著者
上薗 薫 綿貫 仁美 長谷川 桜
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2022年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.99, 2022 (Released:2022-09-02)

【目的】灰干しとは、火山灰を用いた熟成乾燥加工法の一種で海産魚に対して用いられることが多い。研究者らは魚介類だけではなく、食肉、野菜、果物等に調理加工の下処理手法として活用検討し、加工食品への応用検討も行っている。魚介類では適度に水分を火山灰が吸収し、併せて魚臭やサメやエイではアンモニア臭も吸着し、食味が向上する。本研究では本特性に着目し、渋柿を試料とし、脱渋工程に火山灰干しが活用できるか検討することを目的とした。【方法】試料は平核無、刀根早生2品種とした。1)灰干しの手法は三宅島灰で行われている加工法を基本とした。灰干しに用いる火山灰は環境庁三宅支庁から許可された三宅島火山灰を使用した。2)各試料を火山灰に6時間、12時間、18時間、24時間浸漬処理を行い、その後、低温機械乾燥で干し柿とした。比較対照の脱渋方法としては、アルコール脱渋法を用いた。3)灰干しと灰干し未処理試料に対し、紫外吸収法で各試料の渋味判定と併せてD(+)-カテキンと比較し、カテキン含有量を判定した。また、フォリン・デニス(Folon-Denis)法も用い、含有タンニン定量を行った。【結果】灰干し処理後及び灰干し未処理(アルコール脱渋)後に低温乾燥を行った各々の試料のタンニン定量の結果は、脱渋処理の違いに差は認められず、いずれもほぼ同等のタンニン含有量を示した。よって、灰干しによる脱渋作用が示唆された。加えて、試料により灰干しのデメリットなる火山灰のにおいは、24時間火山灰浸漬処理を行っても火山灰独特のにおいが試料へうつらず、食味も比較対照手法品と同等の甘さが認められた。
著者
山﨑 薫 石神 優紀子 奈良 一寛 石丸 佳奈 綿貫 仁美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的】相模原市川尻財産区が所有する本沢梅園には3haの敷地に約1000本の梅の木が栽培されており,開花時には「本沢梅園まつり」が開催され,収穫期には「梅のもぎ採り」が体験できる。その梅を原料に城山湖里地里山観光振興協議会が開発した梅ジュース「梅ほ乃香」が製造されている。「梅ほ乃香」の飲用以外の活用法と新たな梅関連産品開発相談を受けていることから,本研究は地域に愛され,息の長い商品展開をできる産品提案を目的とした。 【方法】本沢梅園産白加賀を使用した「梅ほ乃香」を使用し,菓子を中心に試作提案品を18品に絞り込んだ。梅ゼリーに関しては,当該地域で開催された「しろやま得の市」に訪れた男女55名を対象に試食とアンケート調査を行った。加えて本学学生39名を対象に,順位法を用いて3種類の梅ゼリーの官能評価も行った。 【結果】ゼリーやグミ,飴等では爽やかな甘酸っぱさが感じられ,羊羹や大福等の和菓子では餡の甘さと梅の酸味の相性が大変好ましかった。マフィンやパウンドケーキ,生キャラメルの試作時にバターを使用した結果,梅の風味が薄くなったため,サラダ油に替え,最終調整を行った。しかし,乳製品でもチーズや牛乳,ヨーグルトとの相性は良いことが分かった。アンケート調査の結果は,回答者の9割以上が総合的に高評価を示した。食感に関しては,かたさに好みの差が認められたため,性別・年齢層を統一し,官能評価を行った結果,パネル間に有意差は認められなかった。よって,性別・年齢層に関係なく,提案品の食感の好みは個人差と判断した。現在,好評を得た梅ゼリーの商品化を目指し,味や食感,副原料の更なる検討,消費または賞味期限,販売価格の検討も進めている。
著者
綿貫 仁美 山﨑 薫 吉野 知子 建路 七織 山岸 美穂 林 一也 田宮 誠司
