著者
山口 勝己 屋敷 和佳
出版者
東京都市大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

引き戸タイプオープン型教室に対する教員評価から、授業に影響する音が軽減できる点、容易に開閉できる点から、引き戸タイプを評価する教員が非常に多いことが示された。また、雑誌掲載事例の分析及び大都市のオープン型教室設置の経年的分析により、ここ10年程度で完全オープンタイプがほとんどみられなくなり、引き戸タイプが急速に増えていることが明らかになった。標準的な間仕切りとして定着しているといえる。完全オープンタイプの問題点や引き戸タイプの利点と普及状況が設置者に認識されたためであると思われる。ただし、引き戸タイプでもオープンスペースの利用が必ずしも活発であるとは言えず、今後の計画的検討が必要である。
著者
山口 勝巳 屋敷 和佳
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.77, no.682, pp.2705-2713, 2012-12-30 (Released:2013-05-29)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

This paper aims to grasp the structure of the teacher evaluation for the open plan classroom environment of the elementary school based on the questionnaire survey for the teachers in three public schools.1) In Different three Schools where are in a classroom form, a sound becomes the big problem.2) For an open plan classroom, a teacher of 60% does an affirmative evaluation in two schools.3) In the expensive school of flexibility of the space is active, but the affirmative evaluation does not reach 20%.4) The teachers of the teacher in charge of the class in particular do a severe evaluation.5) Most teachers hope for classroom space with the movable partitioning that they can easily shut.
著者
堀 栄太郎 山口 勝幸
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.399-400, 1984-12-15 (Released:2016-09-02)

Two males of the parasitic calliphorid fly Melinda itoi Kano 1962 were obtained from the slug, Incilaria bilineata (Benson) in April, 1976. The slug was one of those which were collected on March 25,1976 in the cracks of the bark of an old Ume-tree (Prunus mume Sieb. et Zucc.) growing beside the brook of a hilly village (Ohyagi, Moroyama-cho, Saitama) and kept alive in our laboratory at 25℃ from that time on. The movement of the maggots in the slug body was recognized three days after collection. Two days after that, they came out of the slug and pupated on the bottom of the glass container. After 12 days (April 11), the adult flies appeared. So far as we know, this is the first case of the parasitic fly emerged from the slug in Japan.
著者
井田 喜明 山口 勝 増谷 文雄
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.111-121, 1986-03-25 (Released:2010-11-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Seismic data obtained in Kirishima Volcano Observatory thruogh June, 1982 to August, 1985 were analyzed to reveal the nature of recent earthquakes in Kirishima volcano. In this period, signifucant earhquakes swarms were observed repeatedly in three regions around Shinmoe cone, Ohgiri hot-spring area and Ohnami-ike crator lake. Seismicities in these Fault plane solutions show that a north-west to south-east extensional stress is dominant in Ohgiri and Shinmoe, while Ohnami-ike regions has earthquakes that represent a strike a slip fault motion along a line extending north-west to south-east. These events in Ohnami-ike are explained as a displacement across the fault to adjust the extentional deformation in Ohgiri and Shinmoe.
著者
山口 勝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.30, 2005

