著者
山口 勝 赤松 豊博 伊藤 達夫 田中 實 松山 登喜夫
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

得られた研究成果は次の通りである。1.空間次元1から5までにおける球内で定義された球対称な非線形自励型波動方程式が可算無限個の時間に関する周期解をもっことを示した。周期はすべて異なる周期で一次独立になっている。証明には、周期とラプラシアンの固有値に関する弱ポアンカレ型のmophantine条件が用いられた。このため、ベッセル関数の零点の漸近展開を行い零点の数論的性質が詳しく研究されている。また、周期を特定するために波動方程式に対応する非線形常微分方程式の解と周期が詳しく解析されている。また、ここで用いられた方法を適用して、空間1次元非線形Klein-Gordon方程式の境界値問題を考察し、可算無限個の時間に関する周期解をもつことを示した。2.吊り下げられた重い弦に、時間に関して準周期的に変化する外力が作用している場合の初期値境界値問題を研究した。空間主要部の微分作用素の固有値と外力の準周期に一般的なDiophantine条件を仮定したとき、すべての解が概周期関数になるというきわめて一般的な結果を得た。解の概周期構造も明らかにされている。Diophantine指数と外力項の微分可能性との関係も明らかにされた。また、上記の結果から境界値問題が外力項と同じ準周期をもつ準周期解をもつことも示された。この方程式に適合した新しい関数空間を設定し、これらの空間の中で固有値問題の解を求め、この解を用いてスペクトル理論を構成しこの問題を解いている。3.空間領域と波動方程式が空間について球対称な場合について、領域が時間について周期的に振動する場合に3次元非線形波動方程式の境界値問題の周期解が存在することを示した。4.多様体上の測地線に関する次の定理を証明した。「定理 Mを球面と同相な実解析的なリーマン計量を持つ多様体とする。もし、Mのガウス曲率がいたるところ正ならば、Mの各点の共役点のなす集合は、1点からなるかまたは、少なくとも4っのカスプをもつ。」
著者
田中 實
出版者
慶應義塾大学法学研究会
雑誌
法學研究 : 法律・政治・社会 (ISSN:03890538)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.92-95, 1977-06

小池隆一先生追悼記事
著者
田中 實男
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.37-44, 1996-03-31

ここ四半世紀に亘るわが国の農畜産物の生産調整は, 消費を上回る生産の増大による絶対的過剰と, わが国の貿易黒字を背景にして海外からの農畜産物の輸入調整の出来ぬままに国内の生産を抑制する相対的過剰とを原因として開始された.このこと自体が, 農畜産物価格を低迷させる結果となり, 農業経営にとって非常に厳しい状況となった.ここ10年ほどの間に, この厳しい環境条件のなかにおいて農業経営の継続が不可能となり, 農家整理の事例が散見されるようになった.本稿においては, 農業経営が破綻を来たして, 破産整理に至った原因について, 30年間に亘る農業経営診断作業過程から得られた知見を整理して検討した.その結果, まず第1点として, 農家の破産整理にまで至った事例にすべて共通する基本的条件は, 農業生産技術水準の低位性であった.これまでに農業生産についても, 所得拡大を目指して経営規模拡大の努力がなされてきた.しかし, この規模の拡大が所得の増大に結びつくには, 省力化しつつ規模拡大前と同一生産技術水準の維持が前提条件である.さらには, 規模の拡大は, 多分に経営外からの原材料用役の購入の増大すなわち経費率の上昇を伴うのが一般的である.結果として, 経営規模の拡大とともに生産技術水準の低下と収益の減少を来すのが多かった.所期の目的たる所得の拡大を実現するには, 農業経営者としての高い管理能力の発揮が問われたのである.第2点として, 経営能力と密接に関係するが, 生活水準を維持するには農業経営規模が零細である点が指摘される.この点は, 施設型資本集約型農業経営においては, 可成りの規模拡大によって目的が達成されているが, 土地利用型農業経営は, 農地問題との関係でもって非常に零細である.しかし, この必要とされる農業経営規模とは, 農家の生活水準におおきく関係するわけで, 第3点として, とくに戦後生れの農業経営者の生活観の不健全さを指摘した.何よりも人並みの生活水準が前提であって, 自分で稼ぎ出す所得の多寡とは無関係という人生観は理解の外であるが, 現実に存在しているのである.第4点としては, 農村にこのような破産型人生観が通用するような金融環境が存在することが問題である.それは, とくに農協を中心として成立しているが, 現在に至ってその存在を整理しなければならない状況に追い込まれた.農家の高額負債問題は現実に破綻して, 具体的に破産整理の実行となったわけである.農家の高額負債問題の整理としては, 著者は早くから提案したところであるが, 農業経営の再建の可能性の有無を尺度にして, その可能性のない農業経営は早急に経営活動を停止させて整理すべきである.このことは, 債権者としての農協などと債務者としての農家の双方にとって, 可能な限り損害の少ない処理法となるからである.そして, 再建の可能性のある農業経営は, 経営から生活までを管理する濃密な指導態勢のもとに置かれるべきである.それは, これぐらいの指導を必要とするぐらいの破産型の人生観を持った農業経営者が多くいるからである.1992年(平成4)11月末に, 6,500万円の負債でもって農協との合意のうえで農村から退散した畜産経営者が, その後はビル清掃員ついで長距離トラック運転手と転身したが, 現在の彼の「畜産経営をやっていた時に比べてこんなに楽をしていいものかと思う」ということばのなかに, 経営者としての能力の欠落とそれまでの生活の無計画さを見出すのである.
著者
田中 實男
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿兒島大學農學部學術報告 (ISSN:04530845)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.125-134, 1993-03-31

