著者
白樫 三四郎
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.49-58, 1966 (Released:2010-03-15)
参考文献数
12

本研究はリーダーと成員の心理的距離の指標としてFiedler, F.E. が考案したLPC得点 (リーダーからみて共働者としてもっとも好ましくない人を彼が心理的にどのていど受容するかを示す。least preferred co-workerに対する好意度) の妥当性をOhio大学研究グループが抽出した, リーダー行動の二つの因子 (considerationとinitiating structure) との関連で検討しようとするものである。被験者は炭鉱採炭作業集団の監督者18名と部下473名。監督者のLPC得点はSD法式のテストに彼らが記入した結果から測定された。この得点に基づいてLPC得点が高い監督者 (8名) とLPC得点が低い監督者 (10名) とが決定された。両群の得点の平均値の差は統計的に有意であった。部下は5段階選択肢をもった質問項目に回答することによって, 自己の属する集団の監督者の行動を記述した。LPC得点の高い監督者の下の部下 (202名) と, LPC得点の低い監督者の下の部下 (271名) のそれぞれの監督者の行動に関する記述を比較して, 次のような結果がえられた。1) LPC得点が高い監督者はLPC得点が低い監督者と比較して, 集団内の人間関係により深い配慮を示すと部下から認知されている。つまりLPC得点が高い監督者は, より人間関係志向的であるといえる。2) LPC得点が低い監督者はLPC得点が高い監督者と比較して, 集団の目標達成, リーダーとしての役割遂行により大きなウェイトをかけていると部下から認知されている。つまりLPC得点が低い監督者は, より役割志向的であるといえる。3) これらのことから, LPC得点に関するFiedler, F.E. の解釈の妥当性はいちおう検証されたと考えられる。
著者
白樫 三四郎
出版者
甲子園大学
雑誌
甲子園大学紀要 (ISSN:18815731)
巻号頁・発行日
no.34, pp.157-172, 2006

リーダーシップ研究史において対照的にも思われる三隅二不二の「リーダーシップPM理論」とフレッド・E・フィードラーの「リーダーシップ効果性の条件即応モデル」および「認知的資源理論」とを比較検討しながら、リーダーシップ効果牲をめぐる2つのアプローチの問題点を考察する。三隅は集団-課題状況の相違を相対的に重視せず、Performance(課題遂行)およびMaintenance(集団維持)の2つの集団機能に着目して、リーダーシップ現象を解明しようとする。これに対してフィードラーは条件即応モデルあるいは認知的資源理論において、リーダーのパーソナリティ、仕事指示的行動、集団-課題状況の統制力レベル、上司との対人ストレス、部下集団からの支持などさまざまな変数のかかわりにおいてリーダーシップ現象をとらえようとする。両理論の対比において、リーダーシップ研究の将来を探索する。