著者
車田 利夫 浦口 宏二 玉田 克巳 宇野 裕之 梶 光一
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.157-163, 2010 (Released:2011-01-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

1992年から2006年にかけて実施したライトセンサスの結果を用いて,南部を除く北海道の広域的なアカギツネ(Vulpes vulpes)の個体数の動向を分析した.網走,十勝及び根釧の各調査地域では,1990年代にアカギツネの相対密度指標値が約1/3にまで減少した.この個体数減少に対する捕獲や主要な餌資源である野ネズミ類の密度などの影響は検出できず,この時期に北海道のアカギツネに流行していた疥癬が個体数減少に関与したことが強く疑われた.一方,同じ疥癬流行地域にも関わらず,道北,上川及び日高では明確な相対密度指標値の減少傾向は認められなかったが,この原因は定かではない.
著者
玉田 克巳
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.93-97, 2004 (Released:2007-09-28)
参考文献数
25
被引用文献数
8 7

Sexual differences of Carrion Corvus corone orientalis and Jungle crows C. macrorhynchos japonensis were examined. Crows were captured by 'multi-trap' during April 1989 to June 1990 in Ikeda, eastern Hokkaido. Body mass, bill length, natural wing length, tail length, and tarsus length of carcasses were all measured. They were aged by tongue-markings and dissected in order to examine their reproductive organs. They were classified into two age-classes (adults and juveniles). Males were larger than females in all measurements for adults and juveniles of both species. Discriminant function analysis was carried out. The probability of correct discrimination of sexes for Carrion Crows was 87% for adults and 80% for juveniles. For Jungle Crows it was 91% for adults and 92% for juveniles. The sexes of both adult and juvenile Jungle Crows could be determined by discriminant function analysis.
著者
玉田 克巳 池田 徹也
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.349-355, 2019-10-25 (Released:2019-11-13)
参考文献数
20

北海道においてスズメPasser montanusを対象とした鳥類標識調査を実施して,8か月以上経ってから成鳥3羽を再捕獲した.嘴基部の色は,1羽が黒色で,2羽が黄色であった.野外観察の結果から,6月から7月までの間,幼鳥の嘴基部の色は黄色であったが,成鳥は黒色であった.9月から12月は,ほとんどすべて個体が黄色になり,1–2月には黒色の個体の割合が増加し,3–5月にはすべて黒色であった.このことから嘴基部の色は,季節変化することが考えられた.オスの計測値は,体重,自然翼長,尾長で有意に大きかった.自然翼長は67.7 mmを境界値として性判定ができ,誤判別率は90%であった.
著者
宇野 裕之 玉田 克巳 平川 浩文 赤松 里香
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.129-137, 2002-12-30
参考文献数
16
被引用文献数
3

2001年9月から12月に北海道東部地域において,2種類のGPS (Global Positioning System)首輪(テロニクス社:TGW-400/GPS/SOB 及びテレヴィルト社:G01-01011)の測位成功率及び測位精度の検証を行った.測位成功率の試験は4つの植生タイプ(落葉広葉樹林,針広混交林,針葉樹人工林,開放環境)及び3つの地形(谷,尾根,斜面)ごとに実施した.テロニクス社製の測位成功率は全ての環境下で97%以上であり,植生や地形の影響は受けなかった.テレヴィルト社製の成功率は83%以上であったが,林冠被度が高くなると成功率が低下した.測位精度試験の結果,誤差距離(accuracy)は,テロニクス社製を用いて4つ以上の衛星から電波を受けた場合(三次元座標)1.5~3.5m,テレヴィルト社製を用いた三次元座標の場合4.2m,3つの衛星から電波を受けた場合(二次元座標)15.6m であった.三次元座標の場合,全測位点の95%は半径30m の円内に入ることが判った.アカシカ(Cervus elaphus)を用いた飼育個体試験の結果,行動は測位成功率には影響しなかった.GPSテレメトリーは野生動物の季節移動や生息地利用を明らかにする上で有効な手法であると考えられた.
著者
玉田 克巳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.11-19, 2008-05-01 (Released:2008-05-21)
参考文献数
30

国内におけるワタリガラスCorvus coraxの生息状況は,北海道で稀な冬鳥とされているが,近年では観察記録が増えてきている.本研究では,釧路支庁管内において野外で確認したワタリガラスの記録をまとめるとともに,北海道東部を対象に文献調査を行い,近年のワタリガラスの生息状況と分布の変化について明らかにした.野外観察では94件の確認情報が得られた.確認情報はすべて内陸部のもので,環境は森林植生が89% を占めた.文献調査から124件の確認情報が得られ,野外観察とあわせて218件の情報が得られた.ワタリガラスは冬鳥として飛来していた.1969~1978年の間は3市町の海岸部に分布していただけである.1991~1997年には9市町,1998~2005年には16市町村で確認されており,ワタリガラスは海岸部のほかに内陸の市町村にも分布していた.北海道東部では,1990年代に狩猟と駆除によるシカCervus nipponの捕獲数が増加し,ワタリガラスがシカの残滓を食べているところも目撃されている.シカの捕獲数が増加した時期とワタリガラスの分布が拡大した時期は一致しており,シカの捕獲数増加がワタリガラスの分布拡大の一因になっていると考えられる.