著者
松久保 隆 石川 哲之 真木 吉信 高江洲 義矩 北條 祥子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.213-216, 1982-06-10 (Released:2009-11-16)
参考文献数
9
被引用文献数
2

食品の齲蝕誘発能は, 食品の齲蝕誘発病に与える基質としての性質と, その基質としての性質の作用時間とで評価することが, 可能であることを著者らは提唱してきた。本報では, 食品の物理的性状によって影響されると考えられる食品の作用時間としての性質を測定することをその目的とした。食品の作用時間としての性質は, 摂取中の作用時間と嚥下後の作用時間とに分けられ, 前者は, 食品単位重量あたりの摂取時間で, 後者は, 食品の付着性を23種の食品について測定し, その結果から, 食品の物理的性状よりその齲蝕誘発能を評価する方法について次のような考察を得た。1) 従来の報告で食品の作用時間としての性質が正しく評価されていない種類の食品についても, 食品の作用時間としての性質を二つに分けて行なう本研究方法によって, その評価が可能であることが明らかとなった。2) 本研究方法は, 従来の方法と比較して簡単であり, 被験者間の個人差もみられない。3) レオメーターによる食品の物理的性状の測定は, 齲蝕誘発能の評価のための指標として有用であることが, 示唆された。
著者
深井 穫博 眞木 吉信 高江洲 義矩
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.129-136, 1996-04-30 (Released:2017-10-14)
参考文献数
36
被引用文献数
6

保健行動は生涯発達の中で形成・獲得されるものであるが,成人期から老人期にかけての口腔保健行動が,社会的な影響を受けてどのように修正・形成・定着していくかについては必ずしも明らかではない。そこで本研究は,関東地域在住の20歳から50歳代の男女673名を対象に,成人のライフスタイルおよび健康習慣とその年齢特性について検討した。その結果,今回の調査では以下の結論を得た。25〜34歳,35〜44歳の年齢層は生活のゆとりおよびソーシャルサポートが少なく,また職場環境に関しても,「残業」および「ストレスを感じる」者が中高年層に較べて多かった。一方,「仕事の満足感がある」者では逆に中高年層ほど仕事にやりがいを感じていた。ただし主観的健康状態は,どの年齢層でも約60〜70%の者が「健康である」と回答しており,年齢層による差は見られなかった。健康習慣では「毎日の朝食摂取」および「定期健康診断受診」に関して,明らかに中高年層が若年成人に較べて高い割合であった。また,「喫煙」,「飲酒」,「運動」,「体重」,「睡眠」,「間食」,「ストレス」に関する項目では,その健康習慣を持っている者は,どの年齢層でも約10〜30%の範囲であった。これら9項目の健康習慣について各項目で「あり」と回答した場合を1点としその合計得点で評価した結果,24歳以下の群で2.1±1.9であったのに対し55〜59歳の群では3.0±2.1であり,高い年齢層ほど健康習慣得点は増加していた(p<0.05)。
著者
瀧口 徹 深井 穫博 青山 旬 安藤 雄一 高江洲 義矩
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.524-536, 2005-10-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
14

わが国における戦後の歯科医師需給施策は, 1960年代後半から70年代にかけて歯科大学(歯学部)の急増策で始まったが, 1980年後半から一転して抑制策に転じた.しかし入学定員の20%削減, 国家試験の改善だけでは十分に功を奏さないことが明らかである.そこで本研究においては, 1982年から2002年までの20年間の人口10万人当たりの歯科医師数(歯科医師10万比)の都道府県較差に着目して, 増減の源である歯科大学(歯学部)の設置主体と社会経済的および地理的特性のかかわりを明らかにすることを目的とした.要因分析にはGLIM法: 一般化線形モデル法を用い, 将来予測は回帰式の外挿法によった.さらにこれらの結果に基づき, 歯科医師需給調整施策について検討した.20年間の歯科医師10万比の推移は, 全都道府県で相関係数が0.96以上で明確な直線的増加傾向を示し, かつ地域較差は縮減していない.GLIM分析で国公立大の存在がその都道府県の歯科医師10万比の急増に最も関連が強く, 国公立大は設置都道府県に対して新規参入歯科医師への強い吸引力を示した.しかし, 近隣都道府県への波及効果は予想に反して有意ではなかった.また供給過剰の閾値を歯科医師10万比80人とすると, 20年後に5割強の都道府県が供給過剰になると予測され, 需給対策には既存の全国的施策に加えて歯科医師臨床研修地の分散化が有効と考えられた.
著者
吉野 浩一 深井 穫博 松久保 隆 高江洲 義矩
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.92-97, 2002-04-30 (Released:2017-12-15)
参考文献数
30

