著者
相良 友哉 村山 洋史 高橋 知也 西中川 まき 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.21-119, (Released:2022-06-30)
参考文献数
41

目的 急速な高齢化の進展や人口減少によって,様々な業界で働き手が不足しており,とくに,介護や保育などの福祉業界において深刻な問題となっている。その対応策のひとつとして,自立した日常生活を送れているいわゆる「元気高齢者(アクティブシニア)」を補助人材として雇用し,施設の非専門的な周辺業務を担ってもらう取組みが散見される。しかし,これらの業務への就労意向を持つ者の割合や,その要件は十分に整理されていない。そこで,本研究は,介護補助や保育補助としての就労意向を持つ高齢者の特性を明らかにすることを目的とした。方法 「NPO法人りぷりんと・ネットワーク(りぷりんと)」に加盟している首都圏の絵本読み聞かせボランティア団体の会員で60歳以上の者374人を対象とした自記式アンケート調査を実施し,有効回答295票を得た(回収率78.9%)。調査期間は2019年10月~11月であった。本研究では,介護補助と保育補助のそれぞれについて,「就労意向の有無」を目的変数,「就労関連項目」「健康状態」「社会関係・社会参加状況」を説明変数,「人口統計学的変数」を調整変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。分析に際して,欠測値を多重代入法により補った(10ファイルを作成)。結果 補助人材として就労意向を持っている高齢者は,介護補助で72人(24.4%),保育補助で107人(36.3%)見られた。二項ロジスティック分析の結果,日頃から生涯学習活動に参加している人ほど介護補助へ就労意向を持っており(オッズ比[OR]:2.98,95%信頼区間[95%CI]:1.40-6.34),主観的健康感が高い人ほど保育補助へ就労意向を持っている傾向が見られた(OR:2.41,95%CI:1.01-5.76)結論 補助人材として就労意向を持ちそうな高齢者として,介護補助では生涯学習活動の参加者,保育補助では主観的健康感が高い人という特性が見られた。これらの特性を持った高齢者に的を絞ったリクルートをすることで,補助人材として就労する高齢者の掘り起こしに寄与できる可能性がある。
著者
森 裕樹 倉岡 正高 相良 友哉 藤原 佳典
出版者
日本世代間交流学会
雑誌
日本世代間交流学会誌 (ISSN:21857946)
巻号頁・発行日
pp.jsis1301_01, (Released:2023-08-15)

本研究では全国のシルバー人材センターを通じ、参加者の年代と交流形態の点から通いの場での活動実態や運営上の課題を比較検討した。シルバー人材センター職員を対象に高齢者を含む多世代が参加する通いの場について、「発足経緯」「活動概要」「参加者の特徴」「活動の専門性と課題」「活動が地域に及ぼす影響」を尋ねた。分析対象の211事例は、参加者の年代を基に「高齢」「高齢×未成年」「高齢×成年」「高齢×未成年×成年」に分類し、発足経緯や活動内容と運営上の課題を比較した。その結果、高齢者のみの活動と比べ、未成年を含む事例ではボランティア活動の割合が、成年を含む事例では趣味・文化活動や就労的活動の割合が高かった。この結果は、多世代の参加による活動が、多様な高齢者に介護予防の機会を提供し得ることを示唆するものの、活動の普及度という点からは活動継続のための資金獲得やノウハウ継承の難しさ、担い手不足が課題として挙げられた。
著者
相良 友哉
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.852-859, 2020-01-01 (Released:2020-10-15)
参考文献数
18

社会構造の変化により,「社会的な居場所づくり」への関心が高まっている.とりわけ,家庭,職場・学校に次ぐ第三の場,いわゆるサードプレイスを持つことが重要視されているが,コロナ禍の外出自粛に代表されるように,様々な事情で,人々が直接集うことが出来ない場合がある.このような問題に対処するひとつの方策として,サイバー空間にサードプレイスを形成し,オンラインで交流する方法がある.そこで,本研究は,動画の生配信を行うコミュニティスタジオに注目し,サードプレイスとしての要件を持っているか検討した. 首都圏にあるスタジオCのFacebookページの内容分析および,スタジオでの参与観察により,スタジオCが,サードプレイスとしての8つの特徴を備えていること,スタジオにおけるオフラインの直接的なコミュニケーションと生配信を通じたオンラインのコミュニケーションとが重層的に機能しており,配信者にとっても,視聴者にとっても心地よい居場所になっていることが示唆された.
著者
相良 友哉 戸川 和成 田川 寛之 崔 宰栄 辻中 豊
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2021, no.31, pp.614-622, 2021-01-01 (Released:2021-12-15)
参考文献数
36

ますます長寿化が進む現代の日本においては,健康長寿を目指し,高齢期においても積極的に社会参加することが重要である.既に,高齢者の地域活動に関する研究は多数見られるが,活動への参加行動に着目されることが多く,活動内容や頻度,地域内の人的ネットワークについての検討は少なく,また,地域も限定的である.そこで,本研究では,全国13都市の住民に対して実施したWebアンケートの結果をもとに,どのような属性を持った高齢者が活発に地域活動をしたり,地域の役職者と交流しているか検討した.その結果,他者との交流や地域活動の多くにおいて,住民の性別による違いが顕著であった.女性は日常的な人付き合いが多いが,男性は地域の役職者との交流や役割・目的が明確な地域活動への参加者が多い.居住年数や就業状態,教育状況では,性別ほどの顕著な参加状況の差は見られなかった.人生100年時代とも言われる昨今の日本において,より効果的に高齢者の地域活動,ひいては社会参加を促進させていくためには,こうした性別による違いを踏まえる必要がある.