著者
仲野 敦子 有本 友季子 星野 直 工藤 典代
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.40-44, 2016 (Released:2016-08-01)
参考文献数
12

2012年から2013年の風疹大流行により40例以上の先天性風疹症候群(CRS)の報告があった。我々は出生時には症状がなく先天性風疹感染症(CRI)の診断であったが,1 歳 6 カ月時に左右差のある難聴の診断となり CRS となった症例を経験した。母親は妊娠10週に風疹に罹患し,出生時には児の血清抗体価上昇もあり胎内風疹感染が確認されたが,合併症状はなく自動 ABR は両側パスであり CRI と診断された。風疹分離が陰性となった後の ABR 検査で右60 dBnHL,左無反応で難聴の診断となった。 2013–2014年の CRS 報告45例中 9 例はワクチン接種歴の母から出生しており,妊娠中の風疹罹患歴がなしあるいは不明であった症例は13例であった。このうち何症例で難聴を合併していたかは不明であるが,ワクチン接種歴があり不顕性感染であった母親からの CRS による難聴症例が発生した可能性もあると考えられた。
著者
野原 信 廣田 栄子 仲野 敦子 有本 友季子 猪野 真純 奥沢 忍
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.134-144, 2022-04-28 (Released:2022-05-24)
参考文献数
23

要旨: 難聴診断後に早期観察・指導を行った小学校就学前後期の軽中等度難聴児12名に対し, ①言語発達の諸側面と, ②会話時の他者の感情推測の発達について検討し, 4~6歳聴力正常幼児 (聴児) 34名の結果と比べた。 軽中等度難聴児では, PVT-R 語彙検査では概ね年齢相応の発達を示したが, CCC-2 言語評価の形式的・語用的な側面には遅滞を示した。 軽中等度難聴児は5歳で自己準拠, 6~7歳で他者準拠の情報を用い他者の感情推測を行い, 聴児と同様の発達傾向を示した。 行動特性による他児の感情推測は, 5歳で遅滞を示すものの6歳で良好な発達を示し, また, 検査時月齢と言語の形式面 (音韻・語彙・構文・談話) 要因の関与が認められ, 長期的な観察と指導適用の検討が必要と考えられた。 軽中等度難聴児では, 場面状況, 行動特性などの複数情報を用いた他者準拠型の感情推測に基づいた会話理解の発達について注目することの有用性が示唆された。
著者
星野 直 有本 友季子 仲野 敦子
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.12-16, 2014

  2 歳 3 か月の男児。結合型 7 価肺炎球菌ワクチン(PCV7)4 回接種済み。いびき,無呼吸に対し,全身麻酔下にアデノイド切除,口蓋扁桃摘出術を施行した。周術期抗菌薬は ampicillin を静注で使用(当日は術直前および10時間後に静注)。POD1 に40℃の発熱を,POD2 に痙攣を認めた。血液,髄液より肺炎球菌が分離され,同菌による細菌性髄膜炎と診断。急性期に集中治療を要したが,後遺症なく治癒した。髄液由来肺炎球菌は,血清型35B(PCV7, 13非含有血清型)の gPRSP であった。本手術後の髄膜炎は極めて稀だが,菌血症は高頻度に認められる。菌血症から髄膜炎への進展を予防するために,術前に PCV 接種を完了しておくことが望ましい。また,本症例のようなワクチン非含有血清型肺炎球菌や,その他の細菌による術後髄膜炎発症の可能性もあり,菌血症を想定した用法・用量による周術期抗菌薬の投与が必要である。
著者
仲野 敦子 仲野 公一 沼田 勉 今野 昭義
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.584-591, 2001-12-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14

1998年1月から2000年3月までに聴神経腫瘍に対してガンマナイフ治療を施行し, 3ヵ月以上経過観察できた聴神経腫瘍28例を対象として, 治療後の聴力の変化を検討した。 新鮮例13例中4例, 術後例15例中13例が治療前に聾であり, いずれも治療後に聴力の回復は認めなかった。 聴力残存11例のうち, 聴力の改善した例は2例あり, 2例とも6ヵ月までの早期に改善を認めていた。 聴力悪化例は3例あり, 1例は治療6ヵ月後までに急激に聴力が悪化し聾となり, その後改善が認められず聾のままであった。 残り2例は治療後より徐々に悪化していた。 現在まで聾となった症例は1例のみであり, 聴力温存率は90.9%であったが, 治療前にGardner & Robertsonの分類でclass 1または2であった5症例のうち, 治療後もclass 1または2であったものは3症例 (60%) であった。 聴力変化と, 腫瘍体積の変化には一定の傾向は認められなかった。
著者
仲野 敦子 仲野 公一 沼田 勉 今野 昭義
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.191-195, 1999-06-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1

SLEによる自己免疫性内耳障害が, SLE発症初期に出現し, ステロイド治療に反応し聴力の改善を得られた症例を経験した。症例は初診時13歳の男子である。 数ヵ月間に徐々に進行した原因不明の両側性高音漸傾型の感音難聴があり, 当初突発性難聴に準じたステロイド治療が施行されたが聴力は改善せず, 約1ヵ月後, 他の症状が出現してSLEの診断が確定した。 SISIテスト, 自記オージオメトリでは, 内耳障害を示唆する所見であった。 SLE診断確定後, PSL 60mg/日の内服により聴力は改善したが, PSL 40mg/日に減量したところで聴力の再悪化があり, またその後も原疾患の病状と平行する様に聴力は変動した。 発症後, 三年余が経過したが, ステロイド治療の他, 免疫抑制剤, 血漿交換, および高気圧酸素療法を併用し, 原疾患のコントロール及び聴力の改善が得られている。
著者
石田 多恵子 猪野 真純 仲野 敦子 有本 友季子 黒谷 まゆみ 森 史子 工藤 典代 笠井 紀夫 福島 邦博
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.29-36, 2012-03-01
参考文献数
11

&nbsp;&nbsp;聴覚障害児の日本語言語発達に関する全国研究として,厚生労働科学研究補助金事業「感覚器障害戦略研究&mdash;聴覚分野&mdash;」が実施され,日本語言語発達を評価するテストバッテリー ALADJIN(アラジン・<u>A</u>ssessment of <u>L</u>anguage <u>D</u>evelopment for <u>J</u>apanese ch<u>I</u>ldre<u>N</u>)が提唱されている。当院もこの研究に参加し,4 歳から12歳までの先天性高度聴覚障害児(平均聴力レベル70 dB 以上)計44名に対して ALADJIN を実施し,同事業による聴覚障害児全国集計平均値(平成22年 5 月・感覚器障害戦略研究中間報告)との比較検討を行った。<br/>&nbsp;&nbsp;言語力が高く,音声によるコミュニケーションが可能な児の多くは普通小学校(メインストリーム)に在籍していた。聾学校小学部低学年では言語力の低い児が多くみられたが,同小学部高学年になると全国集計値よりも高い言語力を有する児がみられ,各々の児に適した教育により言語力を伸ばせる可能性が示唆された。