著者
田坂 定智
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.66-71, 2015-04-30 (Released:2015-09-11)
参考文献数
18

急性呼吸不全の原因疾患は肺炎,肺血栓塞栓症,喘息発作など多様であるが,中でも急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome; ARDS)は重篤で難治性の病態として知られている.ARDSについては,2012年にベルリン定義が提唱され,①急性発症,②胸部画像上の両側性陰影,③左心不全のみで病態を説明できないこと,④低酸素血症の4項目で診断される.また陽圧換気下での低酸素血症の程度により軽症,中等症,重症に分類されるが,この重症度と予後との関連については明らかになっていない.ARDSでは,一回換気量を低く設定し,呼気終末陽圧により肺胞の虚脱・再開放を防ぐ肺保護戦略が提唱されている.また腹臥位換気や軽症例では非侵襲的陽圧換気(NPPV)の有効性が示されている.近年ARDS患者の生命予後が改善するに伴い,機能的予後が問題となっている.ARDSからの回復後も健康関連QOLは低く,運動機能や認知機能の低下もみられるため,理学療法の介入効果などについて検討が必要である.
著者
荒井 大輔 福永 興壱 藤井 健太郎 南宮 湖 原口 水葉 舩津 洋平 猶木 克彦 田坂 定智 別役 智子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.429-432, 2013 (Released:2014-02-10)
参考文献数
4

ポリミキシンB固定化線維カラムによる直接血液灌流療法(PMX-DHP)は近年グラム陰性菌感染症に伴う重症敗血症に対して有効性が期待される治療法である.今回我々はインフルエンザ罹患後に重症肺炎による急性呼吸不全とこれに伴う敗血性ショックの症例に対して人工呼吸器管理開始とともに早期にPMX-DHPによる治療を施行したところ治療開始後より著明に循環動態が改善し救命し得た症例を経験したのでこれを報告する.
著者
田坂 定智
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.1529-1535, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

ALI/ARDSは,肺内に集積した好中球から放出される活性酸素や蛋白分解酵素などにより血管内皮の透過性が亢進することで生じる非心原性肺水腫である.ALI/ARDSの病態形成にはサイトカインや脂質メディエーター,凝固因子など数多くの分子が関与している.ALI/ARDSではシャント形成や拡散障害のため重篤な低酸素血症が生じるほか,肺コンプライアンスの低下,肺血管抵抗の上昇などの生理学的変化がみられる.
著者
田坂 定智
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.1611-1616, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

好中球エラスターゼ阻害薬のシベレスタットは,急性肺損傷の治療薬として本邦で開発された.国内第III相試験では,酸素化の改善,人工呼吸器離脱率の改善などの有効性が証明されたが,より重症の患者を組み入れた海外の臨床試験では有用性が示されなかった.しかし国内の市販後臨床試験で人工呼吸器装着期間の短縮に加え,生存率の改善も認めたことから,少なくとも発症早期で障害臓器数が少ない症例に対しては有効と考えられる.