著者
田中 景子 飯島 洋一 高木 興氏
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.215-221, 1999-04-30 (Released:2017-11-11)
参考文献数
18
被引用文献数
1

エナメル質ならびに象牙質の脱灰病変に,重炭酸イオンを作用させることによって,再石灰化の過程にどのような影響を及ぼすかをin vitroで検討した。試料には50歳代の健全小臼歯を用いた。脱灰は0.1M乳酸緩衝液(Ca 3.0mM, P 1.8mM, pH 5.0)で7日間行い,続いて再石灰化溶液(Ca 3.0mM, P 1.8mM, F 2ppm,pH 7.0)に7日間浸漬した。この再石灰化期間中,8時間ごとに再石灰化溶液から取り出し,30分間,4種の異なった重炭酸イオン溶液(0.0, 0.5, 5.0, 5O.OmM)に浸漬した。薄切平行切片を作成し,マイクロラジオグラフによってミネラルの沈着を評価した。エナメル質では重炭酸イオン濃度の増加に伴って,病変内部に再石灰化が発現する傾向が認められたが,統計学的な有意差はなかった(p=0.09)。一方,象牙質では表層に限局した再石灰化が認められた。特に5.0mM群では著明であったが,エナメル質と同様,統計学的な有意差は認められなかった(p=0.08)。エナメル質と象牙質で異なる再石灰化の所見が発現した理由は,重炭酸イオンの浸透性の違いによるものであると推察される。
著者
福本 恵美子 川崎 浩二 林田 秀明 古堅 麗子 北村 雅保 福田 英輝 川下 由美子 飯島 洋一 齋藤 俊行
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.176-183, 2007-07-30

指しゃぶりは約半数の乳幼児が経験していると報告されており,その習慣化は歯列に大きく影響を与える.本研究の目的は,指しゃぶりの誘発とその習慣化の要因を明らかにすることである.3歳児健康診査を受診した3歳児(36〜47か月)512名を対象とした横断調査をもとに,指しゃぶりの開始と習慣化に関連する要因について分析した.対象者の36.3%が指しゃぶりを経験していた.3歳児健康診査時において指しゃぶりが習慣化している児の割合は,全対象者の15.8%,指しゃぶり経験者の43.5%であった.指しゃぶり開始の要因解析結果から,有意であったものは「郡部」と「兄弟姉妹の指しゃぶり有」であり,オッズ比はそれぞれ1.67(p<0.05),3.05(p<0.001)であった.指しゃぶり経験者における,その習慣化にかかわる要因解析では,「郡部」「弟妹の妊娠無」「母乳終了月齢12か月未満」で有意な関連が認められ,オッズ比はそれぞれ2.56(p<0.05),5.00(p<0.05),6.14(p<0.001)であった.以上の結果から,指しゃぶりの開始には「郡部」「兄弟姉妹の指しゃぶり有」が誘発要因として挙げられ,指しゃぶりの習慣化を防ぐためには母乳栄養を少なくとも生後12か月までは継続することが重要であることがわかった.
著者
川崎 浩二 飯島 洋一 高木 興氏 小林 清吾
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.676-683, 1991-10-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
15

The progression rate of newly occurred pit and fissure incipient caries of first molars was investigated every 6 months for 24 months. The subjects were 93 1st and 2nd grade elementary school children who did not perform school-based fluoride mouthrinsing. The progression rate after 12 months was approximately 60%, and the non-progression rate was approximately 40%. Cumulative progression rates after 12 months were approximately 60% for the 1st grade, and 40% for the 2nd grade, and the same rates after 24 months were 70% for the 1st grade, and 60% for the 2nd grade. These data were compared with our previous data derived from the same grade of elementary school children who performed school-based fluoride mouthrinsing. There was no statistical difference in the progression of incipient caries between these two schools. This lack of difference may be explained in terms of the complicated form of pits and fissures, or it may be that the fluoride mouthrinsing period was too short to be effective against caries progression.
著者
田中 景子 飯島 洋一 高木 興氏
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.215-221, 1999-04-30
被引用文献数
2

