著者
丸山 徹
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

ザビエルが来朝した1549年より約100年間の「キリシタン時代」、日本の布教に携ったカトリック宣教師たちは日本語ポルトガル語辞書、日本語文法書、文学書、宗教書などを精力的に編纂した。こうしたキリシタン文献はこれまで何人もの国語学者がキリシタン資料の研究に携り、数々の成果をあげてきた。語学書の中ではとりわけロドリゲスの文法書と日葡辞書が邦訳も公にされここ数十年で研究が大きく進んだ。一方でこうした語学書が、同時代のヨーロッパにおける語学書の構成に倣って(世界各地の現地語について)書かれているからには、研究にグローバルな観点を導入することは不可欠である。ブラジル・トゥピ語文献、インド・コンカニ語文献などとの対比の中で、日本の「キリシタン文献」に光を当てることが重要となる。インド・コンカニ語文献の場合、日本におけるロドリゲス日本語文法書に対応する同時代のコンカニ語文法書(1640年)や同じぐ日本におけるドチリナキリシタンにあたる同時代のコンカニ語ドチリナ(1622年)はインドに印刷に付されたものが現存するが、上で述べた日葡辞書に相当するコンカニ語・ポルトガル語辞書は印刷に付されたものがなく、写本の形でしか存在しない(Goa Central Library、Biblioteca Nacional deLisboa、Arquivo Historico Ultrainarino(Lisboa)所蔵の三つの関連する写本-いずれもDiogo Ribeiro神父の手になると思われるもの-が注目される)。本研究の主たる目的は写本の形で残る17世紀コンカニ語・ポルトガル語辞書の翻刻とコンピュータ入力、印刷、公表、および関連する三写本についての考察をもとに、それら写本成立の背景を探ろうとするものであった。期間内に次の二つのことを遂行した。1.1626年書写コンカニ語・ポルトガル語辞書の翻刻とコンピュータ入力、印刷、公表( ⇒ 当該科学研究費補助金研究成果報告書A4・400ページを参照)2.上記辞書写本翻刻の世界の研究者、国公立図書館への送付