著者
畠中 茉莉子
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.33-47, 2021-06-05 (Released:2023-06-24)
参考文献数
23

ルーマンは宗教を社会の一つの機能システムとして描きつつも、その存立を自明視はせず、近代社会における宗教の存立の可否を問い続けた。彼の世俗化論はこの問いを中心的な主題としたものである。彼の世俗化論には1977年版、2000年版という複数のテキストがあり、前者から後者へと至る間に宗教に対する彼の見方は変化した。この変容の詳細はまだ解明されていない。その解明が本稿の主眼である。当初、彼は宗教としてキリスト教の教会組織を念頭に置いていた。その後彼は同時代の神学者と宗教社会学者の問題提起を通じて、現代の拡散した宗教的現象において示されている宗教性とは何かという問いに出会う。この問いに向き合う中で彼の宗教をめぐる視点は拡大した。彼は現代の様々な宗教的現象への関心を示す。それらは伝統的な組織の内には収まらない。そのためルーマンは、現代の宗教性を一つの自立した宗教システムとして描くための理論的概念を模索したのである。