エナメル質ならびに象牙質の脱灰病変に,重炭酸イオンを作用させることによって,再石灰化の過程にどのような影響を及ぼすかをin vitroで検討した。試料には50歳代の健全小臼歯を用いた。脱灰は0.1M乳酸緩衝液(Ca 3.0mM, P 1.8mM, pH 5.0)で7日間行い,続いて再石灰化溶液(Ca 3.0mM, P 1.8mM, F 2ppm,pH 7.0)に7日間浸漬した。この再石灰化期間中,8時間ごとに再石灰化溶液から取り出し,30分間,4種の異なった重炭酸イオン溶液(0.0, 0.5, 5.0, 5O.OmM)に浸漬した。薄切平行切片を作成し,マイクロラジオグラフによってミネラルの沈着を評価した。エナメル質では重炭酸イオン濃度の増加に伴って,病変内部に再石灰化が発現する傾向が認められたが,統計学的な有意差はなかった(p=0.09)。一方,象牙質では表層に限局した再石灰化が認められた。特に5.0mM群では著明であったが,エナメル質と同様,統計学的な有意差は認められなかった(p=0.08)。エナメル質と象牙質で異なる再石灰化の所見が発現した理由は,重炭酸イオンの浸透性の違いによるものであると推察される。
著者
川崎 浩二 高木 興氏 飯島 洋一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

目的:1)小・中・高校生における顎関節症状の実態を明らかにする。2)生活習慣・習癖などの諸要因と顎関節症症状との関連性を明らかにする。3)定期的な習慣習癖の改善を目的としたカウンセリング等の指導によって,顎関節症状がどのように改善するかを把握する。調査対象と方法:1)長崎市内の小・中・高校生4502名を対象に,Helkimoの顎関節問診をベースにして習癖の実態も含めたアンケートを実施した。2)中・高校生を対象に実施した顎関節症の7自覚症状ならびに習癖等に関するアンケートから,各自覚症状の有無を目的変数に習癖等の18項目を説明変数として多重ロジスティック分析を用いて自覚症状に関わる要因分析をおこなった。3)某女子中学校生徒全員291名を対象に,4月に顎関節に関するアンケートを実施し,自覚症状を有する合計53名に対して7月,10月,2月の年3回,顎関節に関する保健指導を実施しながら,症状の経過を経時的に評価した。結果:1)顎関節に自覚症状を有している者の割合は,小学校低学年で3.5%,小学校高学年で7.7%,中学生で19.8%,高校生で22.8%であった。2)顎関節症の7自覚症状のうち6つが「顎を動かして遊ぶ」という習癖と有意な関連が認められた。中学生においては4自覚症状が「くいしばり」と有意な関連が認められた。3)調査開始の4月における顎関節自覚症状を有する者の割合は中学1年生:13.1%,2年生:16.1%,3年生:29.3%であった。1年間の指導後の予後は治癒,改善,不変,進行の順で1年生:54.5%,27.3%,9.1%,9.1%,2年生:18.8%,62.5%,18.8%,0.0%,3年生:61.5%,15.4%,15.4%,7.7%であった。指導による治癒・改善率は約75%〜80%であった。
著者
飯島 洋一 田沢 光正 宮沢 正人 長田 斉 稲葉 大輔 片山 剛
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.43-50, 1985 (Released:2010-10-27)
参考文献数
24
被引用文献数
1

フッ素洗口ならびに飲料水由来のフッ素が, 乳歯エナメル質へのフッ素取り込み量にどのような影響を与えるかを健全脱落乳歯135歯を用いてフッ素洗口経験年数別あるいは飲料水中フッ素濃度別に検討した。フッ素洗口 (F: 500ppm, pH6.0, 5回/週) を経験した乳歯エナメル質表層1μmにおけるフッ素濃度は, 洗口経験年数が1年から4年に増加するに従い4,300ppmから7,300ppmへと増大し, 非洗口群 (飲料水中フッ素濃度0.1ppm未満) に比較して統計学的に有意に高いフッ素濃度であった。フッ素洗口経験年数を重ねることによるフッ素濃度の上昇傾向は, 1μm層に限られ, 5μm層では対照群のフッ素濃度に比較して統計学的に有意の差は認められなかった。一方, 飲料水由来のフッ素の影響を受けたと思われる乳歯エナメル質フッ素濃度は, 飲料水中のフッ素濃度が1.0ppm以上の場合, 表層1μmのフッ素濃度が10,000ppm前後と著しく高く, 内層40μmにおいても対照群に比較して明らかに高いフッ素濃度を示していた。また1.0ppm以上の群は5μm層以上40μm層にいたるすべての層で対照群あるいは洗口群に比較して統計学的に有意に高いフッ素濃度であった。これに対し, フッ素濃度0.3ppmの群は5μm層では対照群に比較して統計学的に有意の差を認めることが出来なかった。1.0ppm以上の群で表層5μmから内層40μmにいたるまで対照群に比較して一定の高い濃度勾配を示したことは, 乳歯の萌出前・萌出後に獲得されるフッ素の影響によるものと思われる。
著者
相田 潤 田浦 勝彦 荒川 浩久 小林 清吾 飯島 洋一 磯崎 篤則 井下 英二 八木 稔 眞木 吉信
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.362-369, 2015-07-30 (Released:2018-04-13)
参考文献数
13

