著者
浅利 裕伸 池田 敬 岩崎 亘典 岩下 明生 江成 はるか 江成 広斗 奥田 加奈 加藤 卓也 小池 伸介 小寺 祐二 小林 喬子 佐々木 浩 姜 兆文 杉浦 義文 關 義和 竹内 正彦 立木 靖之 田中 浩 辻 大和 中西 希 平田 滋樹 藤井 猛 村上 隆広 山﨑 文晶 山田 雄作 亘 悠哉
出版者
京都大学学術出版会
巻号頁・発行日
2015-03-25

希少種の保護や過増加した在来種・外来種の対策など、野生動物をめぐるさまざまな課題に応えるフィールド調査法。各動物の食性や個体数に関する既存研究をまとめ、地図の読み方やフィールド機材の使い方、糞や足跡をはじめとする動物の痕跡の識別法を具体的に示し、得られた情報から食性や個体数、生息地を評価する方法を体系的に解説する。
著者
大井 徹 中下 留美子 藤田 昌弘 菅井 強司 藤井 猛
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.1-13, 2012 (Released:2012-07-18)
参考文献数
38
被引用文献数
4

これまで明らかではなかった西中国山地のツキノワグマの食性について,山中で採取した糞と人里周辺で有害捕獲された個体の胃内容物を基に,食物品目毎に出現率,偏在度指数,相対重要度を算出し,季節変化と年変化を分析した.その結果,春には植物の栄養器官中心,夏にはしょう果中心,秋には堅果中心へと季節変化するという本州中部以北のツキノワグマの食性と類似の傾向がみられた.ツキノワグマが越冬するために重要な秋の食物においては,コナラ属果実,ミズキ属果実が,相対重要度が他のものより顕著に高く,かつその年変動の程度が小さいため,通常,ツキノワグマが安定的に依存している食物と考えられた.一方,ツキノワグマの大量出没時には,この二種類の果実の相対重要度が顕著に低くなるという特徴が見られ,これらの樹種の結実程度がクマの人里への出没に大きく影響している可能性が示唆された.また,人里に出没したクマの食物では,これまで指摘されてきたカキ,クリの果実,農畜産物以外に,草本の葉など植物の栄養器官の相対重要度が高いことが特徴的であった.
著者
金森 弘樹 田中 浩 田戸 裕之 藤井 猛 澤田 誠吾 黒崎 敏文 大井 徹
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.57-64, 2008 (Released:2008-07-16)
参考文献数
7
被引用文献数
10

西中国地域のツキノワグマUrsus thibetanusの「特定鳥獣保護管理計画」は,第一期(2003~2006年度)と第二期(2007~2011年度)とも,広島県,島根県および山口県の三県で共通の指針の下に策定された.生息頭数調査は,個体の捕獲による標識再捕獲法を用いて2回実施され,1999年当時は約480頭,また2005年当時は約520頭と推定された.有害捕獲は1960年代から始まったが,2000年代に入ると年平均100頭以上へと急増した.とくに,大量出没した2004年には239頭,2006年には205頭にも達した.1996~1999年に比べて2000~2006年は,高齢個体も多数捕獲される傾向にあったが,捕獲個体の性比には変化はなかった.三県の放獣率や除去頭数の差は,地域によって異なったが,これは地域住民や行政の意識の違いに起因すると考えられた.放獣個体の再捕獲率は低かったが,学習放獣による奥地への定着や被害の再発防止効果は十分に検証できなかった.今後は,個体群のモニタリングの継続,錯誤捕獲の減少,地域住民への普及啓発の努力などがいっそう必要である.