著者
鐘本 英輝 数井 裕光 鈴木 由希子 佐藤 俊介 吉山 顕次 田中 稔久
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.15-22, 2017-03-31 (Released:2018-04-01)
参考文献数
26
被引用文献数
2 1

漢字の純粋失書を伴う皮質基底核症候群 (CBS) を呈したアルツハイマー病 (AD) 症例を経験したので, 本例の漢字の純粋失書の発現機序について検討を行った。症例は右利き男性で, 58 歳頃から軽度の物忘れを自覚。64 歳の当科初診時には日常生活に支障はなく, 口頭言語や読字に障害は認めなかったが字形想起障害による漢字の失書が目立ち, 右優位の軽度のパーキンソニズム, 右上肢の肢節運動失行を認めた。頭部 MRI では両側性の前頭葉と頭頂葉の軽度萎縮を認め, IMP-SPECT では左側頭葉後下部を中心に左半球の血流低下を認めた。臨床的に CBS が疑われたが, 髄液バイオマーカーから AD が示唆された。本症例の失書はAD で報告されている特徴に合致する一方, 皮質基底核変性症における失行性などの運動性要因を含むものが多いという失書の報告とは異なっていた。CBS の背景病理は多彩であることが知られているが, CBS における失書の様式はその背景病理を推定する一助となるかもしれない。
著者
馬越 芳子 秦 珠子 木原(山本) 眞実 永易 健一 田中 稔久 馬越 淳
出版者
一般社団法人 日本女性科学者の会
雑誌
日本女性科学者の会学術誌 (ISSN:13494449)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.29-43, 2010 (Released:2011-09-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

生物が作る生体高分子は、多量の化石燃料を必要とせずに、太陽エネルギー、水、酸素、炭酸ガスや金属イオンを酵素の低いエネルギーの作用で作られる。地球温暖化を防ぐために、カイコが繊維を作る方法を学び、低エネルギーでの高分子合成と繊維形成を構築することが必要である。カイコは紡糸口から、数十種の紡糸方法が精密に制御された超ハイテク技術でスーパー繊維を作っている。乾式・複合・液晶・倦縮・多孔質・高速・ゲル-ゾル転移・イオン制御・自力・自動制御・傾斜紡糸、ゾーン延伸、二酸化炭素固定、低エネルギー紡糸などの幾つもの紡糸方法が巧みに組みあわさり、フィブロイン分子を精密に自動制御配向させながらシルクを作っている。これは合成繊維が数種の方法で、高いエネルギーを用いるのに反し、生物は非常に合理的な、巧妙な方法で、タンパク質をうまく制御しながらエネルギーの消費の少ない方法で糸を作っている。生物の紡糸工場の低エネルギー技術を工業的に取り入れた新たな超合成繊維を作る基礎資料となる。さらに、カイコが糸を形成する際、TCAサイクルを用い、大気中の二酸化炭素を糸の中のアミノ酸、グリシン、アラニン、セリン、アスパラギン酸に取り込むことを、世界で初めて明らかにした。
著者
森原 剛史 武田 雅俊 工藤 喬 田中 稔久
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

NSAID誘導体によるAβ42産生の抑制作用は認められなかった。背景遺伝子を混合させたAPPトランスジェニックマウスはAβ蓄積を修飾する遺伝子群の収集には大変有効であった。候補遺伝子アプローチで炎症関連遺伝子の関与を調べたが、有意な関係は認められなかった。高齢者の血中CRPと認知機能の変化の関係は本研究機関では認められなかった。