歯科医師法では公衆衛生の向上および増進が明記されており,予防歯科学・口腔衛生学は歯科分野で公衆衛生教育の中心を担う.またう蝕は減少しているが,現在でも有病率や健康格差が大きく公衆衛生的対応が求められ,近年の政策や条例にフッ化物応用が明記されつつある.根面う蝕対策としてフッ化物塗布が保険収載されるなど利用が広がる一方で非科学的な反対論も存在するため,適切な知識を有する歯科医師の養成が求められる.そこで各大学の予防歯科学・口腔衛生学,フッ化物に関する教育の実態を把握するために,日本口腔衛生学会フッ化物応用委員会は,1998年に引き続き2011年9月に全国の29歯科大学・歯学部を対象に質問票調査を行った.結果,予防歯科学・口腔衛生学の教育時間の大学間の最大差は,講義で8,340分,基礎実習で2,580分,臨床実習で5,400分となっていた.フッ化物に関する教育の時間も大学間によって講義で最大540分,基礎実習で280分,臨床実習は510分の差異があり臨床実習は実施していない大学も存在した.さらに1998年調査と比較して,教育時間や実習実施大学が減少しており,特に予防歯科学・口腔衛生学の臨床実習は1,319分も減少していた.また非科学的なフッ化物への反対論への対応など実践的な教育を行っている大学は少なかった.予防歯科学・口腔衛生学およびフッ化物応用に関する講義や実習の減少が認められたことから,これらの時間および内容の拡充が望まれる.
著者
福本 恵美子 川崎 浩二 飯島 洋一 高木 興氏
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.298-306, 1997-07-30

乳臼歯隣接面初期齲蝕に対して,フッ化ジアンミン銀を塗布した後の象牙質への齲蝕進行抑制期間と,それにかかわるリスク要因を比例ハザード統計を用いて検討した。昭和61年4月〜平成7年4月までの間に長崎大学歯学部附属病院予防歯科外来を受診し,平成9年1月まで追跡した患児52名,130歯(第1,第2乳臼歯間隣接面に初期齲蝕を有する歯牙)を対象として咬翼法X線写真を用いて調査を行った。齲蝕進行にかかわる要因については,診療録や質問表などの資料から6項目を選択した。その結果,フッ化ジアンミン銀塗布によりエナメル質から象牙質への齲蝕進行は1年後で91%,2年後で71%,3年後で65%,4年後で54%が抑制されることが推測された。歯種における齲蝕進行抑制の違いは認められなかった。要因別では「フッ化ジアンミン銀塗布時の齲蝕深度1/3以上」「寝る前の飲食の有無」「デンタルフロス使用の有無」「フッ化物洗□の有無」の順で齲蝕進行度が高かった。さらに,各々の要因は単独ではなく,相互に関連を有しながらフッ化ジアンミン銀塗布による齲蝕進行抑制に関与していると考えられた。つまり,フッ化ジアンミン銀塗布に加え,定期的なX線診査などの歯科医院での専門的ケアとデンタルフロス,フッ化物応用などの家庭での自己ケアの連携によって,約5割が4年間,切削・充填などの侵襲的処置を受ける必要がないことが明らかとなった。
著者
飯島洋一著
出版者
青土社
巻号頁・発行日
2014