喫煙と歯周病や口腔がんとの関連はよく知られているが,生活習慣と関連が深い歯の喪失についての研究はきわめて少ない。本調査は,喫煙習慣および口腔保健行動と歯の喪失との関連について5年間のコホート調査を行うことを目的とした。対象は某銀行の従業員の男性129人とし, 1992年から5年間追跡調査した。その結果,20〜39歳群の喫煙者は一人平均0.40歯喪失歯が増加し,非喫煙者の0.13歯に比べて多い値であった(p<0.01)。40〜59歳群では,喫煙者は0.75歯,非喫煙者は0.51歯と多い傾向を示したが有意な差はみられなかった。口腔保健行動と歯の喪失との関連をみると,40〜59歳群ではかかりつけの歯科医院のある者に歯の喪失する者の割合が高かった(p<0.05)。さらに,単純ロジスティック回帰分析を行った結果,20〜39歳群では喫煙習慣が歯の喪失に有意な関連を示し(p<0.001),オッズ比は8.08(信頼区間1.83〜35.72)であった。以上の結果から,20〜39歳群の若年成人では,喫煙習慣が歯の喪失に強く関連していることおよびコホート調査の重要性が示された。
著者
鏡 宣昭 高江洲 義矩
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.31-39, 2000-01-30 (Released:2017-12-08)
参考文献数
31

学校歯科保健は,児童生徒が歯・口腔の健康に関する知識・習慣・態度への変容を期待して行われる保健活動の1つで,養護教諭は常にその要として「保健教育」と「保健管理」に携わってきた。また,平成7年度に学校保健法の改正が行われ,健康診断票や健診内容は大幅に変わった。これは,従来からの検診を中心とした健康管理から,本来求められていた健康教育を積極的に取り入れるものとして注目されている。そこで,千葉市内の養護教諭171名を対象に,児童生徒への口腔保健教育の進め方や学校健診の評価など10項目について,Delphi法によるアンケート調査を行った。その結果,(1)健診時の器具の消毒についての回答では,公的機関が診査器具を一括管理し必要な時期に必要な量を配送してもらうことを希望するものが1回目は51.8%であったが,2回目以降は71.5,72.8%と回を追うごとに回答率が上昇した。(2)学校現場で行える事後措置としては,「保健だより」などを利用した「家庭との連絡」と回答したものに集中して72.3〜83.1%であった。(3)学校でのフッ化物洗口については,「必要ない」と回答しているものが50.4〜57.8%で,「実施が望ましい」は12.7〜17.7%あった。Delphi法の特徴の1つである収束傾向は,「新しい健診法の全体的評価」,「要観察歯の導入」,「年間の健康診断の回数」,「診査器具の消毒」,「学校保健委員会の活動」および「学校歯科医とかかりつけの歯科医との関係」の設問にみられたが,特に診査器具の消毒についての「業者に依託する」応答に顕著に示された。
著者
山中 すみへ 太田 薫 野村 登志夫 高江洲 義矩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.186-194, 1999-04-30
被引用文献数
6

