著者
府中 明子
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.41-57, 2016

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本論文は、結婚意欲のある未婚女性たちが実際に特定の相手と結婚するかどうか悩み、結婚に踏み切らない状態でいることについてインタビューし、その内容を分析・考察したものである。結婚に関する領域では、これまで意欲の側面、出会いの側面、恋人の有無やコミュニケーションに関する側面、そして結婚後の夫婦間の平等や家事分担、男性の育児参加について研究、検討されてきた。結婚において経済的な側面と恋愛感情の2 点が重要視される点について変化はないが、それに追加して「男性の子どもに対する態度や意識」が未婚女性たちに問われているという点が浮かび上がってきた。その意識が、恋愛感情に関係する魅力として認識されていることも示唆された。そこでは子育てに従事するかどうかは問われていない。「役割意識の個人化」として「男性の子どもに対する態度や意識」が結婚前に問われ、未婚女性の結婚の決め手の一つの条件となっている可能性が示唆された。</p>
著者
石田 沙織
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.59-76, 2016

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿は、腐女子を自認する女性達に見られる、家族に対してなされる腐女子であることの隠蔽ないし表明に関連した彼女達のふるまいに着目し、腐女子達にはどのような規範が重視され、それはまたどのように日常生活に反映されているのかを明らかにすることを目的とする。先行研究においては、女性は子どもの頃から将来的な妻・母役割を意識した家族規範を示されてきており、それに抑圧を感じた者が腐女子となったと指摘されてきた。だがインタビュー調査の結果、今日家族規範は腐女子にとって抑圧的なものでも、妻・母役割と直結したものではないことが明らかにされた。女性達が家族に対し腐女子であることを表明する際には、家族成員同士の情緒的な関係性を重視する家族規範が反映されている一方で、隠蔽しようとする際にも異性愛規範・性規範を前提にした家族規範が影響していることが示された。</p>
著者
石田 沙織
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.59-76, 2016

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿は、腐女子を自認する女性達に見られる、家族に対してなされる腐女子であることの隠蔽ないし表明に関連した彼女達のふるまいに着目し、腐女子達にはどのような規範が重視され、それはまたどのように日常生活に反映されているのかを明らかにすることを目的とする。先行研究においては、女性は子どもの頃から将来的な妻・母役割を意識した家族規範を示されてきており、それに抑圧を感じた者が腐女子となったと指摘されてきた。だがインタビュー調査の結果、今日家族規範は腐女子にとって抑圧的なものでも、妻・母役割と直結したものではないことが明らかにされた。女性達が家族に対し腐女子であることを表明する際には、家族成員同士の情緒的な関係性を重視する家族規範が反映されている一方で、隠蔽しようとする際にも異性愛規範・性規範を前提にした家族規範が影響していることが示された。</p>
著者
神谷 悠介
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.77-91, 2015 (Released:2015-12-11)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本稿では、インタビュー調査に基づき、ゲイカップルの生活領域における意思決定プロセスを明らかにすることによって、パートナー関係における民主主義を考察することを目的とする。研究の結果、ライフスタイル上のロールモデルの不在という状況下で、パートナー間において交渉により合意に至る民主主義のプロセスが展開されるという先行研究の知見が支持された。その一方で、意思の相違や力関係、ヘテロノーマティビティが民主的な意思決定に支障をきたすことが示された。以上を踏まえ、パートナー関係における民主主義に困難性が生じる場合の意思決定モデルの構築の必要性が明らかになった。
著者
齋藤 直子
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報
巻号頁・発行日
vol.41, pp.5-20, 2016

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;この論文では、未婚化社会における被差別部落の青年たちの恋愛・結婚の現状について考察する。 <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;まず、議論の前提として、部落出身者の定義の問題について述べた。次に、部落出身者に対する結婚差別の状況について述べた。日本社会が、見合い婚から恋愛婚に変化したことによって、結婚差別の状況も変化した。 <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;そして、「未婚化社会」における部落青年たちの恋愛・結婚について論じた。部落青年の結婚に関する最大の悩みは、全国の青年とまったく同じで、適当な相手にめぐり会わないことである。だが、差別に対する不安もある。恋愛関係において、つきあったり別れたりを繰り返すことができる現在、相手の心変わりの理由は無数にあり、別れの理由が部落差別かそうでないのかを見分けることは難しくなった。これを「恋愛差別」と名付けた。 <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;また、部落青年が結婚できないのは、日本社会の未婚化の影響なのか、差別のせいなのか、就職や学力の不利が間接的に影響を与えているのか、理由を断定することは難しい。結婚できないことを、本人の責任にされてしまいかねない状況がある。 <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;最後に、未婚化社会における結婚・恋愛差別への対処について、考察をおこなった。</p>
著者
田並 尚恵
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.15-28, 2013-07-10 (Released:2017-02-14)
参考文献数
15

