著者
生井 友紀子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.295-304, 2019 (Released:2019-10-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1

声帯結節の主な成因は声の濫用にあり音声治療が有効である.本稿では,当科での声帯結節の音声治療の経験に基づき難治例の治療戦略を検討した.難治には音声治療をしても局所病変の改善に乏しい例と,最終的に自他覚的な改善と満足を得て終了するが治療が長期化する例がある.過去11年間に30例に音声治療を実施し29例で治療を終了した.うち23例では自他覚的な改善と満足を得て3ヵ月未満で終了した.他6例が難治例で,うち3例は局所病変の改善に乏しく治療開始1ヵ月で治療を終了し医師による薬物治療に移行した.残り3例は最終的に治癒したが治療に3ヵ月以上を費やした.難治例全例で声帯浮腫や炎症,広基性病変を認め,上気道症状の訴えを伴った.また声の濫用は生活面の多岐にわたっており,病悩期間は2〜10年と長かった.難治例は結節の悪化要因を多数抱えており,全人的(holistic)治療と,多職種他領域との連携によるチームアプローチが重要と考える.