- 著者
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福山 勝彦
福山 ゆき江
丸岡 裕美
原田 悦子
鎌田 幸恵
細木 一成
矢作 毅
丸山 仁司
- 出版者
- JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
- 雑誌
- 日本理学療法学術大会
- 巻号頁・発行日
- vol.2011, pp.Ca0213-Ca0213, 2012
- 被引用文献数
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【はじめに、目的】 近年、足趾が床面に接地せず、歩行時に趾先まで体重移動が行われない「浮き趾」についての報告を散見する。これまで浮き趾例では足趾把持力の低下や前方重心移動能力低下、床面からの感覚入力の低下がみられることを報告してきた。また浮き趾の状態が継続されることで歩行時において体幹のアライメントの崩れや傍脊柱筋、大殿筋などの筋活動の乱れが生じ、腰痛の出現につながる可能性があることも示唆されている。我々はこの浮き趾の抽出、評価として、自作のPedoscope撮影による画像から「浮き趾スコア」による点数化を試み検討している。これは左右10本の足趾に対し,完全に接地しているものを2点,接地不十分なものを1点,まったく接地していないものを0点とし,20点満点で評価するものである。しかしこれらの方法による信頼性、再現性については検討されていない。本研究ではPedoscopeを使用し、浮き趾スコアの検者間、検者内の信頼性について確認することを目的とした。【方法】 下肢に整形外科疾患の既往のない健常成人98名を対象とした。男女の内訳は男性48名、女性50名、年齢は22.3±2.9歳であった。足底画像を自作のPedoscopeにて撮影した。Pedoscopeは、床面から30cmの高さのステージ上面に強化ガラスを固定し、この上に被検者を起立させる。ステージの側面に斜めに固定した鏡で足底を反映し、デジタルカメラで撮影する構造になっている。被検者をステージの強化ガラス上に、開眼で2m前方の目の高さに設定した目標点を注視した状態で起立させた。足幅は両足内縁が5cm開くように枠を用いて開脚した。趾先に力を入れたり重心を移動したりせず安楽な姿位を保持した上で、身体の動揺が落ち着いている状態での足底画像を撮影した。初回の撮影に引き続き、その1時間後、1週間後の同じ時間帯で同様の撮影を行なった。得られた画像を前述した方法で10本それぞれの足趾に対し、完全に接地しているものを2点、不完全なものを1点、接地していないものを0点とし20点を満点とする「浮き趾スコア」を求めた。初回時の画像に関しては3人の経験者(これまでの研究に参加し画像評価していた者)と3人の未経験者、計6人の評価者で評価した。3人の未経験者については、事前に評価の方法を説明、サンプルを用いて採点の練習を行なった。1時間後および1週間後の採点については筆者が行なった。初回時のデータから評価者6人全員による検者間信頼性ICC(2,1)、経験者3人、未経験者3人それぞれの検者間信頼性ICC(2,1)を求めた。また初回、1時間後、1週間後のデータから検者内信頼性ICC(1,1)を求めた。【倫理的配慮、説明と同意】 すべての被験者に対し、事前に本研究の趣旨および方法を説明、また本研究への協力は自由意志であり辞退、途中棄権しても何ら不利益がないこと、得られたデータは個人が特定できないよう管理し本研究以外に用いないことを説明し同意を得た。【結果】 全評価者のICC(2,1)は0.858、経験者3人のICC(2,1)は0.895、未経験者3人のICC(2,1)は0.829であった。初回、1時間後、1週間後のICC(1,1)は0.927であった。【考察】 我々が用いている浮き趾スコアの評価者間における信頼性は、Landisの基準から経験による差は若干あるものの、Almost perfectの結果が得られた。不完全接地1点の評定にばらつきがあるのではないかと思われたが、完全接地趾、足根部、踵部との接地画像の比較により近似した値を得ることができると考える。また検者内信頼性についてはかなり高い信頼性を得ており、それぞれの被検者の足趾接地の再現性が確認できた。我々は本スコアをもとに、18点以上かつ両側第1趾とも2点のものを「正常群」,10点以下のものを「浮き趾群」と分類し、正常群と浮き趾群における機能の比較研究を行なっており、その基礎となる群間分類上の信頼性が得られたものと思われる。しかし接地画像の形やどの趾が接地していないかという分類はできず、今後検討していく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 最近「浮き趾スコア」は、他の研究者の間にも導入されており、Pedoscopeでの撮影以外にフットプリントやフットスキャンなども使用されている。いずれも床面と足底の接地状態を反映するものであり、自作によるPedoscopeやフットプリントの使用は比較的安価で簡便なものである。この信頼性が得られたことは「浮き趾」の抽出、分類、理学療法の効果判定に役立つものと思われる。