著者
赤壁 弘康 田畑 吉雄
出版者
日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
雑誌
現代ファイナンス
巻号頁・発行日
vol.28, pp.17-43, 2010

<p>本稿は,価格がネットワーク外部性の影響を受けるような資産(あるいは商品)に対してデリバティブが書かれた場合,Harrison/Pliscaを嚆矢とする従来のデリバティブ評価法(マルチンゲール評価法)がどの程度有効であるのかを検証しようと試みるものである.このために,価格がネットワーク外部性の影響を受ける資産/商品の価格モデルを確率的Verhulst/Gompertzモデルによって定式化し,その確率的性質を明らかにする.次に,価格が確率的Verhulst/Gompertzモデルに従う原資産とBlack/Scholes/Merton価格モデルに従う原資産を交換する,交換オプションをマルチンゲール評価法を用いて厳密に導出することを試みる.前者をエネルギースポット価格,後者をエネルギー商社の株価とすれば,このような交換オプションはエネルギー価格の高騰をヘッジしたいエネルギー需要者にとってメリットがあると思われる.したがって,その適正な価格が求められるということを示すのは応用の観点からも重要である.この日的のために,価格がそれぞれBlack/Scholes/Merton価格モデルと確率的Verhulst/Gompertzモデルに従う原資産の割引かれた価格過程を同時にマルチンゲールにする確率測度ℙの具体的な構成法を明らかにする.次に,このℙの下で,マルチンゲール評価法を用いて上記の交換オプションを厳密に評価する.併せて,ヨーロッパ型バニラ・コールの評価公式にも触れる.</p>
著者
田畑 吉雄
出版者
公益社団法人 日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.169-184, 1979
被引用文献数
1

取替問題において定期的取替またはブロック取替と呼ばれる政策は、使用中の部品を偶発故障時点および一定期間毎で計画取替する方式であり、部品の使用時間を記録しておく必要がないため、しばしば採用される。ところが、計画取替時点直前に故障した部品を新品に取替ると損失が大きいため、遊休損失を覚悟の上で放置しておく方式が考えられる。この放置期間をアイドル・タイムと呼ぶ。本論文では、アイドル・タイムを考慮し、偶発故障に対しては修理を施すことが可能とする。ある時点で偶発故障が生じた時、総期待費用を最小にするためには。その部品を修理すべきか、または放置しておくべきかを動的計画法を用いて決定する。その結果、計画取替時点までの残り時間と、部品の使用年令とに依存する両決定の境界が誘導される。すなわち、修理とアイドル・タイムを考慮すれば、定期的取替政策の利点である「部品の使用時間の記録不要」が消滅していることがわかる。最後に幾つかの数値例が与えられる。
著者
澤木 勝茂 尾崎 俊治 田畑 吉雄 竹澤 直哉 八木 恭子 佐藤 公俊
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究成果の概要は次の4点まとめることができる。(1)投資家と発行体の双方に償還ならびに権利行使のオプションが付与された条件付請求権の評価を2つの境界条件をもつ最適停止問題として定式化し、最適な償還政策と最適な権利行使政策の定性的な性質の分析を行った。(2)従来の在庫管理モデルにスポット市場での商品調達を導入し、ファイナンスと在庫管理モデルとの架橋を試みる研究を行った。最適ポートフォリオと企業の格付け理論についての研究会を実施した。(3)リアル・オプションによる企業評価モデルへの応用および実物資産に対するリアル・オプションによる評価(担当:竹澤・尾崎・八木)-リアル・オプションの接近法によるサハリン・プロジェクト2の共同開発協定の財務的評価について研究した。(4)レジューム・シフトによる資産価格過程のモデル化をおこない、従来のモデルでは説明できなかった資産評価モデルに「レジューム・シフト」を導入することによって投資家の行動と資産価格を説明するモデルの構築を行った。サプライチェーンマネジメントと資産評価モデルとの架橋を試みた。