著者
矢野 昌充 生駒 吉識 杉浦 実
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.4, pp.13-28, 2005 (Released:2016-05-13)

ヒトの血液中に存在する6種類の主要カロテノイドのひとつであるβ-クリプトキサンチン(β-cry)の主要供給源はウンシュウミカンである。ウンシュウミカンは我が国で最も多く消費される果実であるためβ-cryの血中高濃度者が多い。ウンシュウミカン生理機能研究の強化は国民の健康増進,カンキツ産業の発展の観点からも重要であり,果樹研究所を中心として取り組まれ多くの成果をあげてきた。β-cryの生理機能については諸外国の疫学研究からも多くの知見が集積し始めている。本稿では我が国で成果が上がっている試験管・動物実験レベルにおける発がん抑制,骨代謝改善,β-cryの血液中濃度を指標としたみかん産地における栄養疫学研究,β-cry供給源としての果実の重要性,カンキツにおけるβ-cry蓄積メカニズム解明,食品産業での利用また諸外国での疫学研究におけるβ-cryの疾病罹病リスク低減作用を中心に,β-cry研究最近の進歩の全貌を概説した。また,今後の研究についての課題を論じた。
著者
徐 忠傳 兵藤 宏 生駒 吉識 矢野 昌充 小川 一紀
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.192-194, 2000-03-15
被引用文献数
6

キウイフルーツ'魁密'(Actinidia chinensis)と'ヘイワード'(Acitinidia deliciosa)では果実の部位によって1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素遺伝子の発現, ACC含量およびACC合成酵素活性に大きい差が認められた.エチレン生成能の低い'ヘイワード'においてはACC合成酵素mRNAのレベルは外果皮で一番高く, 部位の違いが明確であった.一方エチレン生成能の高い'魁密'においては外果皮, 内果皮, 果芯のすべてで高かった.ACC合成酵素mRNAの発現, ACC含量およびACC合成酵素活性は'魁密'の方が'ヘイワード'より高かった.これらの結果より, キウイフルーツのエチレン生成能の品種間差に関与する要因は主にACC合成酵素遺伝子の発現とACC合成酵素の活性であることが示された.