- 著者
-
白石 卓也
- 出版者
- 一般社団法人 日本農村医学会
- 雑誌
- 日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.4, pp.725-728, 2015-11-30 (Released:2016-01-06)
- 参考文献数
- 7
病院や診療所などの医療機関から処方された残薬が高齢者宅から大量に見つかり, 社会問題として取り上げられている。その残薬の問題を解消すれば, 高齢化の進行に伴い増え続けている医療費が削減できる。そこで本研究では, 高齢化の進んだ中山間地域の診療所で残薬を調査し, 残薬問題の解消に何が必要か検討した。当診療所に定期通院する患者を対象に, 残薬を調査した。調査の参加に同意を得られた226名に,「残薬の有無」,「残薬の日数」および「残薬をどうしているか」を調査用紙に記入してもらった。また, 対象患者の年齢, 性別, 75歳以上の後期高齢者数, 処方日数,処方薬剤種類数, 飲み方および薬効から残薬発生の要因を検討した。その結果, 226名のうち38名は残薬ありと答えた。残薬を起こさないように医師は前回処方日時の確認や長期処方を少なくしていたが, 残薬は17%の患者に存在していた。検討項目と残薬発生の間に関連はなかった。「残薬をどうしているか」という質問に対しては,「保管」や「破棄」と回答した患者が多かった。残薬の保管は, 薬剤の不適正使用の危険性を高める。残薬の破棄は, 医療資源を無駄にする。本研究から, 残薬が発生しないように医師は注意し処方していても, 残薬の発生を防げない可能性が示唆された。残薬の問題を解消するためには, 残薬が発生した場合の対処方法を患者に提示する必要があると考えられた。