著者
野原 信 廣田 栄子
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.61-68, 2021-02-28 (Released:2021-03-20)
参考文献数
20

要旨: インフォーマルな会話場面では, 話者の感情理解を背景に発話の意図を理解することが少なくないが, 聴覚障害児では会話時の情報制約により, 話者の感情理解が困難な状況が生じうる。そこで, 本研究では, 聴覚障害学童45名に対し, ポジティブ感情とネガティブ感情を惹起する図版について, 登場児・対象児の二者視点を組み合わせた条件で, 会話場面における感情認知と感情説明の発達について検討し, 聴力正常学童232名の結果と比較した。その結果, 聴覚障害児では, ネガティブ感情について, 一部で感情認知の共有が低下し, 感情説明について言語能力要因の関与が示された。言語発達支援では会話場面での感情理解に注目し, その説明を加えるなど理解の促進をはかることの重要性について指摘した。
著者
野原 信 廣田 栄子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.305-311, 2014 (Released:2015-02-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1

聴覚特別支援学校小学部2~3年生の高度聴覚障害児(HH児)21名と同学齢の聴力正常な典型発達児(TD児)60名を対象にし,向社会的および反社会的な動作主の行為の意図と受け手の反応が,通常と一致した条件と矛盾した条件を設定して,他者の行為意図説明能力の発達について検討した.その結果,両群ともに,一致した条件に比べ矛盾した条件で行為意図に関する説明の正答率が低下した.HH児はTD児に比べ,両条件で成績の低下を認め,矛盾した条件における動作主の行為意図説明では,語彙や説明内容が乏しい叙述傾向を認めた.行為意図説明の正答率は,基礎的言語能力としての読書力と相関が高いが個人差を認め,発達の評価に基づいた個に応じた指導が必要と考えられた.高度聴覚障害児では,社会的経験に基づいて密接なコミュニケーションを配慮した言語学習の重要性が示唆された.
著者
野原 信 廣田 栄子 仲野 敦子 有本 友季子 猪野 真純 奥沢 忍
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.134-144, 2022-04-28 (Released:2022-05-24)
参考文献数
23

要旨: 難聴診断後に早期観察・指導を行った小学校就学前後期の軽中等度難聴児12名に対し, ①言語発達の諸側面と, ②会話時の他者の感情推測の発達について検討し, 4~6歳聴力正常幼児 (聴児) 34名の結果と比べた。 軽中等度難聴児では, PVT-R 語彙検査では概ね年齢相応の発達を示したが, CCC-2 言語評価の形式的・語用的な側面には遅滞を示した。 軽中等度難聴児は5歳で自己準拠, 6~7歳で他者準拠の情報を用い他者の感情推測を行い, 聴児と同様の発達傾向を示した。 行動特性による他児の感情推測は, 5歳で遅滞を示すものの6歳で良好な発達を示し, また, 検査時月齢と言語の形式面 (音韻・語彙・構文・談話) 要因の関与が認められ, 長期的な観察と指導適用の検討が必要と考えられた。 軽中等度難聴児では, 場面状況, 行動特性などの複数情報を用いた他者準拠型の感情推測に基づいた会話理解の発達について注目することの有用性が示唆された。