著者
谷村 健 濱田 明美 鬼束 楠里 野崎 直樹 甲斐 孝憲 小川 喜八郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.100, no.1, pp.56-64, 2005-01-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

宮崎県日向灘沿岸および沖縄県石垣島周辺海域からの焼酎用酵母の分離を試みた結果,酵母様微生物を547株分離できた。産膜が見られず,糖醗酵性試験により,良好な結果の得られた16株を選抜した。選抜菌株について醗酵試験,芋焼酎小仕込み試験を行い,醗酵経過が安定し,酒質も良好であったBlD-12株を最優良菌株とした。同菌株はS. cerevisiaeであると同定され,従来の焼酎用酵母よりも耐塩性およびアルコール耐性が高いことが示唆された。高耐塩性は海水域由来株の指標の1つになりうると考えられる。また, 2次膠の最高晶温35℃前後の条件下おいても醸酵は順調に推移し,BlD-12株は高温耐性株であることが確認された。さらに,実地規模での芋焼酎仕込み試験で従来の酵母よりも良好な醸酵経過を示したことから,ソバ等に代表される他の穀類原料においても実用化が期待できる。
著者
中原 徳昭 古田 幸 境田 博至 甲斐 孝憲 榊原 陽一 西山 和夫 水光 正仁
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.355-365, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
46
被引用文献数
1

センサにより本格焼酎の基本的な味を表現することを目的とし, 各脂質膜センサの特性 (意味づけ) について, 官能評価と化学分析を組み合わせた解析を行った. その結果,1. 水和シェルが存在し, ある程度エタノールポリマーの刺激を抑制すると考えられる6~18%のエタノール溶液においては, エタノールに対して主に「苦味」を, それ以上の濃度のエタノール溶液に対しては強い「刺激感」と共に「甘味」も感じることが確認された.2. 25%以上のエタノール溶液および本格焼酎を口に含んだ場合, 舌の表面においてエタノールと水の結合による発熱が起こり, この発熱が, 飲用温度による味覚感受性の変化と共に本格焼酎の味に何らかの影響をおよぼすことが示唆された.3. エタノール濃度に選択的に応答するセンサの特定を行った結果, プラス膜のAE1センサおよびブレンド膜の0E1センサが, 本格焼酎のエタノール濃度に良く応答することが確認され, この2つのセンサ挙動を比較することで, その他の味成分とエタノールの相互作用を確認できることが示唆された.4. 本格焼酎の官能評価における「酸味」は, pHおよび酢酸濃度に必ずしも一致しないが, AN0, CN0, AAEセンサのようにセンサの脂質膜にリン酸エステルを使用することで, 本格焼酎に含まれる「酸味」成分によく応答すると共にその他の成分との相互作用を確認できることが示唆された.今回の試験の結果, 本格焼酎におけるエタノールの味は, 刺激を伴う「苦味」が主体であることが確認できた. しかし, 日常において本格焼酎を飲用する際, このエタノール溶液のような強い「苦味」を感じることは希である. これは, 熟成の効果もさることながら, 本格焼酎独特の製法によって生み出される様々な成分が相互作用し, このエタノールの刺激を伴う「苦味」を抑制しているためと考えられる.今後はさらに, その他の各脂質膜センサの特性 (意味づけ) について解析を進めると共に, 本格焼酎の主成分であるエタノールの味を軸に, その他味成分との相互作用について官能評価と化学分析に味覚センサを組み合わせた検討を行っていく予定である.
著者
松浦 靖 金子 真緒 平原 秀秋 日高 史絵 境田 博至 甲斐 孝憲 柚木崎 千鶴子 窄野 昌信
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.689-694, 2013-12-15 (Released:2014-01-15)
参考文献数
18
被引用文献数
1 2

本実験では,BLおよびその熱水抽出物であるBLExのSHRにおける血圧上昇への影響を検討した.BLおよびBLExをそれぞれ3%,1.5%飼料に添加し,3週間摂食させた結果,2週目以降,収縮期血圧は対照群に対し有意に低値を示し,BLおよびBLExによる血圧上昇抑制作用が認められた.次にSephadex LH-20およびDiaion HP20SSカラムクロマトグラフィーによりBLExを5つの画分に分画し,ACE阻害成分をin vitroで評価した結果,プロアントシアニジン画分のIC50値は0.004mg/mLであり,画分の中で最も強くACEを阻害した.なお,BLExから分画したプロアントシアニジン画分のSHRにおける血圧上昇への影響を検討した結果,2週目以降,収縮期血圧は対照群に対し有意に低値を示した.これらの結果より,BLおよびBLExは血圧上昇抑制作用を有し,その活性成分の一つとしてプロアントシアニジンの関与が示唆された.今後,ブルーベリー葉は血圧上昇抑制作用を有する新たな機能性食品として期待できる.