1.はじめに新潟県中越地震直後の震災番組(2日後のクローズアップ現代と1週間後のNHKスペシャル)で、主に地震と土砂災害のメカニズムの部分の制作に携わった。災害報道には、災害の事実を伝えるだけでなく、2次的な災害を防ぎ、次の災害に備える視点が求められる。その番組制作過程で"地理学の視点"の大切さを感じた。「自然と人々の暮らしを見つめる学」としての地理学の視点である。2. 「余震はいつまでつづくのか?」被災者の不安に地震のメカニズムから答えられたか?_から_クローズアップ現代_から_地震を起こした断層は、既知の活断層か?断層は地表に現れているのか?まず、この科学的関心から取材を始めた。いち早く現地入りし、地理学の視点で断層調査を行った名古屋大学鈴木康弘教授・東洋大学渡辺満久教授から"小平尾断層で、地表変位の証拠を確認"の報を頂いたのは、番組放送の3時間前。どこよりも早くスクープとして報道することができた。さらに、震度6強(後に震度7も)が、約1時間で3回も起き、その後も強い余震がつづいた新潟県中越地震。「なぜこんなに強い余震が多いのか?いつまで余震はつづくのか?」被災者の不安・関心はそこに向かった。市民感覚から言えば、今回の地震は、"強い余震が多い特殊な地震"である。それに答える地震メカニズムが期待された。しかし、専門家にあたっても、なかなかこれという答えがみつからなかった。多くの地震学者は「震源が浅いのだから、深い地震では感じないような余震まで地上で大きい揺れとして感じる。内陸地震の余震のパターンとしては、決して特殊ではない」と答えた。確かに正しそうだ。しかし市民感覚とは乖離している。視聴者のなぜには答えているのか?また、ある地震学者は「これまで断層活動がなかった場所で初めて滑ったので、摩擦が大きくずれにくかったので、その分、余震が多いのでは」と答えた。今回の地震が特殊であるという立場からのコメントである。しかし、地形・地質学的には、新潟県中越地方はもっとも有名な活褶曲帯であり、地表に現れた活断層だけではなく、地下に多数の断層が存在している。決して"これまで断層活動がなかった場所"ではない。むしろ地殻変動が激しい場所である。さらに取材を進めた結果「震源が浅いために余震の揺れを強く、多く感じる。さらにこの地域は地下構造が断層や褶曲があって複雑で、堆積物も柔らかいため、余震が誘発されやすい。今後も強い余震に注意する必要がある」という、この地域の地形・地質の特殊性をふまえたコメントを地震の専門家にお願いした。報道は、短時間で各分野の専門家の情報を理解、評価し、素人の視点で判断していく仕事だが、今回の判断は正しいかったのだろうか?3.「自然風土との共生を破壊した災害」_から_NHKスペシャル_から_ 「春の棚田、錦鯉、そして牛の角つき」。番組は山古志村の美しい風景とそこに暮らす人々のシーンから始まった。今回の地震では,地すべりや崖崩れなど"地震による土砂・地盤災害"が被害を大きくした。それまで暮らしを支え守ってきた棚田やため池が、各所で崩れ村は孤立した。土砂が川を堰き止め,集落も灌水した。自然地理学的には、"構造性地滑り地帯"として知られてきた地域である。第三紀の未固結な泥岩や砂岩が互層をなし、断層や褶曲の影響で地層が切り立っている。春の雪解け時期には地滑りがおきる。この自然環境・風土に対して、人々は地すべり地に棚田をつり、あぜ塗りや水路を管理することで地下に浸透する水分を調整して地すべり災害を防いできた。こしひかりの棚田も,錦鯉の池も、豪雪と地すべりという自然環境・風土に対して人々の知恵と営みが生んだ共生の風景なのである。まさに、人文・自然地理学融合のフィールドと言っても良い地域である。番組の土砂災害メカニズパートでは、この地形・地質に、直前の台風で、たっぷりと水が供給され地震で大地が揺すられることで、土砂崩壊が起きやすくなったという、再現実験を行った。しかし、科学的解説と再現実験だけでは番組が、流れなかった。冒頭の映像にあるような、人文地理的視点のシーンを挿入して初めて番組全体が流れたのだ。災害をメカニズムだけでなく、風土や人々の暮らしとの関係でとらえる「地理学の視点」、いわば災害地理学の視点は、番組づくりだけでなく、長期的な防災対策や街づくり、国づくりへのヒントを含んでいると感じる。
著者
髙橋 真 岩本 浩二 水上 昌文 井波 博 桑水流 学 宮田 賢児 山口 勝也 嶽本 伸敏 井河 武 宮内 幸男
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.155-158, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
11

〔目的〕本研究の目的は足関節捻挫(捻挫)における外果骨損傷の有病率と治癒過程を明らかにすること.〔対象と方法〕対象は2015年1月から2017年1月に受診した捻挫患者の37例とし,骨損傷(14例)と靭帯損傷(23例)に分類した.〔結果〕骨損傷の有病率は38%,年齢は47.4歳,安静期間は49.1日,完治期間は102.7日,スポーツ受傷は14例中3例であった.年齢は骨損傷が靭帯損傷と比較して高値を示した.骨損傷はスポーツ動作での受傷が少なかった.〔結語〕骨損傷は捻挫の約4割に認め,年齢が高く,スポーツ動作での受傷が少なかったため,日常生活動作へのアプローチが必要と示唆された.骨損傷は完治期間が約3ヵ月であり,靭帯損傷との有意差がなかったことから,約7週の安静期間は損傷部位の治癒に重要と考察された.
著者
河内山 義夫 山口 勝巳 橋本 周久 松浦 文雄
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.867-872, 1966-10-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
21
被引用文献数
17 19

A blue-green chromoprotein was isolated from the eel serum and characterized for some physico-chemical properties. It behaved homogeneously both in ultra-centrifugation and in electrophoresis. Its absorption maxima appeared at 279, 383 ?? 4 and 704 ?? 5mμ in an aqueous solution, indicating presence of a biliverdin-like prosthetic group. The isoelectric point was at about pH 4.7 and the molecular weight (M8. D), 89, 100. It showed no toxicity to mice, suggesting that the pigment and the toxicsubstance in eel serum are different.
著者
山口 勝巳 屋敷 和佳
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.77, no.682, pp.2705-2713, 2012
被引用文献数
2