日本では1995年に発生した阪神・淡路大震災以降、多くの自然災害が発生している。 だが、これらの自然災害のうち、被災者が全国的に避難したケースはそれほど多くはなく、阪神・淡路大震災と三宅島噴火災害(2000年)、そして東日本大震災(2011年)の3例だけである。災害研究では、個人の生活再建には「医(心身の健康)、職(仕事)、習(子どもの教育)、住(住まい)」の支援が重要であるとされる。東日本大震災の広域避難者の多くは原子力災害による避難者であると指摘されており、地域によっては将来的に戻る時期が見通せない地域もあるため、避難先での支援と継続的な支援がより必要となると考える。
著者
大森 美佐
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.109-127, 2014

&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;日本では、晩婚・未婚化現象、それと連動して起こる少子化の傾向を問題視してか、人々に恋愛や結婚を意識させるような話題がメディアを媒介に世間を賑わせている。しかし、依然として結婚前の「恋愛」を中心的に扱った調査研究は少ない。本稿では、1983年から1993年生まれ、現在20歳代の未婚男女で異性愛者24名を対象にフォーカス・グループディスカッションと半構造化インタビュー調査を行い、若者たちが「恋愛」をどのように語るのかというレトリックに注目し、その論理構造をジェンダー視点から考察した。考察の結果、「付き合う」という契約関係は性関係を持つことの承認を意味するが、「付き合う」ことが必ずしも「恋愛」と同義ではないということがわかった。特に女性からは、結婚に結びつく恋愛を「恋愛」であるとする語りがみられ、ロマンティック・ラブを忠実に体現しようとすればするほど、「恋愛」から遠ざかるということが示唆された。
著者
佐々木 てる
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.21-34, 2016

<p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;これまで在日コリアンの2 世、3 世にとって恋愛そして結婚における「民族的な違い」とは大きな壁であったことは報告されてきた。すなわち「朝鮮人との結婚はゆるされない」「日本人ではなく同胞と結婚すべきだ」という言説はよく聞かれるものであった。 <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;これに対して近年では、通名であった人々も民族名で生活するケースも増えてきた。 そうなると名前だけではオールドカマーか、ニューカマーなのか、さらには出身国が中国か韓国か台湾かなどの区別もつかないことがあり、最初から「違い」を前提としたつきあい、そして結婚に至るケースがある。グローバリゼーションが進展するなか、民族的な差異は他の多くの差異(年収、出身地域、学歴、文化資本など)の一つに解消されている感もある。 <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;では未婚社会と言われる現代において、(旧来的な)「民族的差異」は本当に婚姻を疎外する要因になっていないのか。そもそも在日コリアンの若者世代は、恋愛において民族の違いに意味付けをするのか。ここでは聞き取り調査の結果をもとに、昨今の在日若者世代の結婚、恋愛観について述べていくことにする。</p>
著者
戸江 哲理
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.109-128, 2013

&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿では、子育てひろばにおける利用者(母親)とスタッフのごはんをめぐる発言とやりとりを、会話分析の立場から検討する。分析の焦点は、これらの人々自身がごはん(作り)を公私区分上に位置づける様子を解明することにある。母親は子育てひろばを立ち去る間際に、ごはんについて発言することがある。この発言はひとり言として発されるか、自分の会話能力がない子どもに宛てられる。このことから、母親がごはん(作り)のことを家族のメンバー内(私的領域)に留めるべきだと捉えていることが窺える。他の人たちはこの発言に対して反応することがあり、それによってごはん(作り)は家族以外のこの場にいる人たちが関与する領域(公的領域)へと移動する。反応にもいくつかのバリエーションがあり、それぞれ公共化のレベルが違う。そして、この反応のバリエーションは、ごはんの作り手としての立場に対する反応する人の注意の払いかたによって生み出される。
著者
藤間 公太
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.91-107, 2013

&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿では、社会的養護施設をめぐる2つの論争―ホスピタリズム論争、津崎哲夫vs 施設養護支持派論争―を分析し、「家庭」を支配的なロジックたらしめる言説構造について考察する。分析からは、かつてはあった「家庭」への批判的視角が徐々に失われ、反施設論者だけでなく、施設養護支持派も「家庭」をケアの場の支配的モデルと前提するようになったことが明らかになった。こうしたなか、個別性や一貫性の保障という小規模ケアのメリットを「家庭的」な形態に結び付ける言説構造が維持、強化されてきたと考えられる。以上を踏まえ、考察部では、「家庭」を理想的なケア環境として措定する言説構造が持つ問題と、今後の脱家族化論の課題について議論を行う。
著者
藤間 公太
出版者
家族問題研究学会
雑誌
家族研究年報 (ISSN:02897415)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.91-107, 2013

&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;本稿では、社会的養護施設をめぐる2つの論争―ホスピタリズム論争、津崎哲夫vs 施設養護支持派論争―を分析し、「家庭」を支配的なロジックたらしめる言説構造について考察する。分析からは、かつてはあった「家庭」への批判的視角が徐々に失われ、反施設論者だけでなく、施設養護支持派も「家庭」をケアの場の支配的モデルと前提するようになったことが明らかになった。こうしたなか、個別性や一貫性の保障という小規模ケアのメリットを「家庭的」な形態に結び付ける言説構造が維持、強化されてきたと考えられる。以上を踏まえ、考察部では、「家庭」を理想的なケア環境として措定する言説構造が持つ問題と、今後の脱家族化論の課題について議論を行う。