著者
飯島 洋一 田沢 光正 宮沢 正人 長田 斉 稲葉 大輔 片山 剛
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.43-50, 1985 (Released:2010-10-27)
参考文献数
24
被引用文献数
1

フッ素洗口ならびに飲料水由来のフッ素が, 乳歯エナメル質へのフッ素取り込み量にどのような影響を与えるかを健全脱落乳歯135歯を用いてフッ素洗口経験年数別あるいは飲料水中フッ素濃度別に検討した。フッ素洗口 (F: 500ppm, pH6.0, 5回/週) を経験した乳歯エナメル質表層1μmにおけるフッ素濃度は, 洗口経験年数が1年から4年に増加するに従い4,300ppmから7,300ppmへと増大し, 非洗口群 (飲料水中フッ素濃度0.1ppm未満) に比較して統計学的に有意に高いフッ素濃度であった。フッ素洗口経験年数を重ねることによるフッ素濃度の上昇傾向は, 1μm層に限られ, 5μm層では対照群のフッ素濃度に比較して統計学的に有意の差は認められなかった。一方, 飲料水由来のフッ素の影響を受けたと思われる乳歯エナメル質フッ素濃度は, 飲料水中のフッ素濃度が1.0ppm以上の場合, 表層1μmのフッ素濃度が10,000ppm前後と著しく高く, 内層40μmにおいても対照群に比較して明らかに高いフッ素濃度を示していた。また1.0ppm以上の群は5μm層以上40μm層にいたるすべての層で対照群あるいは洗口群に比較して統計学的に有意に高いフッ素濃度であった。これに対し, フッ素濃度0.3ppmの群は5μm層では対照群に比較して統計学的に有意の差を認めることが出来なかった。1.0ppm以上の群で表層5μmから内層40μmにいたるまで対照群に比較して一定の高い濃度勾配を示したことは, 乳歯の萌出前・萌出後に獲得されるフッ素の影響によるものと思われる。