水銀やクロムなど歯科用金属によるアレルギー発現を調べるための検査法として,パッチテストが一般的であるが,刺激性と感作性の判別は容易ではない。本論文では,モルモットを用いて,歯科用金属の皮膚刺激性および感作性を評価した。まず皮内注射により皮膚刺激性を調べたところ,水銀が最も刺激性が強く,次いで白金や銅,クロムが強く,銀やニッケルは比較的刺激性が弱かった。また感作性試験では,感作陽性対照物質のDNCBや銀,スズ,クロムは,Buehler法よりもMaximization法で鋭敏な感作性を示したが,水銀はBuehler法でのみ感作陽性を認め,試験法による差異がみられた。貼付惹起の際に,アルミニウム製Finn Chamberを用いて水銀や白金の感作性試験を行うと,アルミニウムとの反応で刺激性が増強されるので不適当であった。さらに銀とパラジウム,クロムとニッケルの間では交叉感作性が認められたが,スズとパラジウム,水銀と金,水銀と白金との間では交叉性はみられなかった。水銀を連続繰り返し惹起すると,陽性率が上昇したことから,水銀との繰り返し接触で感作性が強くなることが考えられた。しかし惹起の間隔が長くなると,陽性率の低下傾向から水銀の感作性は持続的ではないことを示した。金属の皮膚刺激性および感作性を評価し,水銀とクロムは「中等度」,銀とスズは「弱」の感作性物質に分類できた。
著者
鏡 宣昭 高江洲 義矩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.31-39, 2000-01-30
被引用文献数
2

学校歯科保健は,児童生徒が歯・口腔の健康に関する知識・習慣・態度への変容を期待して行われる保健活動の1つで,養護教諭は常にその要として「保健教育」と「保健管理」に携わってきた。また,平成7年度に学校保健法の改正が行われ,健康診断票や健診内容は大幅に変わった。これは,従来からの検診を中心とした健康管理から,本来求められていた健康教育を積極的に取り入れるものとして注目されている。そこで,千葉市内の養護教諭171名を対象に,児童生徒への口腔保健教育の進め方や学校健診の評価など10項目について,Delphi法によるアンケート調査を行った。その結果,(1)健診時の器具の消毒についての回答では,公的機関が診査器具を一括管理し必要な時期に必要な量を配送してもらうことを希望するものが1回目は51.8%であったが,2回目以降は71.5,72.8%と回を追うごとに回答率が上昇した。(2)学校現場で行える事後措置としては,「保健だより」などを利用した「家庭との連絡」と回答したものに集中して72.3〜83.1%であった。(3)学校でのフッ化物洗口については,「必要ない」と回答しているものが50.4〜57.8%で,「実施が望ましい」は12.7〜17.7%あった。Delphi法の特徴の1つである収束傾向は,「新しい健診法の全体的評価」,「要観察歯の導入」,「年間の健康診断の回数」,「診査器具の消毒」,「学校保健委員会の活動」および「学校歯科医とかかりつけの歯科医との関係」の設問にみられたが,特に診査器具の消毒についての「業者に依託する」応答に顕著に示された。
著者
深井 穫博 眞木 吉信 高江洲 義矩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.129-136, 1996-04-30
被引用文献数
12

