著者
田上 不二夫 山本 淳子 田中 輝美
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.135-144, 2004-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
77
被引用文献数
8 5

本論の目的は, 教師のメンタルヘルスに関わる研究を教師のストレスに焦点をあてて概観し, 今後の課題について検討を行うことである。はじめに, 教師のストレスに影響を及ぼす要因を, その職業の特性から3つ (職業の特殊性, 個人特性, 環境の特異性) に分類し, 概観した。そして, 要因間に複雑な関連はあるものの, 教育現場へのより具体的な提言を可能にするために, ある特別で限定された側面に焦点をあてた研究が必要であることや, 教師のストレス反応を引き起こす過程を明らかにするような研究が必要であると論じた。次に, 教師や学校組織によるストレス軽減のための方法について検討している研究を, その取り組みの形式から2側面 (教師のスキル向上と学校組織の再構成) に分類して概観した。最後に, 組織・個人双方向からのアプローチの重要性を指摘するとともに, 地域や学校関連機関との連携に関する研究の必要性について論じた。
著者
銅島 裕子 田中 輝美
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.86-95, 2014

本事例は,夫から言われた過去の否定的発言を思い出しては「夫がゆるせない」と夫への恨みを訴え,さらに「自分はダメな人間だ」と抑うつを伴う自責的な反芻思考をする女性に,抑うつと怒りの軽減を目的とし,"ゆるし"に着目したカウンセリングを実施したものである。筆者はカウンセラーとして関わり,約11か月合計20回にわたる面接を行った。アプローチの概要は,否定的な気分になったときの状況・思考などを記録用紙に書く自己モニタリングや,気晴らしなどの注意転換による認知・感情面への心理的援助によって,夫への恨みや自責的な考えの反芻減少を試みたことである。また夫婦間交流を増やすために,夫婦の出会った頃のイメージを回想する,夫の趣味や仕事を妻も共有する,夫がいてありがたいと思えることの再確認,さらには自己主張訓練で夫に自分の主張や感謝を伝えるなどの具体的な課題を実施した。そのような夫婦関係の行動面への援助をした結果,クライエントは「夫のことが気にならなくなった」と話し,夫婦関係改善に至り,婚姻関係を継続した。相談終了時の心理テストの結果においてもネガティヴな反芻思考が軽減し,うつ気分も改善されたことが確認された。
著者
銅島 裕子 田中 輝美
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.13-22, 2013-01-31 (Released:2019-04-06)
参考文献数
28

気晴らしという個人の注意・関心をほかに向けることによって、抑うつ気分をコントロールする方法が研究されているが、その効果については一致した見解は得られていない。そこで本研究の目的は、うつ病と診断された精神科診療所の通院者を対象に、気晴らしを中心とした認知行動療法(CBT)と通常診療を実施することによってネガティヴな反すう思考や抑うつ気分に変化が見られるかを検証する。方法は、大うつ病性障害の患者40名を2群に無作為に割り付け、積極的な気晴らしの実行が推奨されたCBT/Distraction群(n=20)と、傾聴を主とした精神療法/Control群(n=20)の比較検討が行われた。2要因混合分散分析の結果、交互作用が有意となり、Distraction群の時差における単純主効果が有意となった。よって気晴らしを中心としたCBTによって、ネガティヴな反すう思考と、抑うつ気分が軽減したことが示された。