This paper aims to grasp the structure of the teacher evaluation for the open plan classroom environment of the elementary school based on the questionnaire survey for the teachers in three public schools.<br>1) In Different three Schools where are in a classroom form, a sound becomes the big problem.<br>2) For an open plan classroom, a teacher of 60% does an affirmative evaluation in two schools.<br>3) In the expensive school of flexibility of the space is active, but the affirmative evaluation does not reach 20%.<br>4) The teachers of the teacher in charge of the class in particular do a severe evaluation.<br>5) Most teachers hope for classroom space with the movable partitioning that they can easily shut.
著者
山口 勝 山口 早也加
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.73-76, 2003 (Released:2007-02-06)
参考文献数
6

7歳齢,短毛雑種猫,去勢雄の冬季耳介脱毛。全血スライド凝集試験において4℃凝集,寒冷沈降試験において血清と血漿ともに沈降物を認め,再加温によりいずれも消退した。寒冷凝集素,クリオグロブリン,クリオフィブリノーゲンの関与した寒冷症を疑い,寒冷刺激回避とともにヘパリン類似薬を片側性に塗布したところ治療側耳介の育毛を認めた。治療開始6年を経過したが,同様の治療により冬の耳介脱毛を認めていない。
著者
山口 勝巳 松浦 文雄
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.920-926, 1969-09-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
13
被引用文献数
3 5

The blue pigment from the muscle of a marine teleost, “hirosa”, Cheilinus undulatus RÜPPELL, was clarified to be a biliverdin-protein.
著者
山口 勝業
出版者
専修大学経済学会
雑誌
専修経済学論集 (ISSN:03864383)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.183-199, 2009-03-23

博士論文要旨および審査報告:学位授与年月日;平成20年10月18日,学位の種類;博士(経済学),学位記番号;[博]経乙第22号
著者
山口 勝業
出版者
専修大学
巻号頁・発行日
2008

博士論文要旨および審査報告:学位授与年月日;平成20年10月18日,学位の種類;博士(経済学),学位記番号;[博]経乙第22号
著者
山口 勝 赤松 豊博 伊藤 達夫 田中 實 松山 登喜夫
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

得られた研究成果は次の通りである。1.空間次元1から5までにおける球内で定義された球対称な非線形自励型波動方程式が可算無限個の時間に関する周期解をもっことを示した。周期はすべて異なる周期で一次独立になっている。証明には、周期とラプラシアンの固有値に関する弱ポアンカレ型のmophantine条件が用いられた。このため、ベッセル関数の零点の漸近展開を行い零点の数論的性質が詳しく研究されている。また、周期を特定するために波動方程式に対応する非線形常微分方程式の解と周期が詳しく解析されている。また、ここで用いられた方法を適用して、空間1次元非線形Klein-Gordon方程式の境界値問題を考察し、可算無限個の時間に関する周期解をもつことを示した。2.吊り下げられた重い弦に、時間に関して準周期的に変化する外力が作用している場合の初期値境界値問題を研究した。空間主要部の微分作用素の固有値と外力の準周期に一般的なDiophantine条件を仮定したとき、すべての解が概周期関数になるというきわめて一般的な結果を得た。解の概周期構造も明らかにされている。Diophantine指数と外力項の微分可能性との関係も明らかにされた。また、上記の結果から境界値問題が外力項と同じ準周期をもつ準周期解をもつことも示された。この方程式に適合した新しい関数空間を設定し、これらの空間の中で固有値問題の解を求め、この解を用いてスペクトル理論を構成しこの問題を解いている。3.空間領域と波動方程式が空間について球対称な場合について、領域が時間について周期的に振動する場合に3次元非線形波動方程式の境界値問題の周期解が存在することを示した。4.多様体上の測地線に関する次の定理を証明した。「定理 Mを球面と同相な実解析的なリーマン計量を持つ多様体とする。もし、Mのガウス曲率がいたるところ正ならば、Mの各点の共役点のなす集合は、1点からなるかまたは、少なくとも4っのカスプをもつ。」
著者
伊藤 信輔 小田原 修一 山口 勝矢 平野 実
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1719-1725, 1989-12-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
15