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.130, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】アントシアニン含有馬鈴しょ(有色馬鈴しょ)は, 色素に多くの有用な機能性が見出されているが, 調理の際に容易に分解し, 退色や変色をしてしまう。有色馬鈴しょを用いた調理後の色調は, 油調理では, 比較的色を保つことができるが, 水を介した調理で不安定となりやすい。そこで,有色馬鈴しょに対する水煮調理に用いる水の硬度差が, 有色馬鈴しょの色調にどのように影響するのか検討を行った。【方法】試料はキタムラサキ(KM), ノーザンルビー(NR), シャドークイーン(SQ)を用いた。5倍容の硫酸カルシウム(Ca)と硫酸マグネシウム(Mg)の混合溶液(Ca:Mgの重量比=2:1), およびそれぞれの単体溶液の各溶液に馬鈴しょ塊茎を4mm厚にスライスして投入, 加熱し, クリープメーターを用い加熱後の切片の最大荷重を測定した。また, 水煮処理後の切片の色調を色差計で測定し, L*, a*, b*値に示した。その後, 3%ギ酸を用いて切片より色素を抽出し, 抽出液の吸光度を測定し, アントシアニン残存率を比較した。【結果】水煮調理後の有色馬鈴しょ切片の最大荷重は, 3品種ともMg単体溶液ではいずれの硬度においても, Ca-Mg混合溶液の硬度0から硬度50と近似値を示した。一方でCa単体溶液では, 硬度が高いほど最大荷重が大きくなった。Ca-Mg混合溶液では, 硬度が高いほど最大荷重が増す傾向がみられ, Caの馬鈴しょ硬化作用が認められた。Ca-Mg混合溶液で, KM, NRでは硬度が高くなるに従いa*, b*値が小さくなる傾向があり, くすんだ色になっていった。SQでは, b*値が負に移動し, 青みが強くなった。アントシアニン残存率は, Ca-Mg混合溶液において, 3品種とも硬度が高くなるに従い, 残存率が減少する傾向を示した。硬化による切片の色素の溶出抑制には繋がらなかった。
著者
石神 優紀子 山﨑 薫 奈良 一寛 南澤 瞳 綿貫 仁美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成28年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.195, 2016 (Released:2016-08-28)

【目的】神奈川県相模原市緑区城山地域は境川の上流域に位置し,当地域では季節の自然と触れ合えるイベントの一つとして「小松コスモスまつり」が行われており,地場産物販売とコスモスの摘み取りが人気を博している。地域活性も兼ね,コスモスを使用した産品開発相談を同地域より受けたことから,本研究では新たな地場産物販売品の検討を行うため,食用コスモスの特性を捉えた後,利用法含め,地元の方々に受け入れて頂ける産品提案を目的とした。 【方法】食用コスモスが入手可能となる旬期までは同じキク科である食用菊等を代用し,花の特徴やイメージを掴み,コスモスを使用した産品開発アイディアに繋げることも行った。次いで,食用コスモスの花弁(濃ピンク,桃色,白,黄色)を用い,試作を行い,最終提案として7品に絞り込んだ。また,平成27年度「小松コスモスまつり」スタッフを対象に花弁色が濃ピンク色の食用コスモスでソースを作成したブラマンジェの試食会を行い,その他の試作品については写真を用い,アンケート調査も実施した。 【結果】食用花の花弁を利用したシロップ漬けは花種によりシロップ液が青臭く,渋みが目立った。しかし,食用コスモスで作成したシロップは青臭さや渋みが認められず,特に濃ピンク花弁使用シロップ液を煮詰め作成したソースは色鮮やかで凡庸性の高いものに仕上がった。男性20名,女性13名の総計33名から得たアンケート調査結果は試食結果含め,総体的に高評価を得ることができ,クラッシュゼリーやピクルス等,いずれも商品化を進めて欲しいとの結果を得た。食用コスモスの調理・加工特性を捉えることにより,更なる産品提案や家庭での利用可能なレシピ提案も計画している。