著者
金森 弘樹 田中 浩 田戸 裕之 藤井 猛 澤田 誠吾 黒崎 敏文 大井 徹
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.57-64, 2008 (Released:2008-07-16)
参考文献数
7
被引用文献数
10

西中国地域のツキノワグマUrsus thibetanusの「特定鳥獣保護管理計画」は,第一期(2003~2006年度)と第二期(2007~2011年度)とも,広島県,島根県および山口県の三県で共通の指針の下に策定された.生息頭数調査は,個体の捕獲による標識再捕獲法を用いて2回実施され,1999年当時は約480頭,また2005年当時は約520頭と推定された.有害捕獲は1960年代から始まったが,2000年代に入ると年平均100頭以上へと急増した.とくに,大量出没した2004年には239頭,2006年には205頭にも達した.1996~1999年に比べて2000~2006年は,高齢個体も多数捕獲される傾向にあったが,捕獲個体の性比には変化はなかった.三県の放獣率や除去頭数の差は,地域によって異なったが,これは地域住民や行政の意識の違いに起因すると考えられた.放獣個体の再捕獲率は低かったが,学習放獣による奥地への定着や被害の再発防止効果は十分に検証できなかった.今後は,個体群のモニタリングの継続,錯誤捕獲の減少,地域住民への普及啓発の努力などがいっそう必要である.
著者
田戸 裕之 細井 栄嗣 岡本 智伸 小泉 透
出版者
山口県農業試験場
巻号頁・発行日
no.57, pp.15-21, 2009 (Released:2011-07-26)

1.作物ほ場へのシカの侵入を防ぎ、農作物被害を防止するための装置「改良型テキサスゲート」を開発し、現地での侵入防止効果を確認した。2.シカの侵入防止効果が高い資材は、グレーチング裏(桟)と鉄管ロープであり、効果がなかったものは波板トタンであった。3.シカが通行を忌避する理由は、グレーチング裏(桟)では蹄の間にグレーチングが挟まることを嫌うためであり、鉄管ロープでは鉄管の移動によって足が挟まることを嫌うためと考えられる。4.改良型テキサスゲートにおける鉄管の間隔は80mm程度、高さ300mm以上が必要である。5.現地試験の結果、改良型テキサスゲートのシカ侵入防止効果は高いと判断した。