著者
矢野 昌充
出版者
日本食品保蔵科学会
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 = Food preservation science (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.51-55, 2003-01-31
被引用文献数
1

キウイフルーツ生産量変動を図1に示した。キウイフルーツは、20年の間に生産者・消費者双方にとって重要な果実への仲間入りを果たした。この20年間は、生産・消費が急激に増大した時期、消費不況による生産の調整期、そして近年の新たな発展に向けての萌芽期とに分けられる。これらを詳細に観察すると次のような解釈になる。これまで経験したことのないイメージの果物のもの珍しさから需要、供給共に急激な成長を遂げたものの、追熟メカニズムの未解明が原因で適切な品質管理ができず、結果酸っぱくて硬いまま店頭に並べられたキウイフルーツは次第に消費者の支持を失い、生産規模縮小を余儀なくされた。その後品質管理の徹底と新品種導入によるイメージチェンジで、新たな取り組みが始まり、消費者に新規果物としての支持復活の兆しが見え始め、現在に至ったと解釈できる三つのステージである。
著者
矢野 昌充
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3143-A3P3143, 2009

【目的】<BR>筋力が増大する要因として、運動単位の動員の増加や筋断面積の拡大が考えられている.<BR>後藤らによると,筋細胞の肥大は、筋細胞内におけるタンパク質の合成増加およびサテライトセルの融合によると述べており、筋細胞数の増加に関しては、負荷増大により個々の筋細胞が肥大すると同時に小さな中心核を持った新たな筋細胞の形成をもたらすとされている.<BR>また、温熱負荷による筋肥大の機序について、温熱負荷によりタンパク質の合成が分解に対して相対的に賦活化されることで、温熱負荷のみで筋肥大が引き起こすと述べている.<BR>我々は、第24回東海北陸理学療法学術大会において報告した、8回1セットという低い運動強度での同様の実験では、温熱負荷の影響を見出せなかった.そこで本実験では、極超短波を用い肘関節屈筋群に温熱負荷を加えた後に運動負荷を上げて筋力強化を行い、筋厚の変化を検証し,温熱負荷と筋肥大の関係を明らかにすることを目的とした.<BR>【方法】<BR>被験者は実験の主旨を説明し同意を得た、神経学的・整形外科的疾患のない健常男性19名、彼らを無作為に温熱群9名(年齢21.0±1.1歳)、非温熱群10名(年齢21.2±0.4歳<BR>)とした.温熱群には極超短波装置インバータパルスマイクロージョ MJI-800W(SAKAI社製)を使用し、照射距離は被検筋の膨隆部直上から垂直に10cmの位置にし、振動周波数は2450MHz、照射時間は10分間とし、肘関節屈筋群の最大膨隆部に温熱負荷を加えた.また、両群ともに筋力強化は、鉄アレイを用い、運動強度70%1RM、反復回数は10回を3セット、頻度は週に3回、実験期間は6週間とした.筋厚の測定は、超音波診断装置(日立メディコ、ECHOPAL2)を用い、実験前後の肘関節屈筋群の最大膨留部を測定し比較・検討した.各群における実験前後の筋厚と両群の筋厚の変化度の比較は、各々、対応のあるt検定と対応のないt検定を用いた.有意水準は5%とした.<BR>【結果】<BR>温熱群において、実験前29.6±4.4、実験後31.8±5.5であり有意差を認めた.非温熱群の実験前後および両群の筋厚の変化度比較においては有意差を認めなかった.<BR>【考察】<BR>本実験では、温熱群では実験前後に有意な筋厚の増大が認められ、非温熱群では認められなかった.このことから温熱負荷によって筋肥大が生じる一定の効果があることが示唆された.しかし、両群の筋厚の変化度の比較では有意差は認められなかった.本実験では、被験者数が少なく、被験者間の効果に差違があったことが推察される.また、後藤や小島は,低温かつ長時間の温熱負荷は筋肥大を引き起こし、筋力増強をもたらす刺激になり得ると報告している.本実験の極超短波による10分間の急速な温熱負荷方法では,筋タンパク質の合成の賦活化は不十分であったことも伺われ、今後さらに、筋力増強につながるような筋肥大には温熱負荷方法と筋力強化方法を、さらに検討していく必要があると考えられる.
著者
矢野 昌充 長谷川 美典
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.514-518, 1992-06-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1

キウイフルーツの流通方法改善の資料とするため,市販果実のエチレン生成と追熟の状況を調べた.(1) 国内産のばら売り,パック売りとも,購入後10日を経過してもエチレンを生成して正常に追熟した果実はほとんどなく,大部分はエチレンを生成しないか生成しても軟腐病によるものであった.(2) 軟腐病が極めて少なかったニュージーランド産果実では14%の果実がエチレン生成を伴う正常な追熟をしたが,大部分は追熟しなかった.卸売市場から直接購入した果実では購入後35日経過後も数%の果実しか追熟しなかった.(3) パック包装内部には50ppmを上回るエチレンが検出される例があった. 8.6~57.6μl/kg/hのエチレン生成量を持つ果実を1個を非密封パック内に入れただけでも0.5~5ppmのエチレンが蓄積することが観察された.(4) 購入10日後,食べ頃の硬さ,酸含量となったのは全購入果実の約40%に過ぎず,しかも大半が軟腐病罹病果であった.
著者
長谷川 美典 川﨑 あけみ 小川 一紀 杉浦 実 矢野 昌充
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
pp.NSKKK-D-23-00026, (Released:2023-04-03)