The relationship between the direction of rotation and the leg supporting the body in figure-skating was thought to be based on the cristo-spinal reflex. Skaters stand or jump with the leg of the same side as the rotation when turning around a vertical axis. This suggests that the movement of endolymphatic fluid towards the ampulla of the ipsilateral horizontal semicircular canal as the direction of rotation exerts a facilitatory action on the extensor neurons. On the other hand, they land on the ice with the opposite leg after turning in the air. This can be interpreted as a phenomenon similar to postrotatory nystagmus; that is, the ampullopetal flow takes place in the semicircular canal opposite to the rotation after cessation of turning, resulting in activation of this canal.
著者
山口 勝業
出版者
行動経済学会
雑誌
行動経済学 (ISSN:21853568)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Special_issue, pp.S1-S4, 2019 (Released:2020-03-17)
参考文献数
11

「日本人の金融リテラシーは米国人よりも低い」という通説があるが,じつは金融リテラシー調査の質問票の文面や回答者のバイアスによって米国のスコアが日本よりも高めに出ている疑いがある.これらの点を考慮すれば,金融リテラシーの客観的知識では日本人と米国人の違いはほとんどなく,主観的知識では米国人の自信過剰バイアスがスコアを高めていると思われる.
著者
山口 勝
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p><b>1.はじめに 「新たなステージ」に対応した防災・減災 を受けた動き</b></p><p>2019年の台風19号をはじめ、毎年のように自然災害が発生している。政府は2015年1月に、既に明らかに雨の降り方が変化しているとして「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」を公表した。「比較的発生頻度の高い降雨等」に対しては、施設防御を基本とするが、それを超える降雨等に対しては、従来の避難勧告に加え「状況情報」の提供による主体的避難の促進によって「命を守り、社会経済に対して壊滅的な被害が発生しない」ことを目標にすることにした。本稿では、防災機関やメディアから地理情報として発信されるようになった防災・災害情報の現状について報告し、現状と課題を検討する。</p><p><b>2.情報で「命を守る」 マップによる「状況情報の提供」</b></p><p>国交省国土地理院は、ハザードマップポータルhttps://disaportal.gsi.go.jp/で全国の自治体のハザードマップを見られるようにした。また気象庁は、2018年に大雨、洪水警報の危険度分布の発表を始めた。切迫度の高いリアルタイムの災害情報が、テキストから線や面といった画像や地理情報で伝えられることになったのである。洪水予報河川だけでなく全国約2万の中小河川を対象とする画期的な取り組みである。台風19号を受けて2019年末には、大雨の危険度とハザードマップをWEB上で重ねられるようさらに改良した。「川が溢れる」→「ここまで浸水する」→「すぐ逃げて」と情報で「自らの命は自らが守る」ことを促進させるねらいである。また、この間、台風など時系列を踏まえた対応が可能な場合は、あらかじめ社会的な対応を取っておく「タイムライン防災」が提唱され、鉄道の「計画運休」などが実施されている。リアルタイムの時空間情報に基づく防災対応が行われている。 </p><p><b>3.メディアにおける地理情報の重要性 マス・パーソナルコミュニケーション</b></p><p> このように災害の激化、頻発化、局地化によって防災機関が、災害情報発信に地理情報を使うようになると、速報メディアを中心に地理情報の活用が活発化した。例えば、Yahoo!は、2016年に「Yahoo!天気・災害」などで、地図上に河川水位情報を示し、ハザードマップと重ねられるようにした。NHKでは、東日本大震災以降、気象データなどのビックデータを可視化するNMAPSという地理情報システムを開発し、2015年関東東北豪雨では、線状降水帯の形成過程を3次元のデジタルアース上で可視化した(山口、2016)。現在では各局の気象情報でも日常的に利用している。また、2018年の大雨・洪水の危険度分布の運用に合わせて、気象庁や「川の防災情報」などの防災機関のWEBを、スタジオのPCで操作しながら解説する「リアルタイム解説」を始めた。災害が起きてからの災害報道ではなく、防災・減災報道を充実させるためである。また、「命を守る」公共メディアとして「いつでも、どこでも、だれでも」防災情報を得られるよう「NHKニュース防災アプリ」や「NHKニュースウェブ」といったネットを使って、警報などの情報を原稿(テキスト)だけでなく、位置や範囲示す危険度分布や河川カメラの映像とともに地理情報でリアルタイムに発信するようにしている。</p><p><b>4.まとめ</b></p><p> 台風19号では、10月12日の午後には「川の防災情報」のページがつながらなくなった。本稿では、地理情報による情報発信が、主にネットで個人に対して行われていることを示したが、情報ニーズが高まる災害時に機能しないのでは困る。輻輳のない放送など複数の手段による災害情報の発信が必要である。また、目の悪い方やラジオなどの音声メディアに向けて、画像や地理情報で提供される災害情報をAIなどでテキスト化、音声化し、優先度や位置情報にもとづいて伝えられるようにするなど、さらなる工夫も期待されている(山口、2019)。</p>