著者
綿貫 仁美 山﨑 薫 吉野 知子 建路 七織 山岸 美穂 林 一也 田宮 誠司
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.130, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】アントシアニン含有馬鈴しょ(有色馬鈴しょ)は, 色素に多くの有用な機能性が見出されているが, 調理の際に容易に分解し, 退色や変色をしてしまう。有色馬鈴しょを用いた調理後の色調は, 油調理では, 比較的色を保つことができるが, 水を介した調理で不安定となりやすい。そこで,有色馬鈴しょに対する水煮調理に用いる水の硬度差が, 有色馬鈴しょの色調にどのように影響するのか検討を行った。【方法】試料はキタムラサキ(KM), ノーザンルビー(NR), シャドークイーン(SQ)を用いた。5倍容の硫酸カルシウム(Ca)と硫酸マグネシウム(Mg)の混合溶液(Ca:Mgの重量比=2:1), およびそれぞれの単体溶液の各溶液に馬鈴しょ塊茎を4mm厚にスライスして投入, 加熱し, クリープメーターを用い加熱後の切片の最大荷重を測定した。また, 水煮処理後の切片の色調を色差計で測定し, L*, a*, b*値に示した。その後, 3%ギ酸を用いて切片より色素を抽出し, 抽出液の吸光度を測定し, アントシアニン残存率を比較した。【結果】水煮調理後の有色馬鈴しょ切片の最大荷重は, 3品種ともMg単体溶液ではいずれの硬度においても, Ca-Mg混合溶液の硬度0から硬度50と近似値を示した。一方でCa単体溶液では, 硬度が高いほど最大荷重が大きくなった。Ca-Mg混合溶液では, 硬度が高いほど最大荷重が増す傾向がみられ, Caの馬鈴しょ硬化作用が認められた。Ca-Mg混合溶液で, KM, NRでは硬度が高くなるに従いa*, b*値が小さくなる傾向があり, くすんだ色になっていった。SQでは, b*値が負に移動し, 青みが強くなった。アントシアニン残存率は, Ca-Mg混合溶液において, 3品種とも硬度が高くなるに従い, 残存率が減少する傾向を示した。硬化による切片の色素の溶出抑制には繋がらなかった。
著者
田宮 誠司 森 一幸 草原 典夫
出版者
長崎県総合農林試験場
雑誌
長崎県総合農林試験場研究報告 農業部門 (ISSN:03888398)
巻号頁・発行日
no.34, pp.91-115, 2008-03

「西海31号」は、アントシアニンを含み、肉色が赤色で、利用適性の高い品種の育成を目標として1999年秋に、高でん粉の「96016-8」を母、赤皮・赤肉で大いもの「長系115号」を父として交配し、交配種子を得た。2000年春作から交配種子を播種し選抜を開始し、2003年春作で「長系118号」の系統名で、収量性、病虫害抵抗性、系統適応性について検討し、2003年秋作から「西海31号」の地方番号を付し、さらに特性調査、加工試験などを実施し、その結果、2006年に品種登録の出願を行った。出芽期は春作・秋作とも「デジマ」より早く、初期生育も「デジマ」より早い。茎葉の黄変時期は春作・秋作ともに「デジマ」よりも早い。上いも数は春作・秋作ともに「デジマ」よりも多く、平均1個重は「デジマ」よりも小さい。上いも重は春作で「デジマ」の87%程度、秋作で72%と少ない。でん粉価は春作・秋作とも「デジマ」よりも高い。塊茎の皮色は赤、形は楕円〜長楕円で揃いが良い、目が浅く、生理障害が少ないため、外観が良い。肉色は淡赤で、赤い色が均一に分布する。蒸しいもの肉質は中〜やや粉で食味は中である。ポテトチップやフライドポテトなどの油加工に適する。