構成し,逆に微分幾何学的手法を用いて,新しい確率分布族を構成した.2.Hesse構造のポテンシャルの等位曲面のアファイン微分幾何学を展開し,勾配写像のラプラシアンを考察することにより,アファインBernstein問題の類似が解決した.3.Kahler幾何学との関連でいえば,Kahler幾何学における消滅定理や双対定理に類似する結果が,Hesse幾何学でも成り立つことが示された.4.Hesse構造の自然な拡張であるCodazzi構造が定義できるが,これが定曲率で等質ならばそれは1次元高い等質Hesse構造から導かれることが分った.これらの諸結果は"Geometry of Hessian structures"として,World Scientific社より出版予定である.
著者
牧野 哲也 菊地 誠 松能 久雄 小西 二三男
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.904-908, 1993 (Released:2009-06-05)
参考文献数
15
被引用文献数
2

巨細胞封入体を生検組織中に認めた潰瘍性大腸炎重篤例を報告した,症例は73歳の女性で,平成3年5月下痢症状を主訴に近医受診し,精査の結果初めて潰瘍性大腸炎と診断された.2カ月後,症状は再燃増悪し,直腸から下行結腸に至る高度の炎症性変化と生検組織中の巨細胞封入体が認められた.全身的にウィルス学的検索を行ったが,全身感染は証明されず,ulcerative colitis(以下UCと略す)に併発した大腸のサイトメガロ限局感染と考えた,サイトメガロ感染はUC症状増悪の原因と考え,抗ウィルス療法を併用し,症状の改善をみた.