著者
中原 徳昭 古田 幸 境田 博至 甲斐 孝憲 榊原 陽一 西山 和夫 水光 正仁
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.355-365, 2005 (Released:2007-04-13)
参考文献数
46
被引用文献数
1

センサにより本格焼酎の基本的な味を表現することを目的とし, 各脂質膜センサの特性 (意味づけ) について, 官能評価と化学分析を組み合わせた解析を行った. その結果,1. 水和シェルが存在し, ある程度エタノールポリマーの刺激を抑制すると考えられる6~18%のエタノール溶液においては, エタノールに対して主に「苦味」を, それ以上の濃度のエタノール溶液に対しては強い「刺激感」と共に「甘味」も感じることが確認された.2. 25%以上のエタノール溶液および本格焼酎を口に含んだ場合, 舌の表面においてエタノールと水の結合による発熱が起こり, この発熱が, 飲用温度による味覚感受性の変化と共に本格焼酎の味に何らかの影響をおよぼすことが示唆された.3. エタノール濃度に選択的に応答するセンサの特定を行った結果, プラス膜のAE1センサおよびブレンド膜の0E1センサが, 本格焼酎のエタノール濃度に良く応答することが確認され, この2つのセンサ挙動を比較することで, その他の味成分とエタノールの相互作用を確認できることが示唆された.4. 本格焼酎の官能評価における「酸味」は, pHおよび酢酸濃度に必ずしも一致しないが, AN0, CN0, AAEセンサのようにセンサの脂質膜にリン酸エステルを使用することで, 本格焼酎に含まれる「酸味」成分によく応答すると共にその他の成分との相互作用を確認できることが示唆された.今回の試験の結果, 本格焼酎におけるエタノールの味は, 刺激を伴う「苦味」が主体であることが確認できた. しかし, 日常において本格焼酎を飲用する際, このエタノール溶液のような強い「苦味」を感じることは希である. これは, 熟成の効果もさることながら, 本格焼酎独特の製法によって生み出される様々な成分が相互作用し, このエタノールの刺激を伴う「苦味」を抑制しているためと考えられる.今後はさらに, その他の各脂質膜センサの特性 (意味づけ) について解析を進めると共に, 本格焼酎の主成分であるエタノールの味を軸に, その他味成分との相互作用について官能評価と化学分析に味覚センサを組み合わせた検討を行っていく予定である.
著者
豊田 彩 古田 幸一
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第30回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.140, 2008 (Released:2008-12-01)

【はじめに】 歩行時の立脚中期(Mid Stance以下MSt)は支持側前足部への身体移動、脚と体幹の安定性を確保する相である。前相の荷重応答期(Loading Response以下LR)にて床反力が影響し始め、前方への動きが保持されMStへと伝達される。この際の股関節制御は体幹の安定性、床反力位置を決める重要な因子となる。今回、股関節疾患後のMSt獲得に着目し理学療法を展開した。【症例紹介】74歳女性 身長140cm体重38kg BMI20 H8.4左大腿骨頚部骨折後人工骨頭置換術施行 H19.12転倒し左大腿骨骨幹部骨折後ケーブル3本で締結固定【理学療法評価】ROM:股関節伸展10°MMT:腸腰筋2、縫工筋4、大殿筋3、中殿筋4 疼痛:MSt時右肩関節前面VAS5/10 静止立位:上部胸椎左回旋、左肩甲骨下方回旋、左下角が右に対し1横指下方。下部胸椎・腰椎右回旋、骨盤帯右回旋、右寛骨下制、左股関節外旋、重心右偏位。歩行:左MSt時股関節伸展が乏しく、左上部体幹が下方に引き下がる。【理学療法アプローチ】1.単関節筋トレーニング2.課題変化によるMSt訓練3.上部体幹機能改善訓練【経過と考察】 歩行周期中MStは重心の位置が最も高く前相のLRは最も低くなり、通常この移行期にロッカー機能と大殿筋の求心性収縮で体幹直立位を保っている。症例は、大殿筋の求心性収縮遅延が生じ、ロッカー機能を優位に働かせ、カウンターウエイトにて左単脚支持を担っていた。静止立位では慢性的に重心は右偏位し、左側股関節の固有感覚受容も低下した状態であった。これらの事からMSt時、上半身重心は右に残ったまま左外側の筋・筋膜での股関節制御を高め、床反力ベクトルは股関節後方から対側肩関節へと通過し、左股関節屈曲モーメントと右肩関節伸展モーメントは増加した状態であった。更に、股関節外側制御により体幹を斜走する筋膜であるSpiral lineを伝わり右肩関節への張力を発生させていた。MSt獲得不全が二次的に肩関節に疼痛を及ぼしていた。アプローチとして、大殿筋、腸腰筋の単関節筋トレーニングを非荷重下にて行い股関節単体での筋機能を向上させた。次に運動課題の変化によるMSt訓練として、擬似的にMSt初期を側臥位(左足底を壁面に接地し両下肢の同時収縮運動)にて行い、反力ベクトルを上方へと促し、運動課題が複雑な荷重下でのステップ訓練、歩行へと展開した。更に、左胸郭の動きを促し、上部体幹の動的な安定性獲得を図った。結果、MStでの股関節機能は改善、左上部体幹の動揺は減少し、右肩関節の疼痛は消失した。【まとめ】 歩行時のMSt獲得のためには股関節機能は重要であり、上部体幹や他の下肢関節への連鎖も考える必要がある。今後臨床にて他の歩行周期にも目を向け更なる検討を行なっていきたい。
著者
古田 幸子 鈴木 明子 木岡 悦子 森 由紀 高森 壽 菊藤 法 谷山 和美
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.49-58, 1998-01-15
被引用文献数
2

歩き始めの子どもの靴の着用実態を調査し, 着用靴にどのような特徴があるのかを, 足部形状の成長変異の結果をふまえて, サイズ, はかせやすさ等の面から, 検証することを試みた. 主な結果は以下のとおりである. (1) 調査当日の着用靴について, 保育者は「サイズ」「はかせやすさ」を主な購入動機としており, 足への適合性と同程度に, はかせる側の着脱の簡便性が重視されていた. 一方, 半年から1年の間同サイズの靴をはかせている例もみられた. また, ほとんどの者がはかせやすさについては評価の高い靴を着用しているものの, とめ具の様式によってはかせやすさの評価が有意に異なることなどが明らかになった. (2) 乳幼児靴全般を対象にしたサイズ適合に関する実態は, 約3割強が, 大きめのサイズを購入しており, 全体の約半数の者が, 足長を基準に選んだ際, 他の部位が合わない場合があるとの回答であった. 特に足先から甲を覆う部分に関して, 市販靴のゆとり量に問題がある場合が多かった. (3) 足部計測値と着用靴サイズ間の関係を分析した結果, 足高の計測値と靴サイズとの相関が低く, 靴設計において考慮する必要があることが確認された. 本調査を行うに当たり, ご協力いただいた保育園ならびに保護者の皆様に感謝いたします. 本研究の一部は日本家政学会第45回大会において発表した.