著者
稲葉 大輔 釜阪 寛 南 健太郎 西村 隆久 栗木 隆 今井 奨 米満 正美
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.112-118, 2002-04-30
被引用文献数
10

馬鈴薯澱粉由来のリン酸化オリゴ糖(カルシウム塩;POs)が,溶液中ミネラルの不溶化と沈澱形成を阻害することが確認されている。本研究では,リン酸化オリゴ糖を配合したシュガーレスガムがエナメル質の再石灰化に及ぼす効果を口腔内実験により検討した。健常成人12名(男6名,女6名;平均年齢:21歳)を被検者とし,ランダムに3群に分け(n=4/群),二重盲検デザインの口腔内実験を行った。各被検者は,3個の脱灰エナメル質試料を接着した口蓋プレートを装着して,キシリトールガム, 2.5%POs配合キシリトールガム,ショ糖ガムのいずれかのガムを1日4回組閣した。実験期間中,フッ化物は使用せず,また試料の乾燥を防止した。エナメル質試料は1,2および4週間後に順次回収し,マイクロラジオグラフィで脱灰深部ld(μm)を評価した。2週間後,POsガム群の脱灰深度は40±3μmで,ショ糖ガム群(58±13μm)およびキシリトールガム群(61±6μm)よりも有意に低い値を示した(pく0.05)。また,4週間後では,POsガム群の説灰深度は29±3μmで,ショ糖ガム群(72±16μm)の60%,またキシリトールガム群(56±14μm)の48%へと有意に減少していた(p<0.01,p<0.05)。 2.5%POs配合シュガーレスガムを毎日利用することは,エナメル質の再石灰化を著しく促進することが示唆された。
著者
飯島 洋一 田沢 光正 宮沢 正人 長田 斉 稲葉 大輔 片山 剛
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.43-50, 1985 (Released:2010-10-27)
参考文献数
24
被引用文献数
1

フッ素洗口ならびに飲料水由来のフッ素が, 乳歯エナメル質へのフッ素取り込み量にどのような影響を与えるかを健全脱落乳歯135歯を用いてフッ素洗口経験年数別あるいは飲料水中フッ素濃度別に検討した。フッ素洗口 (F: 500ppm, pH6.0, 5回/週) を経験した乳歯エナメル質表層1μmにおけるフッ素濃度は, 洗口経験年数が1年から4年に増加するに従い4,300ppmから7,300ppmへと増大し, 非洗口群 (飲料水中フッ素濃度0.1ppm未満) に比較して統計学的に有意に高いフッ素濃度であった。フッ素洗口経験年数を重ねることによるフッ素濃度の上昇傾向は, 1μm層に限られ, 5μm層では対照群のフッ素濃度に比較して統計学的に有意の差は認められなかった。一方, 飲料水由来のフッ素の影響を受けたと思われる乳歯エナメル質フッ素濃度は, 飲料水中のフッ素濃度が1.0ppm以上の場合, 表層1μmのフッ素濃度が10,000ppm前後と著しく高く, 内層40μmにおいても対照群に比較して明らかに高いフッ素濃度を示していた。また1.0ppm以上の群は5μm層以上40μm層にいたるすべての層で対照群あるいは洗口群に比較して統計学的に有意に高いフッ素濃度であった。これに対し, フッ素濃度0.3ppmの群は5μm層では対照群に比較して統計学的に有意の差を認めることが出来なかった。1.0ppm以上の群で表層5μmから内層40μmにいたるまで対照群に比較して一定の高い濃度勾配を示したことは, 乳歯の萌出前・萌出後に獲得されるフッ素の影響によるものと思われる。
著者
原 慎太郎 中野 哲雄 越智 龍弥 村上 直也 稲葉 大輔 安岡 寛理 中原 潤之輔
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.376-381, 2013-03-25 (Released:2013-06-11)
参考文献数
6

当院における足関節果部骨折の治療成績について調査し,予後決定因子について検討した.調査項目を5項目とし,Lauge-Hansen分類による骨折型,骨折数,距骨転位および脛腓間離開,術直後の整復状態を最終診察時の臨床成績で評価した.足関節果部の予後不良因子は,骨折型ではPronation type,特にSER I・II以外のtype,両果・三果骨折,距骨転位が大きい事であった.術直後整復の評価であるBurwellの基準でも治療成績に有意差を認めたが,Anatomicalにも成績不良が散見された.そこで整復評価をtrue-Anatomical,sub-Anatomicalまで細分化したところ,true-Anatomicalの成績が良好であった.よって術後整復はtrue-Anatomicalを目指すべきである.
著者
稲葉 大輔
出版者
一般社団法人 日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.66-78, 1992-01-30 (Released:2010-10-27)
参考文献数
42