保健行動は生涯発達の中で形成・獲得されるものであるが,成人期から老人期にかけての口腔保健行動が,社会的な影響を受けてどのように修正・形成・定着していくかについては必ずしも明らかではない。そこで本研究は,関東地域在住の20歳から50歳代の男女673名を対象に,成人のライフスタイルおよび健康習慣とその年齢特性について検討した。その結果,今回の調査では以下の結論を得た。25〜34歳,35〜44歳の年齢層は生活のゆとりおよびソーシャルサポートが少なく,また職場環境に関しても,「残業」および「ストレスを感じる」者が中高年層に較べて多かった。一方,「仕事の満足感がある」者では逆に中高年層ほど仕事にやりがいを感じていた。ただし主観的健康状態は,どの年齢層でも約60〜70%の者が「健康である」と回答しており,年齢層による差は見られなかった。健康習慣では「毎日の朝食摂取」および「定期健康診断受診」に関して,明らかに中高年層が若年成人に較べて高い割合であった。また,「喫煙」,「飲酒」,「運動」,「体重」,「睡眠」,「間食」,「ストレス」に関する項目では,その健康習慣を持っている者は,どの年齢層でも約10〜30%の範囲であった。これら9項目の健康習慣について各項目で「あり」と回答した場合を1点としその合計得点で評価した結果,24歳以下の群で2.1±1.9であったのに対し55〜59歳の群では3.0±2.1であり,高い年齢層ほど健康習慣得点は増加していた(p<0.05)。
著者
深井 穫博 眞木 吉信 高江洲 義矩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.89-97, 1997-01-30
被引用文献数
12 2

関東近県の企業に勤務する20歳から50歳代の男性438名,女性115名の計553名を対象に質問紙調査を行い,職種と成人の口腔保健行動との関連について検討した。口腔清掃行動では昼食後と就寝前の歯みがきおよびフッ化物配合歯磨剤の使用頻度で職種間に違いがみられた。歯みがきでは,事務職の「昼食後」33.8%,「就寝前」77.9%が最も高い割合であった。フッ化物配合歯磨剤の使用では作業職および専門職がおのおの23.8%,23.3%と他の職種より高い割合であった。歯科受診・受療行動では,歯科受診頻度,かかりつけの歯科医師の有無,定期歯科健診受診の有無の3項目とも職種間に違いがみられた。過去1年間に歯科受診したことのない者の割合は販売職の61.1%が最も高く,他の職種は20〜40%であった。かかりつけの歯科医師のある者は,販売職が36.9%であったのに対し,他の職種では50%以上の割合であった。定期歯科健診の受診では販売職が最も低く2.3%に過ぎなかったのに対し,管理職では30.5%であった。また,ストレスの自覚と口腔の外観に対する満足感には有意の関連が認められた(p<0.05)が,ストレスと今回取り上げ口腔保健行動との間には,関連がみられなかった。一方,仕事の満足感と関連がみられた項目は,噛み具合および口腔の外観に対する満足感,歯間ブラシの使用頻度,過去1年間の歯科受診,定期歯科健診受診の有無であった。
著者
金 永鏑 古賀 寛 松久保 隆 高江洲 義矩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.8-19, 1998-01-30
被引用文献数
2