国産果物の高品質には定評があるにもかかわらず,国民の消費量については「毎日くだもの200グラム運動」で推奨されている量の1/2に留まる. 諸外国に比較しても著しく低レベルである. そこで、発表者らは4半世紀にわたって進めてきた「果物と健康」に関する研究の成果を活用し、果物の消費拡大をアピールしている. 更には任意団体を2つ立ち上げ,消費拡大活動に向け工夫を重ねている.今回、その成果と将来展望について報告する.
著者
永田 雅靖 矢野 昌充 西條 了康
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.322-326, 1992-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
13
被引用文献数
4 4

貯蔵中のカットキャベツの酵素をアリルイソチオシアネート(AITC)が抑制する機構について検討した.蒸留水で処理した対照サンプルは褐変したが, AITC処理(>2.5mg/100g)したカットキャベツの褐変は抑制された.ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性と全フェノール物質含有量は貯蔵に伴って上昇したが,AITC処理したカットキャベツの場合には,そのような変化は見られなかった.フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)活性は貯蔵に伴って,著しく上昇したが,これに対してもAITCは阻害効果を示した. PPOとPALの活性に対する直接の阻害は,切断直後に処理した場合に,カットキャベツの褐変がほぼ完全に抑制できる濃度のレベルでは観察されなかった.これらの結果から, AITCによって貯蔵中のカットキャベツの褐変が抑制される機構は,切断傷害によってPALやPPOの活性が上昇する段階をAITCが阻害することによるものと推定された.
著者
矢野 昌充 生駒 吉識 杉浦 実
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.4, pp.13-28, 2005 (Released:2016-05-13)

ヒトの血液中に存在する6種類の主要カロテノイドのひとつであるβ-クリプトキサンチン(β-cry)の主要供給源はウンシュウミカンである。ウンシュウミカンは我が国で最も多く消費される果実であるためβ-cryの血中高濃度者が多い。ウンシュウミカン生理機能研究の強化は国民の健康増進,カンキツ産業の発展の観点からも重要であり,果樹研究所を中心として取り組まれ多くの成果をあげてきた。β-cryの生理機能については諸外国の疫学研究からも多くの知見が集積し始めている。本稿では我が国で成果が上がっている試験管・動物実験レベルにおける発がん抑制,骨代謝改善,β-cryの血液中濃度を指標としたみかん産地における栄養疫学研究,β-cry供給源としての果実の重要性,カンキツにおけるβ-cry蓄積メカニズム解明,食品産業での利用また諸外国での疫学研究におけるβ-cryの疾病罹病リスク低減作用を中心に,β-cry研究最近の進歩の全貌を概説した。また,今後の研究についての課題を論じた。
著者
和田 浩二 上原 真希子 高良 健作 當銘 由博 矢野 昌充 石井 利直 太田 英明
出版者
Japan Association of Food Preservation Scientists
雑誌
日本食品保蔵科学会誌 (ISSN:13441213)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.29-33, 2006-01-31 (Released:2011-05-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 4

シークヮーサー果汁中のノビレチンの定量法を設定するとともに, 果汁製造工程におけるノビレチン含量の変化について分析した。果汁試料を遠心エバポレータで濃縮し, 抽出溶媒にMeOHを用いることで高いノビレチンの抽出効率が得られた。さらにHPLC分析では定量下限0.1mg/100g, 変動係数1.8%と十分な正確さ, 精度を有することを明らかにし, 本法がカンキツ果汁全般のノビレチンの分析法として応用可能であることを示した。一方, ノビレチンはシークヮーサー果実の果肉部位にはほとんど含まれていないことから, 全果搾汁方式による果皮から果汁への移行成分であることを確認した。また, ノビレチンは果汁中では液体部分と含有するパルプなどの不溶性固形部分の両方に存在することから, その含量は果汁製造工程でのパルプ除去に関連する遠心分離処理の影響を大きく受けることが明らかになった。
著者
徐 忠傳 兵藤 宏 生駒 吉識 矢野 昌充 小川 一紀
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.192-194, 2000-03-15
被引用文献数
6

キウイフルーツ'魁密'(Actinidia chinensis)と'ヘイワード'(Acitinidia deliciosa)では果実の部位によって1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)合成酵素遺伝子の発現, ACC含量およびACC合成酵素活性に大きい差が認められた.エチレン生成能の低い'ヘイワード'においてはACC合成酵素mRNAのレベルは外果皮で一番高く, 部位の違いが明確であった.一方エチレン生成能の高い'魁密'においては外果皮, 内果皮, 果芯のすべてで高かった.ACC合成酵素mRNAの発現, ACC含量およびACC合成酵素活性は'魁密'の方が'ヘイワード'より高かった.これらの結果より, キウイフルーツのエチレン生成能の品種間差に関与する要因は主にACC合成酵素遺伝子の発現とACC合成酵素の活性であることが示された.