著者
田中 幸弘 田中 秀一郎
出版者
パーソナルファイナンス学会
雑誌
パーソナルファイナンス研究 (ISSN:21899258)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.21-46, 2019 (Released:2020-10-20)

本論文においては、我が国における仮想通貨の現在の状況について検討し、金融庁の研究会等での議論や仮想通貨に関連する事業者の金融庁による処分や法制度改定などの取り組みを検討した後、いわゆる ICO(Initial Coin Offering) の制度について金融庁による「金融の4機能」のどこに ICO の四類型が該当するのかを検討した。そして、 ICO と類似するクラウドファンディングやソーシャルレンディング等の現行制度における限界を踏まえ、証券及び金融市場における資産運用業界の実務的な側面からICO の投資可能性を担保するための条件を提示するとともに、 ICO という資金調達手段が市民社会の側面から見た資金調達の簡便性との両立が可能かどうかを検討した。その際に ICO という資金調達手段において投資家保護と資金調達の簡便性が両立するかという問題との関係で、その両立のために必要とされる各種制度整備を検討し、現行制度に対する代替案の提言を行った。そして最後に仮想通貨の法的性格との関連でアメリカにおける個人情報を所有権の客体と位置づける法案の内容について紹介するとともにその各方面での将来的な影響について若干の検討を行なった。