著者
神谷 拓 伊藤 嘉人 玉腰 和典
出版者
宮城教育大学
雑誌
宮城教育大学紀要 (ISSN:13461621)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.163-185, 2012

本研究の目的は、東日本大震災後に開催された運動会のフィールドワークを通して、学校の統廃合をめぐる教師、生徒、地域住民の「意志」について明らかにすることである。対象としたのは、同震災によって甚大な被害を受けた、M県の沿岸部に位置するH市のN2中学校で開催された「親子大運動会」である。調査の結果、この運動会において、教師、生徒、地域住民の「意志」は緩やかに繋がっていたものの、生徒たちの「統廃合を受け入れるまでには至っていない」という「意志」が、他の立場では共有されていないことが明らかになった。このことにより、本研究では「親子大運動会」が、教師、生徒、地域住民の「連帯と団結による意志表明」の場には「ならなかった」と結論づけた。とりわけ、27.3%の生徒が「私たちの意見も聞いて欲しかった」と述べていることから、日常生活における「意志表明の場」(子どもの意見表明権)を回復していくことが、今後の「親子大運動会」、及び、地域復興の課題になるだろう。
著者
玉腰 和典 山本 奈緒子
出版者
富山大学人間発達科学部附属人間発達科学研究実践総合センター
雑誌
教育実践研究 : 富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要 (ISSN:18815227)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.51-68, 2022-01-11

本研究は、これまで体育科教育において実践的な研究があまりみられなかったヨガ教材に着目し、高校体育の実践事例の分析を通して、学校体育におけるヨガ教材の授業づくりの課題を解明することを目的とする。研究方法は、実践資料の分析、担当教師への半構造化インタビュー、感想文の内容分析とした。結果、次のような課題を解明することができた。①ヨガについての基本的特徴を、技能面だけではなく、歴史、種類、効果といった多様な観点で解明する。②ヨガの典型教材となる教材やその指導内容と方法を解明する。③プログラムの創作発表をする学習では、ヨガの特性に応じた創作発表のポイントと、その系統的指導の展開を解明する。④プログラムの創作発表をする学習では、実用性だけではなく、身体への気づきや身体との対話に着目させる指導方法や評価方法を解明する。⑤体力や音楽・照度・湿度・声質・羞恥心・同調動作の感じ方など、ヨガの特性に応じて顕在化する、多様な個人差を想定した学習指導の工夫について解明する。⑥ヨガの科学的・文化的内容の発展的な学習方法を解明する。⑦教師がヨガを教材化する見通しがもてるよう、多様な授業展開や評価基準を解明する。
著者
玉腰 和典
出版者
日本福祉大学子ども発達学部
雑誌
日本福祉大学子ども発達学論集 = THE JOURNAL OF CHILD DEVELOPMENT (ISSN:18840140)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.31-46, 2017-01-31

本研究は, 学校体育研究同志会の生活体育時代におけるバレーボール教材研究の特徴を明らかにしていくことを目的とした. 学校体育研究同志会における生活体育時代のバレーボール教材研究史は前期と後期に区分でき, 前期においては瀬畑実践に代表されるように, 「グループ学習と校内競技大会の計画・運営」(9 人制バレーボール) が実践課題となっていた. その後, 実践を通してつきあたった「運動疎外の克服」が課題とされるとともに, 運動文化の本質を見失わず子どもの喜びを高める「中間項」教材の追求がなされていく. そして後期においては生活単元方式が後退する一方で, 吉崎実践に代表されるように「運動文化の疎外要因を解消するルールづくりをふまえた, パス・ラリーゲームから始めるグループ学習とクラスマッチの計画・運営」(6 人制バレーボール) が実践課題となっていることが明らかとなった. また吉崎実践と同時期に中村が高校生との対話を通して9 人制バレーボールにひそむ疎外要因について追求しており, そこで得られた知見はのちのバレーボール教材の研究につながる重要な契機となっていると考えられる.