著者
坂本 亘 井筒 理人 白旗 慎吾
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1-2, pp.55-94, 2009-05-31 (Released:2017-05-01)
参考文献数
100

スプラインによる平滑化の研究の近年の動向を概説する.平滑化(罰則付き)スプラインが混合効果モデルで表現できるという点が注目されている.打ち切りベキ基底を用いる罰則付きスプラインは,そのまま混合効果モデル表現に帰着され,スプラインや罰則項の複雑な計算を回避することから,とくに有用である.罰則付き回帰問題とBayes流接近法との関連も重要である.罰則付きスプラインの滑らかさを制御する平滑化パラメータの選定問題では,従来は(一般化)交差確認法の利用が主流であった.しかしながら,混合効果モデルの分散パラメータの推定問題に帰着されうることから,制限付き最尤推定法(REML)またはこれと同等な経験Bayes法がより有用であり,実際に主流になりつつある.罰則付きスプラインによる線形(多項式)回帰仮説の検定は,ランダム効果の分散が0であるか否かの検定に帰着され,制限付き対数尤度比統計量が有用とされている.ただし,その帰無分布は漸近的には得るのが困難であり,乱数を用いて再現される.シミュレーションにより,対数尤度比統計量よりも平滑化パラメータのREML推定量自体が高い検出力を与えることが示される.最後に,罰則付きスプラインは諸種の回帰モデルへの拡張が可能であり,その推測方法は混合効果モデル表現およびBayes流接近法により展開される.
著者
松嶋 優貴 白旗 慎吾 坂本 亘
出版者
Japanese Society of Applied Statistics
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.201-219, 2004-12-25 (Released:2009-06-12)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

ウェーブレットは不規則,不連続な関数(または信号や画像)を効率的に表現するための道具であり,スケーリング関数,ウェーブレット関数と呼ばれる2種類の関数から作られる基底関数の線形結合によって関数などを表現する.スケーリング関数,ウェーブレット関数の組(この組もウェーブレットと呼ばれる)については,すでに数種類が開発されており適宜選択することができる.しきい値法(Thresholding)は,ウェーブレットによるノイズ除去のための代表的な手法であり,観測値にもとづく関数の推定を基底関数の線形結合で表現するための係数を「しきい値」と比較し,しきい値よりも絶対値が小さな係数の値を0で置き換える.この置き換えによって小さな変動を無視することによりノイズを取り除く.しかし,しきい値法によって得られるノイズ除去の結果はウェーブレットの種類に依存するので,しきい値法で用いるウェーブレットの種類によってしきい値法の結果も異なる.それゆえに観測値に応じてウェーブレットを選択する必要がある.本論文では種々のウェーブレットから観測値に適するものを数値的に選択するための基準を示す.選択基準としてはAIC(赤池情報量基準)を用い,選択の対象となるウェーブレットの中で最小のAICをとるものを最良として選択する.小さなAICに対応するウェーブレットほどしきい値法における考えをよく満たすことが,AICを選択基準として採用した根拠である.AICによるウェーブレットの選択法について,その適用結果を図によって例示し,シミュレーションを行うことにより,AICが適切なウェーブレットを選択することを示す,また,ウェーブレットを選択するための他の方法(最小自乗法,MDL法)との比較を行う。
著者
町原 英 白旗 慎吾
出版者
一般社団法人日本PDA製薬学会
雑誌
日本PDA学術誌 GMPとバリデーション (ISSN:13444891)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.77-81, 1999 (Released:2006-08-03)
参考文献数
4

100% inspection can not completely eliminate all of defect qualities from the lot, because of the limitation of detection rate. Three models of 100% inspection methods, which have different stopping rules, have been statistically compared by taking the detection rate into consideration. The three models of inspection methods are defined as follows. (A) Stop when we detect no defects for the first time. (B) Stop when we detect no defects for the second time. (C) Stop when we meet the first successive two no-detections of defects. It is found that, in view of the average number of total insepction times, the rule A is the best whereas in view of the average number of undetected defects the rule C is the best. The rule B stands between the rules A and C and is close to rule C. If we also consider the costs of inspection and undefected defects, the rule B is robust and when the probability to detect the defects is high then the rule A is excellent. The rule C is found to be too conservative.
著者
坂本 亘 白旗 慎吾
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.13-35, 1997-05-30
被引用文献数
2

ノンパラメトリック回帰の1つの方法,スプライン平滑化について論ずる.最初に1次元のスプライン平滑化について述べる.回帰曲線の推定量を導出し,推定値の計算方法,および平滑化パラメータの選択方法をまとめる.次に,説明変数が複数の場合に,セミパラメトリック回帰モデルを論じる.このモデルは1つ(またはそれ以上)の変数についてはノンパラメトリック関数を,他の変数については線形関数をあてはめ,それらの加法性を仮定したものである.両方の成分の推定量を導出し,併せて農地実験のデータにこのモデルをあてはめる. 後半ではセミパラメトリック回帰の推定量に関する漸近的性質を述べる.Rice(1986)はセミパラメトリック回帰における線形部分の回帰係数の推定値に偏りが生じることがあると指摘した.この偏りを抑えるために,2種類の推定量が提案された.そこで,これらの推定量の偏りがどの程度抑えられるのかをシミュレーションによって数値的に比較することを試みる.その結果,偏回帰を利用した推定量は標本サイズが小さくでもある程度偏りを抑える効果をもち,他方2段階スプライン平滑化による推定量は標本サイズが大きいときのみ効果があることがわかる.
著者
Qi 旗 坂本 亘 白旗 慎吾
出版者
応用統計学会
雑誌
応用統計学 (ISSN:02850370)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.135-150, 1998-03-16 (Released:2010-03-03)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

回帰分析は統計的データ解析の本流を成し,多くの分野で適用されている.回帰関数としては通常単一の滑らかな関数を考えることが多いが,回帰関数がある点を境に折れ曲がっているように見えることがある.そのような場合は,回帰関数として単一の関数を想定するよりも,独立変数に2つの相があり,各相で異なる回帰関数を当てはめる方が自然であろう.本論文では回帰関数として1次式を考え,単純直線回帰を帰無仮説,ある未知の点(変化点)を境にして連続ではあるが折れ曲がった2相直線回帰を対立仮説とした検定問題に対する尤度比検定を考える.この場合,検定統計量の厳密分布を求めることは現実には困難であり,漸近的にも標準の漸近理論の仮定が成立せず,したがって対数尤度比検定統計量にカイ2乗近似を用いることができない.この点に関し多くの研究者により様々な議論が展開されてきたが,現在のところ実用的な結論は得られていない.本論文ではそれらの議論を検証し,尤度比検定統計量の実用に耐える近似帰無分布を導いた.さらに,誤差分散の大きさ,独立変数の配置により帰無分布がどう変わるか,また検出力がどう変わるかを調べ,棄却点が分散の大きさにはあまり依存しないことを示した.また,高い検出力を持つ配置が経験的に得られた.