著者
堀本 泰介 前田 健 川口 寧 杉井 俊二 土屋 耕太郎 五藤 秀男 田島 朋子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

ブタ用多価組み換えウイルス生ワクチンを開発するためには、まずベクターウイルスの選択を検討しなければならない。この目的に合うベクターウイルスとしては、(1)ブタに感染するが病原性の弱いもの、あるいは確実に弱毒化されているもの、(2)比較的サイズの大きな複数の外来性の遺伝子の挿入が可能なもの、(3)外来抗原を長期間発現可能な持続感染性のもの、が理想的であると考えられる。本研究では、この条件に合うものとしてブタサイトメガロウイルス(Porcine Cytomegalovirus : PCMV)のベクター化を考えた。その基礎知見の獲得のため、PCMVのゲノム構造および主要蛋白質の性状解析を実施し、以下の研究成果を得た。(1)PCMVゲノムDNAの制限酵素切断プロファイルを明かにし、切断断片のクローニングに成功した。(2)ヘルペスウイルスの主要遺伝子である主要ゲノムの転写複製に必須であるDNAポリメラーゼ遺伝子、粒子形成に必須であるカプシッド蛋白遺伝子、細胞レセプターへの結合に関与する糖蛋白質gB遺伝子、およびこれら周辺の遺伝子クラスターの同定、塩基配列を決定した。(3)これら主要遺伝子の分子系統解析の結果、PCMVはベータヘルペスウイルス亜科、特にヒトヘルペスウイルス6型および7型と非常に近縁なウイルスであることを発見した。(4)いくつかの必須遺伝子の発現実験により蛋白質の分子構造解析、あるいは免疫性状などについて検討した。(5)PCMV感染の有無を判定する高感度で特異性の高いMCP遺伝子配列に基づくPCR法を確立した。さらに、濾紙乾燥血液をこの方法に応用した。これらの成果は、細胞性・液性免疫の誘導や組み換えワクチン作製に関する基礎的な情報を提供するのみならず、今後、獣医畜産学および豚の臓器を利用した異種移植に関する臨床医学の発展に大きく貢献するものと考えられる。
著者
川端 寛樹 田島 朋子 田島 朋子
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1)国内分離のライム病病原体であるボレリア・ガリニゲノムからマダニ唾液腺へのボレリア接着因子として、機能未同定の遺伝子を複数検出した。表層抗原であるBB0616ホモログは、マダニ唾液腺への接着に関与していると思われる。一方、その機能ドメイン、接着リガンドなどは未同定である。2)国内分離ボレリアのマダニ中腸への接着性についても検討を行った。ボレリアの中腸組織への接着は、未吸血マダニ中腸組織で見出された。また、接着阻害実験に用いた細胞間マトリックスの一部は、その接着を阻害した。他方、これまで知られているglycosaminoglycansへの結合能は本ボレリアでは見出されなかったが、ボレリアのマダニ中腸組織への結合を阻害した。今後、これらボレリアの接着因子の同定を試みている。