本研究は多様な無機成分を含有している竹塩を配合したNa_2PO_3F/竹塩配合歯磨剤のenamelへのフッ化物取り込み,酸抵抗性に与える影響を検討したものである。ウシの前歯enamelに実験群歯磨剤として,研磨剤のみを含む歯磨剤(対照群),MFP配合歯磨剤(F群),MFP/竹塩配合歯磨剤(FB群),MFP/竹塩/VE(vitamin-E)配合歯磨剤(FBV群),MFP/食塩/VE(vitamin-E)配合歯磨剤(FSV群)を反応させ,フッ化物取り込み,酸抵抗性,SEM観察,XMAとX線回折分析による歯の表面分析を行った。その結果,フッ化物取り込み量は対照群と比較して,F群とFSV群では第1層で有意差が認められたが,竹塩配合歯磨剤のFB群とFBV群は第3層まで有意に高かった(p<0.05)。酸抵抗性実験では,F群では6時間まで,FB群およびFBV群では12時間までCa溶出抑制効果が認められた(p<0.05)。乳酸緩衝液で3時間作用後のenamel表面のSEM観察では対照群,F群およびFSV群ではenamel prismのheadに脱灰像が観察されたが,FB群とFBV群にはenamel prismの脱灰がみられず,微細な粒子の沈着による比較的滑沢な表面が観察された。歯の表面全体の広範な沈着物はHApおよびその前駆物質であると確認されたが,さらにFBとFBV群では,その他にK_5P_3O_10,KCa(PO_3)3,Ca_4O(PO_4)_2などの化合物が検出された。以上のことからMFP/竹塩配合歯磨剤とMFP/竹塩/VE配合歯磨剤は,MFP配合歯磨剤およびMFP/食塩/VE配合歯磨剤と比較して,in vitroでのフッ化物取り込み量と酸抵抗性試験成績において有意に高いことが認められた。
著者
松久保 隆 大川 由一 田崎 雅和 高江洲 義矩 山本 秀樹 坂田 三弥
出版者
東京歯科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、食品の咀嚼性の評価方法や個人の咀嚼性を解析するための指標食品を得ることを目的としている。今期の課題は、平成2年度に得られた結果をふまえて食品咀嚼中の下顎運動解析によって得られる運動速度の各咀嚼サイクルが、食品の咀嚼中の状態変化をとらえることが可能かどうか、各咀嚼サイクルの出現頻度と被験者の咀嚼指数および歯牙接触面積とにどのような関係があるかを検討することを研究目的とした。顎関節に異常がない成人6名を被験者とした。被験食品は、蒲鉾、フランスパン、スルメ、もち、ガムミ-キャンディ-、キャラメル、ニンジンおよびガムベ-スとした。被験食品は一口大とした。下顎運動はサホン・ビジトレナ-MODEL3を用い、前頭面における下顎切歯点の軌跡を記録し、下顎運動速度の各咀嚼サイクルの開口から閉口までを1単位として分解し、パタ-ン分類を行なった。被験者の中心咬合位での歯牙接触面積ならびに石原の咀嚼指数の測定を行なった。下顎運動速度の各咀嚼サイクルは、被験食品で6種のパタ-ンに分類できた。すなわち、Uはキャラメル摂取の最初に認められるパタ-ンでとくに開・閉口時に食品の影響を著しく受けるもの、Vは開・閉口時に速度が遅くなるパタ-ン、Wは閉口時に速度が遅くなるパタ-ン、Yは開口時に速度が遅くなるパタ-ン、Xは人参の摂取初期に認められるパタ-ン、Zは開・閉口時ともに速度に影響がみられないパタ-ンであった。各パタ-ンの出現頻度と咀嚼指数および接触面積との関係を解析した結果、咀嚼性が高いと考えられる人は、硬い食品で、食品の影響をほとんど受けないパタ-ンZおよび閉口時に影響をうけるパタ-ンWが多く、閉口および閉口時に影響を受けているパタ-ンVが少ないと考えられた。このパタ-ン解析は、咀嚼中の食品の物性変化を表わすものとして重要な情報と考えられ、個人の咀嚼能力を示す指標食品の選択にも重要な歯科保健情報の一つと考えられた。
著者
長谷川 紘司 加藤 伊八 池田 克己 高江洲 義矩 末高 武彦 加藤 熈
出版者
昭和大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1993