The effects of the application of various fluorides on the remineralization and fluoride (F) incorporation of root surfaces with or without cementum were evaluated in vitro. Clinincally sound proximal root surfaces of premolars extracted from patients aged 9-14 years were used for experiments and divided into two categories: (1) a dentin group, where cementum was removed by abrasion, and (2) a cementum group, where the cementum was preserved. In both groups, two types of specimens were prepared: (1) sandwich specimens, for assessing mineral volume by a single section technique, and (2) block specimens, for the determination of F incorporation by biopsy.After demineralization by immersion in 0.01M (for sandwiches, pH 5.1, 6mM Ca, 3.6mM P, 1% CMC, 37°C) or 0.1M (for blocks, pH 5.0, 3mM Ca, 1.8mM P, 1% CMC, 37°C) lactate buffer, specimens were treated with one of the following four fluorides during 14-day immersion in remineralizing solution (Rem solution: 3mM Ca, 1.8mM P, 150mM NaCl, 3ppm F, 1% CMC, pH 7.0, 37°C). The fluorides were APF solution (APF), APF gel (FG), F rinse solution (FR) and MFP dentifrice (FD). Control group (immersion in 3ppm F containing Rem solution only) and negative control group (immersion in F free Rem solution only) were also studied. APF and FG were applied for 4 minutes once just before remineralization, and FR and FD were applied for 1 minute every 24-hour remineralizing period. Sandwinch specimens were microradiographed before and after remineralization. The film density of lesions was convereted to aluminum thickness (Ta; μm) and the mineral volume of lesion (Ma; μm·μm) was defined as integrated values of Ta profiles. F content was determined by acid etch biopsy with 0.5M HClO4.The Results were as follows:Remineralization of early root caries lesion in vitro was(1) promoted by the application of fluorides, and accelerated more by the treatment with APF or FG than the treatment with FR or FD, and(2) not significantly different between the cementum and the dentin groups.(3) Cementum had no inhibitory effects on the remineralization of root surfaces.F incorporation in remineralized root surfaces were(1) different between various F treatments, and specimens treated with APF or FG showed significantly higher F uptake level, and(2) greater in the cementum group than that in the dentin group and this fact indicates that cementum would be important tissue for demineralization and remineralization of root sufaces as a source of F ion supply.According to the analysis of correlation coefficient, the degree of remineralization was obviously dependent on F incorporation in lesion surfaces.In conclusion, these findings suggested that F application was effective for the remineralization of root surfaces and F incorporation into root surfaces did not depend on cementum. Thus, professional or self application of fluorides was considered to be higly suitable for the prevention of root caries in the elderly.
著者
阿部 晶子 稲葉 大輔 岸 光男 相澤 文恵 米満 正美
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

う蝕原性細菌であるミュータンスレンサ球菌は生後19か月から31か月の間に主な養育者が母親である場合、母親を由来として児に定着すると報告されている。しかしながら,我が国における定着時期についての調査は少ない。そこで我々は岩手県平泉町において生後3か月時点から,児のミュータンスレンサ球菌の検出,母親の唾液中ミュータンスレンサ球菌数,齲蝕の発生および育児習慣について追跡調査を行い,これらの関連について検討中である。今回は、2歳6か月時にう蝕の認められた児と、う蝕の認められなかった児について1歳時、1歳6か月時、2歳6か月時の各時期における育児状況のアンケート結果およびミュータンスレンサ球菌の検出状況、母親の唾液中ミュータンスレンサ球菌数との関連について比較検討を行った。その結果、2歳6か月児のう蝕有病者率は21.1%、一人平均df歯数は0.93本であった。2歳6か月時におけるう蝕発症の関連要因を知る目的で、2歳6か月時のう蝕の有無を目的変数としてロジスティック回帰分析を行った結果、1歳時における哺乳瓶による含糖飲料の摂取,大人との食器の共有,2歳6か月時における毎日の仕上げ磨きの有無、1歳時および1歳6か月時におけるミュータンスレンサ球菌の検出状況が有意な関連要因であった。また、ミュータンスレンサ球菌の検出時期と2歳6か月時におけるう蝕発症との関連をみてみると、1歳時からミュータンスレンサ球菌が検出された児は、2歳6か月時に初めてミュータンスレンサ球菌が検出された児に比較して有意に高いう蝕発症率を示した。今回の調査結果から、児の口腔内のシュクロースの存在がミュータンスレンサ球菌の早期定着を促し、その早朝定着がう蝕発症要因の一つであることが示唆された。