著者
山中 茂樹 北原 糸子 田並 尚恵 森 康俊
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、今後30年以内に発生するだろうといわれる首都直下地震において発生する膨大な避難者たちの行動を予測するとともに、その対応策を考えるのが目的であった。ところが、2011年3月11日、東日本大震災が発生。加えて東京電力福島第1原発の事故で福島県民を中心に多くの強制避難・自主避難が生じた。そこで、同時進行している事象の実態把握と解析も進めた。3年間の成果として、住民票を移さずに避難した人達の在留登録制度の新設や避難元自治体と避難先自治体が避難住民の名簿を共有する避難者台帳の整備、広域避難者の支援に充てるファンドの創設など多くの政策・制度を提案した。
著者
田並 尚恵
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.15-28, 2013-07-10 (Released:2017-02-14)
参考文献数
15

日本では1995年に発生した阪神・淡路大震災以降、多くの自然災害が発生している。 だが、これらの自然災害のうち、被災者が全国的に避難したケースはそれほど多くはなく、阪神・淡路大震災と三宅島噴火災害(2000年)、そして東日本大震災(2011年)の3例だけである。災害研究では、個人の生活再建には「医(心身の健康)、職(仕事)、習(子どもの教育)、住(住まい)」の支援が重要であるとされる。東日本大震災の広域避難者の多くは原子力災害による避難者であると指摘されており、地域によっては将来的に戻る時期が見通せない地域もあるため、避難先での支援と継続的な支援がより必要となると考える。
著者
田並 尚恵
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1-2, pp.353-361, 2020

「大学全入時代」を迎えた日本の大学では,リメディアル教育をはじめ,学力の質を担保する取組みが行われている.現在,ソーシャルワーカーを養成している大学で,公民科目(現代社会,倫理, 政治・経済)をリメディアル教育に採用している大学は,ほぼ皆無である.ソーシャルワーカーに求められる知識や社会の理解は,高校までの学習を基礎に専門的な知識を積み上げるものであり,基礎的な知識や理解がないままに学んでも体系的な理解にはつながらない可能性がある.このような問題意識から,X大学 A学科では,現代社会のリメディアル教育を導入した.本稿は,2017年度と2018 年度に実施したリメディアル教育の取組みを紹介し,その効果を考察したものである.いずれの年度も入学前学習の課題として社会保障制度に関するワークシートを作成し,入学予定者を対象としたスクーリングのミニ講義で課題の内容を確認した.そして初年次教育科目(基礎ゼミナールⅠ)の初回に基礎学力テストを実施した.さらに,基礎ゼミナールⅠの授業でテストの振り返りと社会保障に関するグループワークを実施した後,確認テストを行った.2回のテスト結果を統計的に分析したところ, 2018年度は,確認テストの平均が上昇し,リメディアル教育の効果が確認された.ただし,2回のテストとも成績の低い学生が全体の15%程度おり,基礎学力不足の学生には別途支援の必要があると考えられる.