歯周炎予防プログラム作成に当たり最も重要な基礎的知見はその自然史である。岡本、長谷川は各々異なる特性集団にて、同一個体の経年的調査を行った。長谷川の調査ではポケットの変化よりもアタッチメントレベルの変化が大きく、年齢とともに増加し、特に25才以降で顕著であった。またポケットが深い方が浅い方よりもアッタチメントロスがおきやすかった。岡本の調査では、歯周病の進行は個人差、部位差が大きく、高齢者ほど進行が顕著であった。また歯肉炎から歯周炎への変遷を明解にし、若年者からの予防対策が必要である。この観点から、堀内、高江洲は若年者における歯周病変の実態とコホート調査および予防処置の効果について検索した。同時にCPITNの問題点の指摘も行われるとともに、被予防処置群では全体的には指標の改善が見られたことが報告されている。末高、加藤熈は成人の多数集団についてCPITNの調査を行った。その結果、年齢階級が高まるにつれて最大値が高くなり、さらに口腔清掃状態との関連についてその強い相関を報告している。高齢者における歯科的所見について中垣はケースコントロールスタディーで面接法にて報告している。その結果、残存歯は前歯部が、欠損歯は臼歯部に多く、8020達成者においては、若い時期における甘味に対する依存度や間食傾向がその残存歯数に大きく影響していることが示された。岩山は咬合回復可能年齢を検討した結果、50才前半で治療を行うことが安定した臼歯部の咬合支持を維持するのに必要だと示唆した。歯科保健状況については地域差が極めて大きい。これについては加藤伊八が高齢化地区でかつ常勤歯科医師の存在しない離島にて調査し、残存歯が歯科疾患実態調査と比べ著しく悪いことを報告し、現在は口腔衛生指導実施による改善程度について検索している。池田は歯周炎患者の生活習慣・環境と病変の進行程度との関連を調査し、環境要因としては、居住地域、職業、喫煙、飲酒、歯磨き習慣や歯磨き時の出血、宿主要因としては性別、全身健康総合判定などが、歯周病の進展程度と強く関連していることを示唆している。集団保健指導のあり方は、個別指導と異なる点が多くその有効性からの検討が渡邊により実施された。その結果、歯科保健指導は毎月一回、三回行うことが有効であった。宮武は歯科疾患実態調査、国民生活基礎調査、患者調査などの結果を分析し、有所見者率が高率であるにも関わらず、有訴者率が低率であることを指摘した。しかし近年歯周病の有訴者のうち、受療者は43.1%(1986)から59.0%(1992)と増加していた。これは歯科保健事業の拡大の結果とも考えられ、今後さらに進展が期待される。歯周病に対する行動科学的状況について、岩本は自己記入式質問紙(デンタルチェッカー(R))の結果と歯周病の状況に高い関連性を認め、また集団への利用により歯周病の自己確認や予防プログラムの確立への可能性を示唆した。以上の結果より、歯周病予防を行う上では比較的若年者を対象とした方が予防効果が高いと思われた。また歯周病の自己認識も乏しいことから集団を対象とした質問用紙などの利用により、疾病の自己認識を高めていくことも予防を行う上で重要であると思われる。
著者
深井 穫博 眞木 吉信 高江洲 義矩
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.676-682, 1996-10-30
被引用文献数
11

口腔保健行動は生涯発達のなかで獲得・修正・定着するものであるが,成人期以降の口腔保健行動については不明な点が多い。本研究では質問紙調査を行ない,成人の口腔保健行動の年齢特性について検討した。調査対象は,関東地方の7企業に勤務する20歳から50歳代の男性468名,女性205名の計673名である。調査内容は,(1)口腔保健に関する態度,(2)口腔保健用語の認知度,(3)口腔の健康に関する自己評価,(4)口腔保健行動に関するものである。「歯・口に関する会話」,「新聞の健康欄への注目度」「歯・口を鏡でみる頻度」の質問項目から,自己の口腔内への関心度は中高年層ほど高まることが示された。しかし,この関心度は知識等の情報収集行動には反映されるが,自己の口腔内を直接観察する行動には結びついていないと思われた。口腔保健用語の認知では,全年齢層にわたり50%以上の者が「知っている」と回答した用語は「歯石」,「歯垢」,「歯周病」であり,成人期によくみられる歯周病に関連したものであった。口腔の健康状態に関する自己評価では「外観や噛み具合に満足している」と回答した者が,24歳以下の年齢層で10〜20%に対し,55歳以上の年齢層では20〜30%であった。昼食後・就寝前の歯みがき習慣の有無といった口腔清掃行動では中高年層に比べて若年齢層の方が定着していた。また「かかりつけの歯科医師の有無」,「定期歯科健診の受診」についての受診・受療行動では逆に若年齢層に比べて中高年齢層が高い割合を示していた。