著者
野原 信 廣田 栄子 仲野 敦子 有本 友季子 猪野 真純 奥沢 忍
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.134-144, 2022-04-28 (Released:2022-05-24)
参考文献数
23

要旨: 難聴診断後に早期観察・指導を行った小学校就学前後期の軽中等度難聴児12名に対し, ①言語発達の諸側面と, ②会話時の他者の感情推測の発達について検討し, 4~6歳聴力正常幼児 (聴児) 34名の結果と比べた。 軽中等度難聴児では, PVT-R 語彙検査では概ね年齢相応の発達を示したが, CCC-2 言語評価の形式的・語用的な側面には遅滞を示した。 軽中等度難聴児は5歳で自己準拠, 6~7歳で他者準拠の情報を用い他者の感情推測を行い, 聴児と同様の発達傾向を示した。 行動特性による他児の感情推測は, 5歳で遅滞を示すものの6歳で良好な発達を示し, また, 検査時月齢と言語の形式面 (音韻・語彙・構文・談話) 要因の関与が認められ, 長期的な観察と指導適用の検討が必要と考えられた。 軽中等度難聴児では, 場面状況, 行動特性などの複数情報を用いた他者準拠型の感情推測に基づいた会話理解の発達について注目することの有用性が示唆された。
著者
石田 多恵子 猪野 真純 仲野 敦子 有本 友季子 黒谷 まゆみ 森 史子 工藤 典代 笠井 紀夫 福島 邦博
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-36, 2012-03-01
参考文献数
11

&nbsp;&nbsp;聴覚障害児の日本語言語発達に関する全国研究として,厚生労働科学研究補助金事業「感覚器障害戦略研究&mdash;聴覚分野&mdash;」が実施され,日本語言語発達を評価するテストバッテリー ALADJIN(アラジン・<u>A</u>ssessment of <u>L</u>anguage <u>D</u>evelopment for <u>J</u>apanese ch<u>I</u>ldre<u>N</u>)が提唱されている。当院もこの研究に参加し,4 歳から12歳までの先天性高度聴覚障害児(平均聴力レベル70 dB 以上)計44名に対して ALADJIN を実施し,同事業による聴覚障害児全国集計平均値(平成22年 5 月・感覚器障害戦略研究中間報告)との比較検討を行った。<br/>&nbsp;&nbsp;言語力が高く,音声によるコミュニケーションが可能な児の多くは普通小学校(メインストリーム)に在籍していた。聾学校小学部低学年では言語力の低い児が多くみられたが,同小学部高学年になると全国集計値よりも高い言語力を有する児がみられ,各々の児に適した教育により言語力を伸ばせる可能性が示唆された。