国民栄養的觀点から, 良質の動物性たん白質の供給源としての鶏卵が首位を占めていたのは1979年(昭和54)までであったが, 現在でも重要な地位を占めている.その鶏卵生産を担った採卵鶏経営は, 1960年(昭和35)ごろまでは農家の80%を占める450万戸で10羽程度の鶏が飼養されていた.しかし, 1965年(昭和40)に生産性の高い外国鶏が過半を占めるころには規模拡大が進行し, こののち経営数の急減と飼養羽数の急増は加速化され, 消費を上回る供給増大のために1974年(昭和49)には, 現在まで続く生産調整が開始された.この間の鶏卵生産の特徴は, 農外資本による鶏卵生産への参入であり, さらには1万羽以上飼養の経営数は10%ながら, 成鶏めす羽数シェアは90%にも達していることである.このように大規模化した採卵鶏経営の特徴は, 専ら規模拡大を指向して絶えず生産技術水準の向上を図っていることである.この点について, 18年間にわたる家族労力経営事例について点検すると, 明確に生産技術水準の向上が確認された.そのことは, 生産性の高い鶏種の導入による側面もあろうが, 他方, 高生産性の鶏種の能力を発揮させ得る管理能力の存在も示している.それらは, 1人あたり管理羽数の増大のなかで成鶏めす羽数規模の拡大を図りつつ, 平均産卵率を70%から75%へ, 平均卵重を58gから62gへ向上して成鶏年間産卵量を15kgから17kgへと増加させている.一方, 生産費の60%も占める飼料費については, 成鶏年間飼料消費量を殆ど増減のない39kgに保ちつつ, 飼料要求率を2.6から2.2へと低下させている.結果として, 管理労働1時間あたり鶏卵生産量は, 15kgから40kgへと向上した.鶏卵生産における生産技術上の改善努力がなされるなか収益性の動向は, 1974年(昭和49)に鶏卵の生産調整が開始され鶏卵価格は停滞するが, 飼料価格は高値を維持したままなので卵飼比は70%にも達していた.1985年(昭和60)の円高によって飼料価格は急落するが, 鶏卵価格も低落したため卵飼比は50%に下落した.しかし, 高卵飼比でも鶏卵価格が高水準の場合は, 所得は可成りの額が実現されるが, 鶏卵価格が低水準になると, 卵飼比は低下しても所得額は増大しない.低卵価のなかでの低所得額が, 現在の採卵鶏経営の実態である.このような状況の場合, これまでは規模拡大による鶏卵生産量の増大によって, 所得総額の維持拡大を図ってきていた.そして, 現在の鶏卵生産は, 規模拡大を行っても生産性水準の維持向上が可能であった経営のみによって担われて来ているのである.このことは, 18年間にわたる家族労力中心の採卵鶏経営の分析においても観察された.このような採卵鶏経営の困難さは, 古くから指摘されていたことでもあって, 採卵鶏を200〜300羽飼養して専業経営と言われた時代にも, 「農家殺すに刃物は要らぬ, 鶏を半年も飼わせれば良い」ということばがあった.鶏卵生産は, 農産物のなかでも所得率の最も低い作目の生産であるために, 昔からも生産技術上の失敗は許されなかったのである.これからの採卵鶏経営は, ますますその数を減じて行くであろう.他方, 鶏卵供給水準を維持するためには, 経営規模は拡大化を続けざるを得ない.その経営規模の拡大を図りつつ採卵鶏経営を存続させるには, 何よりも生産技術水準の維持向上の努力が前提条件となるのである.